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オランダの水泳ディプロマA・B・C|費用€720前後、待機リスト、学校水泳と大人のレッスンまで

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オランダの水泳ディプロマA・B・C|費用€720前後、待機リスト、学校水泳と大人のレッスンまで

オランダで子育てを始めると、早い段階で「zwemles(ズヴェムレス、水泳レッスン)はもう始めた?」と聞かれます。スライダーのあるプールでは免状の有無を確かめられることがあり、学校の行事でプールに行くときにも、どの段階まで持っているかを聞かれます。水泳の免状が、日常の会話のなかに当たり前に入り込んでいる国です。

起点にした DutchNews の記事(2026年10月12日)は、アムステルダム北区で大人向けのスイミングスクールを開いたルーマニア出身のコーチへのインタビューです。彼は、オランダの水泳教育は「溺れないこと」を優先していて、頭を水面から出したままの平泳ぎしかできない大人が多いと話しています。記事には「オランダの若者の約94%が少なくとも1つの水泳ディプロマを持っている」という数字も出てきます。

この記事では、まずその94%が一次情報で確かめられるかを見たうえで、ディプロマA・B・Cの仕組み、費用、待機リストと自治体の補助、学校水泳がなくなった経緯、大人向けのレッスン、海や湖での安全までを順に整理します。日本の学校のプール授業との違いと、日本から家族を呼ぶときに伝えておきたいことにも触れます。

この記事が主に根拠にした情報

  • オランダ政府(保健福祉スポーツ省の副大臣)から下院への書簡:2025年4月4日の水泳政策の書簡(Kamerstuk 30 234 nr. 402)と、2025年11月10日の「Zwemvaardigheid 2024」に関する書簡(nr. 432)、2025年12月の付属資料
  • CBS(オランダ中央統計局)の溺水統計:2025年7月25日と2026年7月24日の発表
  • Nationale Raad Zwemveiligheid(NRZ)の Zwem-ABC の説明とよくある質問、デン・ハーグ市の水泳レッスンのページ
  • 在住者向け媒体:DutchNews、NL Times、IamExpat、DutchReview、Expatica、ACCESS、The Hague International Centre の関連記事
この記事で分かること 答えの要点
「94%」は正しいか 正しいが、年と年齢の条件つき。2024年の6〜12歳は14%が未取得
A・B・Cの違い A=遊具のないプール、B=遊具あり、C=流れのない湖まで
始める年齢 NRZは4歳半〜5歳を推奨。市営は6歳からの所もある
費用 ディプロマAで平均約€720。Aまでに60〜75回のレッスン
学校水泳 全国一律ではない。実施は自治体の約3割
大人 英語の大人向け教室や市営レッスンで習える

1. いま何が起きているか:ディプロマを持たない子どもが増えた

オランダは、子どものほとんどが水泳の免状を持つ国として知られてきました。政府の書簡は、ここ数十年はおよそ10人に9人の子どもが小学生のうちに1つ以上のディプロマを取ってきたと書いています。ところが2018年以降、その割合が下がり始めました。

政府が2025年11月に下院へ送った書簡では、Mulier Instituut(ミュリエル研究所、スポーツ政策の研究機関)の調査として、2024年に6〜12歳の14%がディプロマを1つも持っていないと報告されています。2年前の2022年は19%、4年前の2020年は12%でした。コロナ禍でプールが閉まった時期に未取得が増え、その後やや戻ったものの、以前の水準には届いていない状態です。

6〜12歳でディプロマを1つも持たない子どもは、2020年12%、2022年19%、2024年14%。政府の目標は2028年に10%以下、2030年に5%以下。 2020年 12% 2022年 19% 2024年 14% 2028年目標 10% 2030年目標 5% 点線は政府の目標(未取得の上限)
図1:6〜12歳でディプロマを1つも持たない子どもの割合(出典:下院への書簡 Kamerstuk 30 234 nr. 432(2025年11月10日)、目標は同 nr. 402(2025年4月4日)。2026年10月26日確認)

政府は2025年4月の書簡で、2028年までに未取得を10%以下、2030年までに5%以下にする目標を掲げました。ただし、そのために国が新しいお金を大きく出すのではなく、ディプロマのない子どもを自治体が見つけ出し、いまあるレッスンにつなぐという方針です。

差が出ているのは所得と出身

数字の平均だけを見ると見落とすのが、家庭ごとの差です。2025年12月の付属資料は、貧困のなかで育つ家庭では3人に1人がディプロマを取っていないと書いています。BNNVARA の報道によれば、所得の高い層では未取得は5%です。

2023年に NL Times が報じた Mulier Instituut の2022年の数字では、移民の背景がある子どもの未取得は28%、ない子どもは5%でした。オランダに来たばかりの家庭は、どちらの統計でも「取りにくい側」に入りやすいということです。

DutchNews の「94%」を一次情報で確かめる

起点の記事にある「約94%」には出典が書かれていません。政府の文書をたどると、94%という数字は3か所に出てきますが、対象がそれぞれ違います。次の表は、同じ94%がどの年・どの年齢の数字なのかを並べたものです。

文書 対象 数字
2025年4月の書簡 2018年の6〜16歳 94%が1つ以上取得
2025年11月の書簡 2020〜2024年の9〜12歳 94%が1つ以上取得
2025年12月の付属資料 小学校を出る子ども全体 94%が1つ以上取得
2025年11月の書簡 2024年の6〜12歳 14%が未取得(86%が取得)

小学校を卒業するころまでには、多くの子どもがAを取ります。そのため「94%」は、高学年まで見れば今もおおむね当てはまる数字です。一方で、6〜12歳全体の最新値は86%で、低学年での遅れが広がっていることは、94%という数字だけでは見えません。

媒体と政府資料で食い違う数字

同じ2022年について、2023年の報道(NL Times)と2025年4月の書簡は「未取得13%」、2025年11月の書簡は「19%」としています。前者は6〜16歳、後者は6〜12歳が対象で、年齢の幅が違います。年長の子は多くがすでに取得しているため、幅を広げると割合が下がります。記事や会話で数字を見かけたら、何歳の子どもの数字かを確かめるのが大事です。

2. ディプロマA・B・Cの仕組み

オランダの水泳免状は、Nationale Raad Zwemveiligheid(ナショナーレ・ラート・ズヴェムフェイリヒハイト、全国水泳安全協議会、NRZ)が定める全国共通の制度です。A・B・Cの3段階をまとめて Zwem-ABC(ズヴェム・アーベーセー)と呼びます。発行できるのは、NRZの「Licentie Nationale Zwemdiploma's(全国水泳免状の発行許可)」を持つプール、教室、クラブだけです。

各段階は「どこで安全に泳げるか」で区切られています。NRZの説明を表にすると次のとおりです。

段階 安全に泳げる場所 位置づけ
ディプロマA 遊具のないプール 最初の段階。Bへの土台
ディプロマB スライダー、波、流れるプール 遊具つきプールで遊べる
ディプロマC 流れや大きな波のない湖・広い水路 国の水泳安全基準を満たす
共通 海は対象外 Cでも海は別に注意が必要

Cまで取ると、NRZのいう Nationale Norm Zwemveiligheid(全国水泳安全基準)を満たしたことになります。逆に言えば、Aだけでは「遊具のない、プールの監視がある場所」が前提です。夏に湖や運河で泳ぐなら、Cが一つの目安になります。

試験は服と靴を着けて泳ぐ

日本の保護者が驚くのが、試験の一部を服と靴を着けたまま泳ぐことです。NRZの試験要領(BREZ)に沿う教室の一例として、テセル島の市営プールの水泳レッスン計画では、各段階の試験内容を次のように示しています。

項目 A B C
平泳ぎ 50m 75m 100m
初歩の背泳ぎ(両腕を同時にかく) 50m 75m 100m
服を着て泳ぐ平泳ぎ 12.5m 25m 50m
潜って穴をくぐる距離 3m先 6m先 9m先
立ち泳ぎ 60カウント 腕と脚30+脚のみ30 腕と脚30+腕のみ30

服を着た状態での立ち泳ぎ、水中で向きを変える動き、浮いているマットの下をくぐる動きも組み込まれています。泳ぎの速さや形の美しさよりも、落ちたときに浮いて、移動して、自分で上がることが中心です。細かい内容は教室によって並べ方が違うため、通う教室の案内で確かめてください。

ディプロマのあとに続くもの

NRZは、ABCのほかにもいくつかの免状を出しています。障がいなどでディプロマが難しい子ども向けの「Zwemcertificaat(水泳証明)A・B・C」、シュノーケルの技術と体力をつける「Snorkeldiploma 1〜3」、2024年1月に改められた「Survivaldiploma 1〜3」、競泳やクラブにつながる「Zwemvaardigheidsdiploma」です。オランダの大人がクロールを苦手とする背景には、多くの人がCまでで水泳を終える流れがあります。

3. いつ始めて、どのくらいかかるか

NRZのよくある質問では、ディプロマAのレッスンは4歳半から5歳ごろに始めるのがよいとされています。3〜4歳では難しく感じる子も多く、半年待つだけで楽になることがある、という説明です。4歳未満は「ouder- en kindzwemmen(親子水泳)」で水に慣れておくのが一般的です。

レッスンの回数と期間

Aまでにかかる回数は、資料によって幅があります。デン・ハーグ市は1回40分のレッスンで、Aは平均75回、BとCはそれぞれ約18回と案内しています。NOS の報道番組 Nieuwsuur(2024年5月)は、Aまでに約60回と伝えています。

デン・ハーグ市の平均では、ディプロマAまでに75回、Bに18回、Cに18回。Aは遊具のないプール、Bは遊具のあるプール、Cは流れのない湖などで泳げる段階。 A 75回 B 18回 C 18回 遊具なしのプール 遊具あり 湖など 1回40分。週1回なら、Aまでに1年半前後
図2:ディプロマごとのレッスン回数の目安(出典:Gemeente Den Haag「Swimming lessons」、2026年10月26日確認)

週1回なら、Aだけで1年半前後かかる計算です。週2回の教室を選べば1年を切ることもあります。5歳で始めて週1回なら、Aは6〜7歳ごろ、Cは7〜8歳ごろが計算上の目安です。実際には待機リストの長さで大きく前後します。

費用の目安

費用は、自治体、教室、レッスンの長さで大きく変わります。公的な資料と報道から、目安になる数字を並べます。

項目 金額の目安 出典
1回のレッスン 約€12(以前は約€9) NOS Nieuwsuur(2024年5月、市営30か所の調査)
ディプロマAの平均 約€720 政府の付属資料(2025年12月)
子ども1人の総額 €500〜1,100(登録・交通込み) NL Times(2025年4月)
大学付属の教室の例 登録€38、月€50 トゥウェンテ大学の水泳教室
デン・ハーグ市の登録料 €12.50(初月の料金から差し引き) デン・ハーグ市

Nieuwsuur の調査では、レッスン料は2018年から平均で約30%上がり、同じ期間の物価上昇(21%)を上回りました。自治体によっては70%前後上がった例もあったと伝えています。プールの光熱費の上昇と、指導員の不足が背景にあります。政府の書簡によれば、全国で100件を超える水泳指導員の求人が埋まっていません。

申し込みの流れ

市営のレッスンは、多くの自治体でオンラインの申し込みです。デン・ハーグ市の場合は次の順番で進みます。

  1. 市のスポーツ用ウェブショップで、子どもごとにアカウントを作る
  2. 希望のプールを選ぶ(ほかのプールでも可なら備考欄に書く)
  3. 待機リストに入り、画面に表示される「呼び出し予定日」を待つ
  4. 呼ばれたら、初回にプールの窓口で月ごとの利用券を買う
  5. 3回続けて連絡なしで休むと、枠を失って登録からやり直し

民間の教室は、空きがあればすぐ始められることも多い一方、料金は高めです。市営と民間の両方に登録しておき、早く呼ばれたほうで始める家庭もあります。

4. 待機リストと、自治体ごとの違い

ディプロマを取らせるのは保護者の役目なので、どの自治体に住むかで、待ち時間も費用の補助も変わります。オランダには自治体が342あり、制度の名前も窓口もばらばらです。

デン・ハーグ市の場合

DevNJ の拠点があるデン・ハーグ市は、市営のレッスンを6歳から行っています(申し込みは5歳から)。ディプロマAには待機リストがあり、待ち時間はプールごとに違います。BとCは、ふつうは待たずに続けられます。泳いだ経験のある子は、試し泳ぎで途中から始められることがあります。

待っている間の工夫として、市は「wachtverzachter(待機の緩和策)」を始めました。待機リストに入った子どもにQRコードを渡し、Aを取るまでは大人の付き添いで市営プールの一般遊泳を無料で使えるようにする仕組みです。所得の低い世帯向けの市のパス「Ooievaarspas(オーイファールスパス)」を持っていれば、窓口で提示してレッスンをパスに登録します。

大人も市営のレッスンを受けられますが、ディプロマAに限ると案内されています。

ほかの都市の例

アムステルダムは、自治体として学校水泳を続けている数少ない大都市です。NH Nieuws(2025年6月)によれば、前年は小学生の93.9%がディプロマAを持っていましたが、市の目標の95%超には届いていません。翌年度は127校が学校水泳に参加し、特別支援学校と、来たばかりの子どものための「nieuwkomersklas(新来者クラス)」にも広げる計画です。

NL Times(2026年7月)は、大人の待機についても伝えています。ロッテルダムの運営団体では約125人、ユトレヒトとアムステルダムで難民などに教える団体では160人、ナイメーヘンでは約100人が待っており、待ち時間は最長で半年に及ぶとのことです。次の表は、記事や市の案内で確認できた自治体ごとの状況です。

自治体 待機・枠 補助・工夫
デン・ハーグ Aに待機あり。B・Cはふつう待たない 待機中は一般遊泳が無料(QRコード)
アムステルダム 127校が学校水泳に参加予定 青少年基金で年約5,000人分を負担
ロッテルダム 大人の待機 約125人 割引券(2年間の事業、12月で終了予定)
ナイメーヘン 大人の待機 約100人 住民にスポーツ用の€150

補助を受けられるか確かめる

所得が低い世帯には、ほぼすべての自治体に何らかの補助があります。Mulier Instituut の調査(2024年)でも、調べた自治体のほとんどに制度があったとされています。ただ同じ調査は、制度が「最低所得」「お金の心配」のような項目の下に隠れていて、見つけにくいとも指摘しています。

窓口 内容 金額の例
Jeugdfonds Sport & Cultuur 子どものスポーツ費用を負担 フーケセ・ワールトでA上限€787.50、B・C各€250
同(アルメーレ) 主プール以外の教室 年€300、B・C各€200
samenvoorallekinderen.nl 4団体へ1枚の申請書で申し込み 団体と自治体による
自治体のパス デン・ハーグの Ooievaarspas など 自治体による

Jeugdfonds Sport & Cultuur(青少年スポーツ文化基金)は、保護者が直接申し込むのではなく、学校の先生やソーシャルワーカーなどの「仲介者」が allekinderendoenmee.nl から申請します。金額と条件は自治体ごとの規程(Spelregels)で決まり、ここに挙げた額は一例です。さかのぼっての申請はできないため、始める前に相談してください。

障がいのある子どもの場合

小人数で専門の指導員がつく「aangepaste zwemles(調整された水泳レッスン)」は、ふつうのレッスンより高くなります。NL Times(2026年10月)によると、Mulier Instituut が11の仲介者に聞き取った調査で、自治体の補助が実際の費用に届かない例が多いことが分かりました。2026年のスポーツ予算には、貧困家庭の子どものレッスン用に€40万の修正が加えられています。

5. 学校水泳はなぜなくなったのか

日本の感覚では「水泳は学校で習うもの」ですが、オランダでは事情が違います。学校水泳(schoolzwemmen、スホールズヴェメン)は1960年代に広がりましたが、費用がかさむことから1980年代に多くの学校がやめました。政府の付属資料は、1985年以降、学校に水泳を教える法的な義務はないと明記しています。

1960年代に学校水泳が広がり、1985年に学校の法的義務がなくなった。2018年は6〜16歳の94%が取得、2022年に未取得が13%に倍増。2025年4月に政府は学校水泳の復活を見送った。2028年に未取得10%以下、2030年に5%以下が目標。 1960年代 学校水泳が広がる 1985年 学校の法的義務がなくなる 2018年 6〜16歳の94%が取得 2022年 未取得が13%に倍増 2025年4月 学校水泳の復活を見送り 2028年 未取得10%以下が目標 2030年 未取得5%以下が目標
図3:オランダの子どもの水泳をめぐる出来事(出典:NL Times(2025年4月5日)、Kamerstuk 30 234 nr. 402、政府の付属資料(2025年12月)。点線は目標。2026年10月26日確認)

2025年4月に政府が復活を見送った理由

下院の求めを受けて、政府はコンサルティング会社 AEF と研究機関 SEO に、学校水泳を復活させる6つの案を試算させました(報告書名「Schoolslag in perspectief」)。2025年4月4日の書簡に、その結果がまとめられています。

案 国の追加負担(年) 主な課題
授業時間に全員が受ける昔ながらの方式(案1〜3) 約1億4,500万ユーロ 1クラス年94〜111時間の授業時間、校長の74〜81%が反対
Aのない子だけ授業中に(案4) 3,800万〜6,400万ユーロの幅 校長の84%が反対
Aのない子だけ放課後に(案5) 同上 法改正の検討が必要
学校はAのない子を見つける役(案6) 同上 校長の40%が反対

全員方式は、どの家庭の子も同じように泳げるようになる効果が最も大きい一方で、授業時間の3%強を水泳に回す必要があります。当時の副大臣は、学校は読み書きと計算という基礎に集中すべきだとして、どの案も採りませんでした。代わりに、ディプロマのない子どもを地域で把握し、既存のレッスンにつなぐ方針を示しています。

いまも学校で泳ぐ地域はある

全国の制度がないだけで、学校を通じたレッスンがなくなったわけではありません。NRZのよくある質問によれば、自治体の約3割では小学校を通じて水泳を習う仕組みがあります。ただし始まりは7歳前後のことが多く、NRZは、その前に保護者が自分でレッスンを手配する家庭が多いと説明しています。

自分の子どもの学校で何があるかは、学校の案内(schoolgids、スホールヒッツ)や保護者向けの説明会で確かめるのが確実です。「gymles(体育)の一部でプールに行く」程度の学校もあれば、Aまで面倒を見る学校もあります。

6. 大人向けのレッスン

DutchNews の記事の主役は、大人に水泳を教えるコーチです。2024年にアムステルダム北区で教室を開き、5〜6人の生徒から始めて、記事の時点で300人を超える大人に教えたと話しています(2026年9月の IamExpat の紹介記事では200人超)。授業は主に英語です。

彼がオランダに来たころ、アルメーレで国の費用によるA1(Aの前半)の無料コースを受けられたものの、働き始めて生活が安定してからは、続きのA2の無料枠の対象から外れたという話も出てきます。来たばかりの人向けの支援はあっても、働く大人は自費になりやすいということです。

大人が習う理由は二つに分かれる

大人の生徒は、大きく二つに分かれます。一つは、そもそも泳げない人です。生まれ育った国に泳ぐ機会がなかった人、水が怖い人がここに入ります。もう一つは、平泳ぎしかできない人で、子どものころにCまで取ったオランダ人の多くがここに入ります。トライアスロンやオープンウォーターに挑みたくなって、クロールを習い直すという流れです。

選択肢 向いている人 確かめること
市営のレッスン 費用を抑えて基礎を習いたい人 大人はAのみの所がある、言語はオランダ語中心
英語の大人向けスクール 来たばかりで、言葉の不安がある人 少人数か、体験レッスンがあるか
水が怖い人向けのクラス 顔を水につけるのが怖い人 浅い水から始めるか
女性専用クラス・女性コーチ 宗教や心理的な理由がある人 時間帯と場所
水泳クラブ クロールや持久力を伸ばしたい人 入会の泳力条件

IamExpat の紹介記事によれば、アムステルダム北区の教室は初級5人、中級・上級7人までの少人数で、まず割安な1時間の体験レッスンを受けられます。ACCESS の記事(2019年)で紹介された大人向けの教室の創設者は、泳げるようになるまでにおよそ10か月かかるのがふつうだと話しています。

習う前に知っておきたいこと

大人の場合、数回で劇的に泳げるようになることはまれです。週1回で半年から1年を見込んでおくと、途中で焦らずにすみます。オランダのプールは、レーンを時間で区切る「banenzwemmen(バーネンズヴェメン、レーン遊泳)」の時間帯が決まっていることが多く、練習の場所は確保しやすい国です。

政府の書簡によると、オランダには公共のプールが619か所、学校やホテルなどの準公共プールが約1,100か所あります。家から最寄りの(準)公共プールまでの平均距離は1,800mです。一方、2025年12月の付属資料は、公共プールだけを数えて2024年に621か所、平均距離2.6kmとしています。準公共プールを含めるかどうかで数字が変わる点に注意してください。

7. 水辺の安全:海、湖、運河

オランダの海岸線は523km、湖は2,400を超え、川と運河は5,000km以上あります。政府の書簡にあるとおり、明示的に禁止されていない場所なら、どこで泳いでもよいのが原則です。周辺国と比べても珍しい国だと、政府自身が書いています。

溺水の統計

CBS の2026年7月の発表によると、2025年に事故で溺れて亡くなったオランダの住民は100人(暫定値)でした。うち37%はオランダ以外にルーツのある人です。住民ではない人(旅行者や短期の労働者など)も32人が亡くなっています。

区分 2024年 2025年(暫定) 2016〜2025年の年平均
住民 113人 100人 93人
うちオランダ以外のルーツ 27% 37% 約3分の1
住民ではない人 39人 32人 30人

数字にはずれもあります。2024年の住民の溺死者は、2025年7月の発表では107人でしたが、2026年7月の発表では113人に直っています。また NL Times(2026年7月)は「前年に全国で250人が溺れた」と書いていますが、CBS の数字とは合いません。数え方の違う別の団体の数字と見られ、本記事では CBS の値を使います。

子どもで差が大きいのは来たばかりの家庭

同じ CBS の発表は、2016〜2025年の10年間で、10歳未満の溺水のリスクを出身ごとに比べています。ヨーロッパ以外から移住してきた子どもは、オランダ系の子どもの8倍以上、10〜19歳では14倍近くでした。

2016〜2025年の10万人あたりの溺水死者は、10歳未満でオランダ系0.20、ヨーロッパ以外からの移住者1.70。10〜19歳でオランダ系0.16、ヨーロッパ以外からの移住者2.22。 10歳未満 オランダ系 0.20 欧州外移民 1.70 10〜19歳 オランダ系 0.16 欧州外移民 2.22 単位:10万人あたりの溺水死者(年平均)
図4:出身ごとの溺水リスク、2016〜2025年(出典:CBS「Hoger risico op verdrinking onder niet in Nederland geboren kinderen」(2026年7月24日)、2026年10月26日確認)

溺れた場所も違います。オランダ系の住民は約7割が開けた水(湖、川、運河、海)でしたが、移住してきた人は93%、住民ではない人は98%が開けた水でした。CBS の2025年の発表では、10代の溺水の54%は開けた水で泳いでいる最中で、60歳以上ではほぼ半数が「落ちた」ことがきっかけです。日本人家庭も「来たばかりで、水辺の感覚がまだない側」にいると考えておくのが安全です。

海の旗の意味

デン・ハーグ市の観光局と地元のライフガード団体が案内している、海岸の旗の意味は次のとおりです。

旗 意味 どうするか
赤と黄の2色 ライフガードが見ている区域 この旗の間で泳ぐ
黄 海が危ない(強い風や流れ) 泳がない。入っても膝まで
赤 とても危ない(強い流れ、高波、雷) 水に入らない
紫 汚染やクラゲなど危険な生き物 泳がない
オレンジ 陸から沖へ風が吹いている 浮き輪やエアマットを使わない

デン・ハーグの海岸では、キーカダイン(Kijkduin)、ダインドルプ、セインポストダイン、スヘフェニンゲンの桟橋近くに救助ポストがあります。子どもには、保護者の連絡先を書いたリストバンドを付けてください。リストバンドは救助ポストや海の家で無料でもらえます。子どもが15分以上見つからなければ、ライフガードか警察に知らせます。

湖や運河で泳ぐとき

湖や運河で泳ぐなら、州が指定した公式の遊泳場所を選ぶのが基本です。指定の場所は夏の間、水質の検査結果が zwemwater.nl で公表されます。運河には船の往来があり、岸が垂直で上がる場所がないことも多いため、Cを持っていても単独では泳がないでください。全国水泳安全計画(Nationaal Plan Zwemveiligheid 2025–2028)は、乳幼児の保護者、来たばかりの人、60歳以上を重点の対象にしています。「Kopje onder gaat geruisloos en snel(頭まで沈むのは静かで一瞬)」という啓発の資料は10の言語で用意されています。

8. つまずきやすいところ

ここまでの制度を前提に、日本から来た家庭がつまずきやすい点をまとめます。どれも、事前に知っていれば避けられるものです。

つまずき 何が起きるか 避け方
登録が遅い 待機リストで1年以上待つことがある 4歳ごろに市営と民間の両方へ登録
日本の級で足りると思う Zwem-ABC には読み替えられない 教室で試し泳ぎを頼む
Aで止める 遊具のプールや湖で制限される Cまで続ける前提で計画
補助を探さない 申請できる額を受け取れない 自治体サイトで「zwemles」「minima」で検索
偽の免状 本物は発行許可のある教室だけ 教室が許可を持つか、NRZの一覧で確認
服での練習をしない 試験で戸惑う 教室の案内で「kleding」の日を確認

特に気をつけたいのが、ディプロマAで習い事を終えてしまうパターンです。Aのあとは待たずにBへ進めることが多く、BとCは回数も少なくてすみます。いったん休むと再開のときにまた待つこともあるため、Cまで一気に進むのが効率的です。

もう一つは、レッスンに通っていても、まだ一人で泳げるとは限らないことです。プールの監視員は保護者の代わりではありません。ディプロマを取るまでは、保護者が手の届く範囲で見守るのが基本です。

9. 日本と比べてどうか

日本では、ほとんどの人が学校のプールで泳ぎを習います。学習指導要領(平成29年告示)では、小学校の低学年が「水遊び」、中学年と高学年が「水泳運動」で、高学年ではクロールと平泳ぎに加えて「安全確保につながる運動」として背浮きや浮き沈みを扱います。プールがなく水泳の授業ができない場合でも、水泳の事故防止に関する心得は必ず取り上げるとされています。

一方で、その学校のプールが減っています。2024年の衆議院の質問主意書は、スポーツ庁の調査を引いて、屋外プールのある小学校が2018年の94%から2021年の87%に、中学校が73%から65%に下がったと指摘しています。改築に1〜2億円かかるとされ、民間のプールで授業をする自治体も増えています。

比べる点 日本 オランダ
誰が教えるか 学校(体育の授業) 原則として保護者が手配
共通の到達基準 学習指導要領の内容。全国共通の免状はない NRZの Zwem-ABC
重視する力 泳法(クロール・平泳ぎ)と背浮き 服を着て浮く・移動する・上がる
費用 授業の範囲は公費 ディプロマAで平均約€720
課題 学校プールの老朽化と減少 費用と待機による取得率の低下

日本の水泳教育は「全員に、学校で、泳法を」が軸で、オランダは「家庭ごとに、外部の教室で、身を守る力を」が軸です。どちらが優れているかというより、費用と責任をどこに置くかの違いです。日本では家庭の費用負担が軽い代わりに、プールの数や授業時間に左右されます。オランダでは到達の基準がはっきりしている代わりに、家庭の所得と行動力で差が出ます。

水難の統計の取り方も違います。警察庁の「令和7年における水難の概況等」によれば、2025年の夏(7〜8月)だけで水難者は535人、うち死者・行方不明者は241人でした。場所は海が53.8%、河川が35.0%です。オランダの CBS は事故による溺死を年単位で数えており、数字をそのまま並べて比べることはできません。

日本から来る家族に伝えておきたいこと

祖父母が夏に遊びに来る、日本から親戚の子どもが来る、という場面で役に立つ説明を並べます。

  • オランダでは「水泳免状のない子」は少数派で、遊具のあるプールでは免状の有無を聞かれることがある
  • 運河や湖は身近だが、深く、岸が高い。子どもだけで水辺に行かせない
  • 海は、赤と黄の旗の間だけで泳ぐ。黄色や赤の旗の日は入らない
  • 日本の学校で泳げていても、服を着たまま浮く練習はしておくと安心

10. 手順:明日やること

子どもがいる家庭と、大人が自分で習いたい場合に分けて、最初にやることを順番に並べます。

  1. 住んでいる自治体のサイトで「zwemles」と検索し、市営レッスンの対象年齢、申し込み方法、待機の目安を確かめる
  2. allesoverzwemles.nl の検索で、近くの発行許可を持つ教室を2〜3か所選ぶ
  3. 市営と民間の両方に登録し、待機の見込みを比べる
  4. 所得に不安があれば、自治体の制度と samenvoorallekinderen.nl を確認し、学校の先生などに仲介を頼む
  5. 待っている間は、家族でプールの一般遊泳に通って水に慣れる(デン・ハーグなら待機中は無料の一般遊泳がある)
  6. 大人は、英語の教室の体験レッスンを1〜2か所受けてから決める
  7. 夏前に、海の旗の意味と、家族で使う水辺の場所を確認しておく

11. ケースで考える(架空の例)

ここからは架空の家庭で、立場ごとの答えを考えます。実在の人物ではありません。

ケース1:4歳の子と来たばかりの家族

駐在でデン・ハーグに来た家族で、子どもは4歳です。日本では水泳を習っていませんでした。まず市のウェブショップに子どものアカウントを作り、5歳になったら申し込みます。同時に英語の民間教室にも問い合わせ、空きがあればそちらで先に始めます。待機の間は週末に家族でプールに通い、顔を水につけることに慣れておきます。

ケース2:日本でスイミングに通っていた8歳

日本のスイミングスクールで25mを泳げる8歳です。オランダのディプロマはありません。教室に「泳げるので試し泳ぎをしたい」と伝え、途中のクラスから始められるか相談します。服を着て泳ぐ練習は初めてなので、B・Cの試験までにその練習を重ねます。

ケース3:泳げない30代の会社員

日本では学校の授業で少し泳いだだけで、25mは泳げません。オランダで湖のある地域に住み、泳げるようになりたいと考えています。英語の大人向け教室の体験レッスンを受け、少人数の初級クラスに半年から1年通う計画を立てます。費用は自費ですが、勤務先の福利厚生でスポーツ費用が出ないかも確かめます。

ケース 最初の一手 目標
4歳・来たばかり 市営と民間に登録、待機中は一般遊泳 6〜7歳でA、続けてC
8歳・日本で経験あり 試し泳ぎで途中から 服での泳ぎに慣れてB・C
30代・泳げない 英語の教室で体験レッスン 半年〜1年で25mと立ち泳ぎ

12. やってはいけないこと

最後に、事故や損につながりやすい行動を表にまとめます。

やってはいけないこと 理由
子どもだけで運河や湖の近くで遊ばせる 深く、岸が高く、上がる場所がない
赤や黄の旗の日に海に入る 強い流れや高波で、泳げる人でも危ない
オレンジの旗の日に浮き輪やエアマットを使う 沖へ流される
Aを取ったから一人で大丈夫と考える Aは遊具のないプールが前提
発行許可のない教室の「免状」をそのまま信じる Zwem-ABC として扱われないことがある
補助を探さずにあきらめる ほぼすべての自治体に何らかの制度がある

13. チェックリスト

  • 自治体の市営レッスンの対象年齢と申し込み方法を確かめた
  • 発行許可を持つ教室を2〜3か所選んだ
  • 市営と民間の両方に登録した
  • 費用の総額(登録料、月額、交通費)を見積もった
  • 補助制度と仲介者を確かめた
  • 学校の水泳の有無を学校の案内で確かめた
  • 海の旗の意味を家族で共有した
  • 大人のレッスンも検討した

14. まとめ

  • 「94%」は政府資料で確かめられるが、2018年の6〜16歳など条件つき。2024年の6〜12歳は14%が未取得
  • ディプロマA・B・Cは「どこで安全に泳げるか」の基準で、Cまで取ると国の水泳安全基準を満たす
  • 学校に水泳を教える義務は1985年になくなり、学校を通じたレッスンがある自治体は約3割
  • ディプロマAの平均は約€720。デン・ハーグ市ではAまで平均75回のレッスン
  • 市営のレッスンには待機リストがあり、所得の低い世帯には補助がある
  • 大人も英語の教室や市営のレッスンで習える
  • 来たばかりの家庭の子どもは溺水のリスクが高く、海の旗と水辺の習慣を早めに覚えるのが大切

参考にした情報源

政府・統計・公的機関

報道・在住者向け媒体

いずれも2026年10月26日に確認したものです。料金、待機の状況、補助の条件は自治体と教室によって変わるため、申し込みの前にそれぞれの公式サイトで最新の内容を確認してください。


元記事はこちら

Many Dutch adults can only swim one stroke — DutchNews.nl

よくある質問

オランダの水泳ディプロマA・B・Cとは何ですか?
Nationale Raad Zwemveiligheid(全国水泳安全協議会、NRZ)が定める全国共通の水泳免状で、まとめて Zwem-ABC と呼ばれます。Aは遊具のないプール、Bはスライダーや波のプールがあるプール、Cはそれに加えて流れや大きな波のない湖や広い水路で、自分の身を守れる水準です。Cまで取ると国の水泳安全基準を満たしたことになります。海はどの段階でも対象外です。
子どもは何歳から水泳レッスンを始めればよいですか?
NRZは、ディプロマAのレッスンを4歳半から5歳ごろに始めるのがよいとしています。デン・ハーグ市のレッスンは6歳からで、5歳から申し込めます。待機リストがある地域では、始めたい時期の半年から1年前に登録しておくと安心です。4歳未満は親子で入る水慣れのクラスが一般的です。
オランダで水泳ディプロマAを取るのにいくらかかりますか?
政府は2025年の議会資料で、ディプロマAにかかる平均を約€720としています。1回€12前後のレッスンを60回ほど受ける計算です。報道では、登録料や交通費まで含めて子ども1人€500〜1,100とも伝えられています。BとCはそれぞれ追加で十数回のレッスンが目安です。
オランダの小学校では水泳の授業がありますか?
全国一律の授業はありません。学校が水泳を教える法的な義務は1985年になくなり、いまは学校を通じたレッスンがある自治体は約3割です。政府は2025年4月、学校水泳を全国で復活させる案を年1億4,500万ユーロかかるとして見送りました。原則として、保護者が民間や市営のレッスンを手配します。
大人になってからでもオランダで水泳を習えますか?
習えます。英語で教える大人向けのスイミングスクールが各都市にあり、少人数クラスや水が怖い人向けのクラスもあります。デン・ハーグ市の市営レッスンも、大人はディプロマAに限って受けられます。待機は最長で半年ほどと報じられているため、早めに複数の教室に問い合わせるのが現実的です。
日本から来た子どもも、オランダのディプロマを取り直す必要がありますか?
日本のスイミングスクールの級や学校での記録は、オランダの Zwem-ABC には読み替えられません。泳げる子どもでも、遊具のあるプールや校外学習で「Bはありますか」と聞かれる場面があります。泳力のある子は、試験的に泳いで途中のクラスから始められる教室もあるため、到着後に教室で相談してください。

出典: DutchNews.nl

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