オランダの小学校では、ここ数年「先生が見つからない」状態が続いています。2026年10月20日、DutchNews は、教員不足のなかでも小学校の校長たちが週4日制をほとんど選んでいないと報じました。ニュースサイトの Nu.nl と校長の団体 AVS が校長308人に聞いたところ、授業日を減らした学校は3校だけだったといいます。
数字の上では、不足は和らいできています。教育省の委託調査では、2025年10月1日時点の不足は全国で教員の6.3%、2024年の8.1%から下がりました。ただし平均の陰で、デン・ハーグ、ロッテルダム、アルメレなど大都市5市(G5)の不足は13.7%と、ほかの地域の2倍以上です。日本人の家族も多いデン・ハーグやロッテルダムが、その中に含まれます。
この記事では、DutchNews の記事を起点に一次情報で数字を確かめ、4日制や「家に帰される日」のルール、学校選び、インターや日本人学校との比較、保護者ができることを整理します。
この記事が主に根拠にした情報
- DutchNews「Primary school teachers reject four-day week amid staff shortage」(2026年10月20日)
- Centerdata「Personeelstekorten primair onderwijs – peildatum 1 oktober 2025」(2025年12月、教育文化科学省の委託)
- NL Times「Dutch primary schools rarely adopt four-day weeks despite teacher shortage」(2026年10月20日)
- Rijksoverheid「Hoe regelen basisscholen de schooltijden en lesuren?」(授業時間と週5日のルール)
- Inspectie van het Onderwijs「Er vallen veel lesuren uit. Mag dit?」(授業が休みになるときの考え方)
| この記事で分かること | 答えの要点 |
|---|---|
| 不足はどのくらいか | 全国6.3%、G5は13.7%、デン・ハーグ市は15.6%(第1〜2章) |
| 4日制は認められるか | 恒常的には不可。4日だけの週は年7回まで(第3章) |
| 家に帰されることはあるか | あり得る。ただし年間の授業時間は確保が必要(第4章) |
| 学校選びで何を見るか | 監督庁の評価、地区、代替の方針、入学の手順(第5〜6章) |
| 日本人学校・インターとの違い | 入学資格・費用・帰国後の接続が違う(第7章) |
| 保護者に何ができるか | 参加協議会、BSO、記録と苦情手続き(第8章・第12章) |
1. いま何が起きているか(2026年10月の報道と数字)
見出しは「4日制を拒否」ですが、中身は「4日制以外の手で授業を回している」という話です。報道と統計を順に確認します。
校長308人の調査で、授業日を減らしたのは3校
DutchNews によると、Nu.nl と校長の団体 AVS(Algemene Vereniging Schoolleiders、校長・教頭の職能団体)の調査に308人の校長が答えました。この学年度に授業日を減らしたのは3人、1%未満です(DutchNews、2026年10月20日)。
NL Times によると、回答者の10人に4人が「別の職員を教室に立たせる」ことを最善の策に挙げています(NL Times、2026年10月20日)。
4日制は「最後の手段」で、学校はまず人の配置で穴を埋めています。家庭にとっては、授業日が減るよりも「担任以外の人が教える日」が増える形で影響が出やすいと考えられます。
なぜ4日制を避けるのか
AVS の政策アドバイザーは Nu.nl に対し、4日制は先生の助けになるとは限らないと話しています。休んだ分の授業をどう取り戻すのか、共働きの親は子どもをどうするのか、といった問題がついて回るからです(Nu.nl、2026年10月20日)。教員組合 AOb の役員も、緊急策が恒常的な解決策になってはならないとくぎを刺しています。
不足の数字:全国6.3%、2024年は8.1%
DutchNews が引いている数字は、研究機関 Centerdata が教育文化科学省(OCW)の委託で毎年行っている調査のものです。2025年10月1日時点で、全国の初等教育の教員不足は約5,800 fte(フルタイム換算)、教員の雇用全体の6.3%と推計されています(Centerdata、2025年12月)。
前年は約7,700 fte、8.1%でした。報告書は、コロナ後の臨時予算(NPO)の終了で雇用が減ったことと児童数の減少も理由に挙げており、「先生が増えたから」だけではありません。
| 指標(Centerdata) | 2024年10月1日 | 2025年10月1日 |
|---|---|---|
| 全国の教員不足(fte) | 約7,700 | 約5,800 |
| 全国の教員不足(雇用に占める割合) | 8.1% | 6.3% |
| 校長・教頭の不足(fte) | 約850 | 約450 |
| G5の教員不足 | — | 13.7% |
| G5以外の教員不足 | — | 4.8% |
教員だけでなく、校長・教頭も足りていません。2025年は約450 fte(6.2%)で、こちらも前年の約850 fte(10%)から下がっています。
2. 全体像:不足は大都市と一部の地区に集中している
全国平均の6.3%の陰で、不足のある学校とない学校ははっきり分かれています。
G5は13.7%、ほかの地域の2倍以上
Centerdata は2020年から、アムステルダム、ロッテルダム、デン・ハーグ('s-Gravenhage)、ユトレヒト、アルメレの5市(G5)を別に測っています。2025年はG5が13.7%、G5以外が4.8%でした。G5の回答率は約96%です。
図1のとおり、ユトレヒトは低く、アルメレが突出しています。デン・ハーグの15.6%は、周辺のハーグランデン地域(市を除く)の8.1%のほぼ2倍です。
5年間の推移:デン・ハーグは2023年がピーク
報告書の付表から2021〜2025年の推移を並べます。多くの市は2023年前後がピークです。
| 地域(普通小学校の不足率) | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|
| アルメレ | 16.2% | 19.2% | 23.8% | 23.7% | 21.9% |
| デン・ハーグ市 | 16.0% | 17.3% | 21.8% | 17.5% | 15.6% |
| ロッテルダム市 | 13.2% | 11.3% | 16.6% | 15.9% | 15.8% |
| アムステルダム市 | 15.3% | 17.6% | 18.7% | 15.5% | 12.2% |
| ユトレヒト市 | 7.3% | 10.0% | 9.0% | 9.3% | 6.8% |
| ハーグランデン(市を除く) | 8.9% | 8.6% | 11.3% | 9.1% | 8.1% |
デン・ハーグ市は2023年の21.8%から6ポイントほど下がりましたが、2021年の水準に戻っただけです。「改善」と「まだ深刻」はどちらも正しい言い方です。
同じ市でも地区で大きく違う
報告書は地区(stadsdeel)ごとの集計も載せています。デン・ハーグの地区を並べます。
| デン・ハーグの地区 | 教員不足率(2025年) |
|---|---|
| Laak(ラーク) | 25.8% |
| Escamp(エスカンプ) | 19.7% |
| Centrum(中心部) | 17.3% |
| Segbroek(セフブルック) | 12.4% |
| Haagse Hout(ハーフセ・ハウト) | 12.0% |
| Loosduinen(ローズドゥイネン) | 11.4% |
| Scheveningen(スヘフェニンゲン) | 10.9% |
| Leidschenveen-Ypenburg | 10.1% |
ただし地区の平均は個々の学校を表しません。G5では約20%の学校が「不足なし」の一方、13%の学校が30%を超える不足を抱えています(G5以外は60%と2%)。最終的には一校ずつ確かめるしかありません。
どんな学校で不足が大きいのか
報告書によると、不足の大きさとはっきり関係していたのは「schoolweging(スホールウェーギング、児童の家庭背景から算出される学校の指標)」でした。児童の背景が複雑な学校ほど、教員不足も大きい傾向があります。不足の大きい学校が「質の悪い学校」という意味ではなく、人手が必要な学校ほど人が集まりにくいという構造の表れです。
3. ルール:授業時間の法定基準と4日制
学校がどこまで時間割を変えられるかは、授業時間のルールで決まっています。
8年間で7,520時間、4日だけの週は年7回まで
オランダの小学校は、グループ1からグループ8までの8年間で、合計7,520時間以上の授業をしなければなりません。前半4年(グループ1〜4)で3,520時間以上、後半4年(グループ5〜8)で3,760時間以上が基準で、残りの240時間は学校が前後に振り分けられます(Rijksoverheid、Inspectie van het Onderwijs)。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 8年間の授業時間 | 7,520時間以上 |
| グループ1〜4 | 3,520時間以上 |
| グループ5〜8 | 3,760時間以上 |
| 振り分けできる時間 | 240時間 |
| 週5日の原則 | グループ3〜8が対象。グループ1〜2は対象外 |
| 4日だけの週 | 祝日の週とは別に年7回まで。学校案内に明記 |
| 時間割の変更 | 参加協議会の保護者委員の同意が必要 |
家庭にとって大事なのは最後の3行です。グループ3〜8で恒常的な4日制にはできず、4日だけの週も年7回までで、学校案内(schoolgids、スホールヒッツ)に載せる必要があります。
グループ1〜2は週5日の対象外
見落とされやすいのが、グループ1〜2(4〜6歳ごろ)は週5日の原則の対象外だという点です。低学年に週4日の学校があっても、教員不足とは限りません。入学前に学校案内で時間割を確認しておくと、働き方の計画を立てやすくなります。
「1日だけ休み」と「4日制」は別物
2019年の教育大臣の書簡も、恒常的な4日制は認められず、グループ3〜8は年7回まで1日を外せると示しています(Tweede Kamer 書類 kst-27923-358)。なお監督庁は、授業時間の使い方の自由を広げる規則を準備中だとしていますが、2026年10月27日時点で中身は示されていません。
4. 家庭に起きること:「家に帰される日」と担任の交代
数字の内訳を見ると、教員不足は休校よりも「見えにくい形」で家庭に表れています。
不足の7割は「隠れた不足」
Centerdata は「欠員(openstaand)」だけでなく、無資格の人に教えさせるなど望ましくない形で穴を埋めている「隠れた不足(verborgen tekort)」も数えています。
図2のとおり、隠れた不足は欠員の倍以上あります。「人は足りている」ように見えても、無資格の人が担任をしている場合があります。
隠れた不足はどう埋められているか
G5以外の学校で、隠れた不足がどう埋められているかの内訳です。
| 隠れた不足の埋め方(G5以外) | 隠れた不足に占める割合 |
|---|---|
| 校内の無資格者を配置 | 42% |
| 転職組(zij-instroom、教員養成中の社会人) | 20% |
| 有資格の巡回・兼任職員 | 14% |
| 有資格の派遣教員 | 10% |
| 個人事業の教員(zzp'er) | 5% |
| クラスを分けて他クラスへ | 3% |
クラスを分ける方法は3%と少なく、多くは「誰かを教室に立たせる」形です。G5ではデン・ハーグなど4市で不足の8〜9割が隠れた不足です。
先生が休んだ日に学校が取る手
日々の欠勤でも、学校はおおむね次の順で対応します。
Expatica も、大都市の一部の学校で実習生が一人でクラスを持つ、まれに子どもが家に帰される、といったことが起きていると書いています(Expatica、2025年6月2日更新)。
家に帰すことは認められているか
監督庁は、教員不足などで授業が休みになることはあり得るとしつつ、休んだ分は年度内に取り戻せること、法定の最低授業時間は守る必要があることを示しています(Inspectie van het Onderwijs)。
突然「明日はお休みです」と連絡が来ること自体は、違法とは限りません。問題は、積み重なって年間の時間が足りなくなる場合や、遅れが出る場合です。日付と理由を記録しておくと、学校と話す材料になります。
まず困るのは共働きの家庭です。学童(BSO、buitenschoolse opvang)との調整は第8章で、保育料と手当の仕組みは「オランダの保育料(kinderopvang)2027年の変更と費用」で整理しています。
5. 学校選び:教員不足の時代に何を見るか
不足が学校ごとに大きく違う以上、学校選びの段階でできることはあります。学校の種類と、評価の見方を整理します。
オランダの学校の種類(openbaar と bijzonder)
オランダの小学校は、大きく「公立(openbaar、オープンバール)」と「私学系(bijzonder、ビゾンデル)」に分かれます。どちらも国の予算で運営され、授業料はかかりません。私学系は宗教や教育理念(モンテッソーリ、ダルトンなど)に基づく学校で、児童の約3分の2が私学系に通っています(Expatica)。
| 学校の種類 | 運営 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 公立(openbaar) | 自治体系の財団 | 無料+任意の寄付 | 宗教色なし。原則だれでも受け入れ |
| 私学系(bijzonder) | 独自の理事会 | 無料+任意の寄付 | 宗教・教育理念に基づく |
| 一般私学系(algemeen bijzonder) | 独自の理事会 | 無料+任意の寄付 | モンテッソーリ等、宗教色なし |
公立と私学系の違いは理念と運営主体の違いで、教員不足の大小とは直接関係しません。インターと日本人学校は第7章で比べます。任意の寄付(vrijwillige ouderbijdrage)は文字どおり任意で、払わなくても子どもを遠足などから外すことはできません(Rijksoverheid)。
教育法と監督庁:学校の評価の読み方
オランダの学校は教育の自由が大きく、そのかわり教育監督庁(Inspectie van het Onderwijs、インスペクティ・ファン・ヘット・オンデルウェイス)が質を監督しています。評価と報告書は、監督庁の検索サイトで学校名から調べられます(Toezichtresultaten)。
| 確認する場所 | 見るところ | 注意点 |
|---|---|---|
| 監督庁の検索サイト | 評価(voldoende / onvoldoende / zeer zwak)と報告書の日付 | 数年前の訪問のことがある |
| Scholen op de kaart | 児童数の推移、進学先、保護者の評価 | 数値は学校の自己申告を含む |
| 学校案内(schoolgids) | 授業時間、4日だけの週、代替の方針 | 毎年更新。最新版を読む |
| 自治体の学校検索 | 入学の手順、受け入れ上限 | 市ごとに仕組みが違う |
| 見学・面談 | 先生が休んだ日の対応、担任の資格 | 遠慮せずに具体的に聞く |
監督庁の評価は、ふだん「voldoende(十分)」「onvoldoende(不十分)」「zeer zwak(非常に弱い)」のいずれかで示されます。「zeer zwak」と判定された学校は、理事会がすべての保護者に報告書の要約を送ることが法律で決まっています。評価が「十分」でも、報告書の日付が古ければ、その後の教員の入れ替わりは反映されていません。数字は判断材料の一つで、Scholen op de kaartの数値や見学の印象と組み合わせて読みます。
見学で聞くこと
見学では「先生が休んだ日はどうしていますか」と聞くのが近道です。無資格の人が担任をしているクラスがあるか、過去1年で授業が休みになった日が何日あったかも聞きます。
なお、2人の先生が曜日で分担する担任(duobaan、ドゥオバーン)は、教員不足とは別にオランダではよくある働き方です。日本の「担任は1人」という感覚とは違うので、知っておくと驚かずに済みます。
6. 入学の手順と待機:デン・ハーグの場合
大都市では人気校に申し込みが集中すると抽選になります。デン・ハーグを例に流れを整理します。
3歳から申し込み、4歳から通える
デン・ハーグでは、子どもが3歳になるころ、市から申込書が郵送されます。記入した申込書を第1希望の学校に提出し、学校から6週間以内に回答が来ます。受け入れ上限(leerlingplafond、レーリングプラフォン)がある学校ばかりを希望する場合は、5校以上を書くよう案内されています(Scholenwijzer Den Haag)。
就学義務(leerplicht)は、5歳になった翌月の1日から始まります(Rijksoverheid)。実際には、ほとんどの子が4歳の誕生日の翌日から、1人ずつクラスに加わります。
優先規則と抽選(aanmeldbeleid)
申し込みが定員を超えたときにだけ、優先規則(voorrangsregels)と抽選が使われます。デン・ハーグでは、きょうだいの在籍、提携する幼児教育施設への通園、学校の近くに住んでいること、親がその学校の職員であることなどから、学校が使う規則と順番を選びます。優先規則は入学を保証するものではありません。
アムステルダム、ユトレヒト、ハールレムなども、住所をもとにした優先と市の抽選の仕組みを持っています(Expatica)。市ごとに手順が違うので、引っ越し先が決まったら、その市の学校検索サイトを最初に確認します。
4歳を過ぎてから来た家族
4歳以上の子を連れて来た場合は、学校に直接申し込みます。年齢に合うクラスが満員のこともあります。住所やBSN(市民サービス番号)が決まる前でも受け付ける学校が多いと Expatica は書いています。
オランダ語を話さない6〜12歳の子は、まず新来者クラス(nieuwkomersklas、taalklas、オランダ語の集中クラス)に通うことがあります。デン・ハーグ周辺では、新来者クラスを持つ小学校が15校あると The Hague International Centre は案内しています(The Hague International Centre)。
ここにも教員不足の影響があります。Centerdata によると、言語クラスの教員不足はG5平均で14.0%、デン・ハーグ市は23.6%です。待機や先生の交代の可能性は頭に置いておく必要があります。
7. 現地校・インター・日本人学校をどう比べるか
「それならインターや日本人学校のほうが安心では」と考える人もいるでしょう。選択肢ごとの違いを整理します。
政府助成インター(DIPS)と私立インター
政府の助成を受けるインター(Dutch International Primary School、DIPS)は、オランダの学校の国際部門です。英語中心の課程で教えつつ、オランダの監督庁の監督を受けます。費用の例として、アイントホーフェンの International School Eindhoven の小学部は2026-27年度で年€6,690です(ISE)。
ただし入学資格があります。アムステルダムの AICS の入学方針によると、親が一時的にオランダで働く外国籍の子、親の仕事で2年以上海外の学校に通ったオランダ国籍の子などに限られます(AICS Admissions Policy 2026)。待機リストも多く、DIPS もオランダの学校の一部なので教員不足と無縁ではありません。私立インターは独自に採用し、費用は年€15,000以上が目安です(DutchReview、Expatica)。
日本人学校と補習授業校
オランダには、全日制の日本人学校がアムステルダム(アムステルフェーン)とロッテルダムにあります。文部科学省の区分では、日本人学校は国内の小中学校と同等の教育を目指す全日制の在外教育施設で、補習授業校は現地校やインターに通う子が土曜日などに日本語で一部の教科を学ぶ施設です(文部科学省 在外教育施設の概要)。
ロッテルダム日本人学校は、2026年度の入学案内で、文部科学省の学習指導要領に準拠した教育を行うことを示しています(ロッテルダム日本人学校 入学案内)。補習授業校は、アムステルダム、ハーグ・ロッテルダム、ティルブルフ、マーストリヒトなどにあります(アムステルダム日本語補習授業校 2026年度概要)。
日本人学校の先生は主に日本からの派遣教員で、オランダの統計の対象外です。ただ日本側でも教師不足が続いているため、事情は学校に確認するのが確実です。
| 比べる点 | 現地校 | DIPS | 私立インター | 日本人学校 |
|---|---|---|---|---|
| 授業の言語 | オランダ語 | 英語中心 | 英語など | 日本語 |
| 費用(年) | 無料+寄付 | €5,000〜7,000前後 | €15,000以上 | 学校が定める |
| 入学資格 | 原則だれでも | 一時滞在など条件あり | 学校が定める | 日本国籍の子など |
| 監督 | オランダの監督庁 | オランダの監督庁 | 学校による | 日本の基準に準拠 |
| 教員不足の影響 | 地区・学校で差が大 | 受けうる | 採用は独自 | 日本の派遣事情 |
| 日本への帰国 | 日本語は別途 | 日本語は別途 | 日本語は別途 | 接続しやすい |
「教員不足を避けるため」だけで種類を選ぶのは難しく、費用と入学資格、滞在年数のほうが選択を左右します。
schakelklas と ISK
12歳以上でオランダに来た場合は、国際移行クラス(Internationale Schakelklas、ISK)という選択肢があります。12〜18歳を対象に、2年ほどかけてオランダ語を集中的に学びながら普通教科も学ぶクラスです(ACCESS NL、2024年5月24日)。きょうだいで学校の場所が離れることもあるので、住む地域を決める前に調べておくと安心です。
8. 保護者ができること:参加協議会と学童(BSO)
教員不足は保護者が解決できる問題ではありませんが、制度上の権利と家庭の備えはあります。
参加協議会(medezeggenschapsraad)
オランダの学校には、教職員と保護者の代表でつくる参加協議会(medezeggenschapsraad、MR、メーゼッヘンスハップスラート)があります。学校は、保護者委員の同意なしに授業時間を変えることはできません(Rijksoverheid)。任意の寄付の額や、グループ8の進学テストの選び方にも、MR が関わります。
委員にならなくても、議事録を読む、意見を委員に伝えるだけで、学校が教員不足にどう向き合っているかが見えてきます。
| 保護者の手段 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 参加協議会(MR) | 授業時間の変更への同意 | 時間割の変更が提案されたとき |
| 担任・校長との面談 | 代替の状況の説明を求める | 担任が頻繁に替わるとき |
| 苦情手続き | 学校に正式に申し立て | 説明が不十分なとき |
| 監督庁への連絡 | 学校の状況を伝える | 授業の休みが続くとき |
監督庁は個別の苦情を裁くところではありませんが、寄せられた情報を監督に使います。まず学校の苦情手続きを使い、それと並行して監督庁に伝えることが勧められています(Inspectie van het Onderwijs)。
学童(BSO)との調整
共働き家庭の現実的な備えは、学童(BSO)の契約の確認です。BSO は放課後と学校休暇の預かりが基本で、研修日(studiedag)や急な休みの日を追加料金で受け入れるかは施設によります。
| BSO に確認すること | 理由 |
|---|---|
| 研修日・急な休みの日の受け入れ | 授業日の朝からの預かりは契約外のことがある |
| 追加日の料金と申し込み期限 | 前日では間に合わない施設がある |
| 学校からの送迎の有無 | 休みの日は送迎がない場合がある |
| 振替(ruildag)の仕組み | 未使用日と交換できる施設がある |
| 保育手当の対象時間 | 追加日も手当の計算に入るか確認する |
保育手当(kinderopvangtoeslag)の対象時間には上限があるので、追加日の扱いも確認しておきます。手当の全体像は「オランダの各種手当(toeslagen)を日本人の家庭が使うとき」でまとめています。
担任の交代が続くときは、学校の学習記録(LVS、leerlingvolgsysteem)を年2回ほどの面談で見せてもらい、遅れがないかを確認できます。
9. 媒体どうしで数字が違うところ
媒体によって数字がばらばらに見えるのは、多くが「何を数えているか」の違いです。
5,800人と13,000人
DutchNews の7月の記事は、初等・中等・職業教育で約13,000人が足りないと書いています(DutchNews、2026年7月27日)。小学校だけの5,800 fte とは対象も単位も違います。
| 論点 | 媒体・調査A | 媒体・調査B | 違いの理由 |
|---|---|---|---|
| 不足の規模 | 約5,800 fte(Centerdata、小学校) | 約13,000人(DutchNews 7月、初中等・職業) | 対象と単位が違う |
| 4日制の広がり | 一部の大都市の学校(DutchNews 7月) | 308校中3校(Nu.nl・AVS 10月) | 時期と調査範囲が違う |
| G5の不足 | 18%(IamExpat、2023年末) | 13.7%(Centerdata、2025年) | 時点が違う |
| 週5日の原則 | 週5日通う必要(IamExpat 2020年) | グループ1〜2は対象外(Rijksoverheid) | 説明の粒度が違う |
| AVS 担当者の氏名 | Leanne der Steeg(DutchNews) | Lianne ter Steeg(NL Times) | 表記の揺れ。本記事では氏名を省いた |
IamExpat の「G5は18%、ほかは8%」(IamExpat、2024年8月26日)も、Centerdata の2023年の数字とおおむね合います。古い数字は誤りではなく、時点の違いです。
「下がった」理由は一つではない
採用の動きも数字に出ています。教員養成課程への新規登録は前年に13.5%増え、小学校教員の資格を取った男性は858人と約10年前から66%増えました。一方、経済政策分析局(CPB)は、先生があと1年長く働いても小学校の不足の13%しか埋まらず、G5では4%未満だと試算しています(NL Times、2026年10月2日)。
10. 日本の小学校と比べてどうか
日本の小学校と比べるときは、教員不足の数え方にも注意が必要です。
教員不足の数え方が違う
文部科学省の「教師不足」に関する実態調査によると、2025年5月1日時点の公立小学校の教師不足は1,699人、不足率は0.44%でした(文部科学省)。不足のある学校は1,292校です。
この0.44%とオランダの6.3%は、そのまま比べられません。日本の調査は配置の「欠員」を数え、オランダの6.3%は欠員に「隠れた不足」を足した数字です。欠員だけならオランダは1.7%で、日本より高いものの差は見出しほど大きくありません。
制度の違い
オランダには法律上のクラスの人数の上限がなく、平均は22.6人(2024/25年度)ですが、30人以上のクラスも約3,000あります(Rijksoverheid、Rijksoverheid 報告書、2025年3月)。
| 比べる点 | 日本の公立小学校 | オランダの小学校 |
|---|---|---|
| 入学 | 6歳、4月に一斉 | 4歳の誕生日の翌日から順次 |
| 学年の数え方 | 1〜6年(6年間) | グループ1〜8(8年間) |
| 就学義務の開始 | 6歳の4月 | 5歳になった翌月1日 |
| クラスの人数 | 標準35人(2025年度に全学年) | 法定上限なし、平均22.6人 |
| 担任 | 原則1人 | 2人で曜日分担もよくある |
| 教員不足(公表値) | 0.44%(欠員) | 6.3%(欠員+隠れた不足) |
| 不足時の対応 | 教頭・少人数担当が代替など | 無資格者の配置、まれに家に帰す |
日本の「学級閉鎖」は感染症の流行が理由ですが、オランダで子どもが家に帰されるのは先生の手当てがつかないときです。
学年の対応のめやす
グループ3は読み書きと計算を本格的に始める学年で、日本の小学1年生におおむね当たります。グループ8では全員が進学テスト(doorstroomtoets、ドールストロームトゥース)を受け、担任の助言(schooladvies)と合わせて中学校の種類が決まります(Rijksoverheid)。日本に帰国する場合は、グループの番号ではなく生年月日で学年を考えるのが確実です。
11. 日本に帰国する可能性がある家庭の考え方
いつか日本に戻る可能性があるなら、学校選びはその時期を見すえて考えます。
滞在の見込み年数で考える
ACCESS は、5年以上滞在するならオランダの現地校が有力だとしています(ACCESS NL)。逆に、2〜3年で日本に戻る予定が決まっているなら、日本人学校か、現地校やインターに通いながら補習授業校で日本の教科を続ける形がよく選ばれます。
| 滞在の見込み | よく選ばれる形 | 教員不足との関係 |
|---|---|---|
| 1〜3年で帰国 | 日本人学校、またはインター+補習授業校 | 日本語の学習を切らさないことが優先 |
| 3〜5年、未定 | 現地校またはインター+補習授業校 | 学校ごとの差を見学で確かめる |
| 5年以上・定住 | 現地校(+補習授業校) | 地区選びと入学時期が大事 |
| 帰国時期が読めない | 現地校+家庭での日本語 | 柔軟に切り替えられる形を残す |
どの形でも、教員不足は「学校の種類」より「その学校」の問題として現れます。
日本の家族への伝え方
日本の祖父母に「先生が足りなくて今日は休み」と伝えると、深刻な事態に受け取られがちです。法律の範囲で起きうること、年間の授業時間は守られる仕組みがあること、2人担任はふつうであることをあわせて伝えると、話がかみ合います。
12. 手順:明日からやること
学校を選ぶ前の家庭と、すでに通っている家庭に分けて、行動に落とします。
これから学校を選ぶ家庭
- 市の学校検索サイト(デン・ハーグなら Scholenwijzer)で入学の手順と時期を確認する
- 監督庁の検索サイトと Scholen op de kaart で候補校を調べる
- 学校案内で授業時間と代替の方針を読む
- 見学で「先生が休んだ日の対応」を聞く
- 受け入れ上限校だけなら5校以上を希望に書く
- BSO の空きと組み合わせて決める
すでに通っている家庭
- 4日だけの週の予定をカレンダーに入れる
- BSO に研修日と急な休みの日の条件を確認する
- 授業が休みになった日と理由を記録する
- MR の議事録で時間割の議題を確認する
- 説明が不十分なら苦情手続きを使い、監督庁にも伝える
13. ケースで考える(架空の家族)
以下は架空の家族で、実在の人物や学校ではありません。
| ケース(架空) | 状況 | 考え方 |
|---|---|---|
| A家:デン・ハーグ、3歳の子 | 駐在3〜5年、帰国時期は未定 | 申込書が届いたら5校以上を記入。補習授業校も検討 |
| B家:アムステルフェーン、7歳の子 | 日本から転入、オランダ語なし | 新来者クラスの待機を確認。日本人学校と比較 |
| C家:ロッテルダム、共働き | 担任が月に何度も替わる | 記録をつけて面談。BSO の追加日を契約に入れる |
A家は、デン・ハーグの地区差が大きいので、住む場所と学校を同時に考えます。B家は、G5の言語クラスの教員不足が大きいため、待機が長いなら日本人学校やインターとの比較を早めに始めます。C家は、抗議するより記録をもとに説明を求めるほうが話が進みます。学校側も人を探している最中であることが多いからです。
14. やってはいけないこと
やりがちだけれど損をしやすい行動を挙げます。
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 全国平均だけで「うちは大丈夫」と判断する | G5と地区で差が大きく、学校ごとにも違う |
| 公立か私学系かで不足を判断する | 不足の大小は種類と直接関係しない |
| 監督庁の評価だけで決める | 訪問が数年前のことがあり、最近の人の動きは映らない |
| 受け入れ上限校を1〜2校だけ希望する | 抽選に外れると選択肢がなくなる |
| 子どもを無断で休ませて家族旅行に行く | 就学義務の違反になり、学校の授業時間とは別問題 |
| 日本の基準で担任の交代を問題視する | 2人担任はオランダでは一般的な働き方 |
学校側の休みが多いからといって、学期中に家庭の判断で休ませると、就学義務(leerplicht)の違反として自治体から連絡が来ることがあります。
15. まとめ
- オランダの小学校の教員不足は、2025年10月1日時点で全国6.3%(約5,800 fte)。2024年の8.1%から下がった
- G5の大都市は13.7%で、ほかの地域の2倍以上。デン・ハーグ市は15.6%、ラーク地区は25.8%
- 不足の約7割は「隠れた不足」で、無資格者の配置などで埋められている
- 学校は8年間で7,520時間以上の授業が必要で、グループ3〜8の恒常的な4日制は認められない。4日だけの週は年7回まで
- 調査した308校のうち、授業日を減らしたのは3校。多くは別の職員を教室に立たせて対応している
- 学校選びでは、監督庁の評価、学校案内、見学での具体的な質問を組み合わせる
- 保護者は MR、BSO の契約、記録と苦情手続きで備えられる
学校のスマホのルールについては「オランダの学校スマホ全面禁止案と家庭のルール作り」で別にまとめています。
参考にした情報源
起点の記事と在住者向け媒体
- Primary school teachers reject four-day week amid staff shortage — DutchNews:起点の記事
- Drive to recruit more teachers sparks 13.5% rise in applications — DutchNews:養成課程の登録増
- Dutch primary schools rarely adopt four-day weeks — NL Times:調査の内訳
- Later retirements would only dent teacher shortage — NL Times:CPB と DUO の数字
- Teacher shortage worsening across the Netherlands — IamExpat:2023年末のG5
- Dutch primary schools are changing their timetables — IamExpat:時間割の変化
- A guide to the Dutch primary school system — DutchReview:学校の種類と用語
- Primary schools in the Netherlands — Expatica:費用と入学
- Dutch Education: A First-Time User's Guide — ACCESS NL:学校の選び方、ISK
- Schooling for expat kids in NL — XPAT.NL:政府助成インター
- Primary education — The Hague International Centre:新来者クラス
- Scholen kiezen bij lerarentekort andere oplossingen — Nu.nl:調査の元記事
一次情報(オランダ)
- Personeelstekorten primair onderwijs 2025 — Centerdata:調査の概要
- 報告書 PDF — Centerdata:全国・G5・地区別の不足率
- Schooltijden en lesuren — Rijksoverheid:週5日と年7回の4日週
- Onderwijstijd in het basisonderwijs — Inspectie:7,520時間
- Er vallen veel lesuren uit. Mag dit? — Inspectie:授業の休み
- Klachten over scholen — Inspectie:苦情と連絡
- Toezichtresultaten — Inspectie:学校の評価
- Kamerstuk 27923-358 — Tweede Kamer:4日制に関する大臣書簡
- Groepsgrootte — Rijksoverheid:クラスの人数
- Groepsgrootte basisonderwijs 2025 — Rijksoverheid:平均22.6人
- Vrijwillige ouderbijdrage — Rijksoverheid:任意の寄付
- Doorstroomtoets — Rijksoverheid:進学テスト
- Leerplicht — Rijksoverheid:就学義務
- Aanmelden bij de basisschool — Scholenwijzer Den Haag:入学手順
- Scholen op de kaart:学校ごとの数値
- School Fees — International School Eindhoven:インターの費用の例
- Admissions Policy 2026 — AICS:入学資格
一次情報(日本)
- 令和7年度「教師不足」に関する実態調査 — 文部科学省:日本の教師不足
- 在外教育施設の概要 — 文部科学省:日本人学校と補習授業校
- 入学案内 — ロッテルダム日本人学校:教育課程
- 学校概要 — アムステルダム日本語補習授業校:補習授業校
いずれも2026年10月27日に確認したものです。教員不足の数字は毎年10月1日時点で測られ、12月ごろに公表されます。授業時間の規則は見直しが準備されているため、学校の最新の学校案内と公式サイトで確認してください。
元記事はこちら
Primary school teachers reject four-day week amid staff shortage — DutchNews
よくある質問
- オランダの小学校の教員不足はどのくらいですか?
- 教育省の委託でCenterdataが行った2025年10月1日時点の調査では、全国の小学校(初等教育)で約5,800フルタイム換算人分、教員の雇用全体の6.3%が足りません。2024年の8.1%からは下がりました。ただしデン・ハーグ・ロッテルダム・アルメレなど大都市5市(G5)では13.7%と、それ以外の地域(4.8%)の2倍以上です。
- オランダの小学校は教員不足で週4日制にしてもよいのですか?
- 恒常的な4日制は認められていません。グループ3〜8は週5日が原則で、学校が4日だけの週を組めるのは祝日の週とは別に年7回までです。8年間で合計7,520時間以上の授業時間も必要です。2026年10月に報じられた校長308人の調査でも、授業日を減らしたのは3校だけでした。
- 先生が足りないとき、子どもを家に帰すことは認められていますか?
- 教育監督庁(Inspectie van het Onderwijs)は、教員不足などで授業が休みになることはあり得るとしています。そのかわり、学校は年度内に必要な授業時間を確保し、遅れが出ないようにしなければなりません。休みが多すぎると感じたら、まず学校の苦情手続きを使い、あわせて監督庁に連絡できます。
- 教員不足が心配なとき、学校選びで何を見ればよいですか?
- 監督庁の評価(toezichtresultaten.onderwijsinspectie.nl)、Scholen op de kaart の数値、学校案内(schoolgids)の授業時間と代替の方針を確認します。見学では、先生が休んだ日にどうしているか、無資格の人が担任をしているクラスがあるかを直接聞くのが実務的です。同じ市でも地区によって不足の度合いが大きく違います。
- 日本に帰国する予定がある場合、現地校・インター・日本人学校のどれがよいですか?
- 帰国の時期と日本語の力で決まります。数年以内に日本の学校に戻るなら、日本人学校か、現地校やインターに通いながら土曜の補習授業校に通う形が多く選ばれます。オランダに長く住むなら現地校が有力です。政府助成のインター(DIPS)は、親が一時的にオランダで働く外国籍の子などに入学資格が限られます。
- オランダの学校の教員不足に、保護者は何ができますか?
- 学校の参加協議会(medezeggenschapsraad)では、保護者の代表が授業時間の変更に同意する権限を持っています。学童(BSO)とは、急に子どもが帰される日の扱いを契約時に確認しておくと慌てずに済みます。授業の休みが続くときは、記録をつけて学校に説明を求め、必要なら監督庁に伝えます。
出典: DutchNews