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オランダの30%ルールは2027年に27%へ:手取りの試算と雇用主に確かめる10項目

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オランダの30%ルールは2027年に27%へ:手取りの試算と雇用主に確かめる10項目

オランダで働く外国人の税制優遇「30%ルール」は、2027年1月1日から上限が27%に下がります。名前のとおり3ポイントの差に見えますが、実際の影響は人によってかなり違います。適用が始まった年で区分が分かれ、2025年以降の区分には高い給与基準がかかるからです。

この記事は、IamExpat の提携記事「30% ruling changes in 2027」(2026年10月19日)を起点にしました。事実はすべて、税務当局(Belastingdienst)、政府(Rijksoverheid)、官報、議会資料で確かめています。提携記事の宣伝部分は取り込んでいません。確認日は2026年11月1日です。

予算全体は「Prinsjesdag 2026の予算案で何が変わる?」、資産課税は「Box 3 の見直し」にまとめました。ここでは30%ルールだけを扱い、自分の手取りの試算と、雇用主に確かめる項目に落とします。税務の個別助言はしません。

主に根拠にしたのは、次の資料です。

この記事で分かること 答えの要点
自分は27%になるのか 適用開始の時期で決まる(第3章)
2027年の給与基準はいくらか 未公表。出回る数字は4種類ある(第4章)
高所得者の上限はどう変わるか 273,000ユーロが基準で公表済み(第5章)
手取りはいくら減るのか 額面別の目安を表にした(第6章)
年内に何をすればよいか 雇用主に確かめる10項目(第11章)

1. いま決まっていること、まだ決まっていないこと

最初に、確定した話と未確定の話を分けます。27%への引き下げは、今年の予算案(Belastingplan 2027)で出てきた話ではありません。2024年に成立した Belastingplan 2025(官報 Stb. 2024, 434)で決まった変更です。

図1は、ここ数年の制度変更と、これからの予定を時系列に並べたものです。点線の丸は、まだ額が公表されていない項目です。

2024年1月にWNT上限が始まり、2025年1月に部分的非居住者の選択が廃止され、2026年1月にWNT上限が全員に広がり、2026年12月31日に部分的非居住者の経過措置が終わり、2027年1月1日に上限27%と新しい給与基準が始まる。2027年の給与基準の確定額は未公表。 2024.1 WNT の上限が始まる 2022年までの適用者は猶予 2025.1 部分的非居住者の選択を廃止 30/20/10 の縮小は撤回 2026.1 WNT の上限が全員に 生活費の実費は非課税の対象外 2026.12 部分的非居住者の経過措置が終了 31日まで 2027.1 上限27%・新しい給与基準 WNT 上限は273,000ユーロ 未定 2027年の給与基準の確定額 2026年11月1日時点で未公表
図1:30%ルールの変更の時系列(出典:Handboek Loonheffingen 2026、Staatscourant 2026, 29611、2026年11月1日確認)

次の表は、記事で扱う項目を「確定」「未公表」に分けたものです。

項目 状態 根拠
上限27%(2027年1月1日から) 法律で確定 Stb. 2024, 434
区分ごとの経過措置 法律で確定 政府・税務当局
WNT 上限273,000ユーロ 官報で公表済み Staatscourant
2027年の給与基準の確定額 未公表 手引きに「さらに指数化」
2027年の IND の給与基準 未公表 IND は毎年1月1日に改定
2027年の所得税率 法案の段階 Belastingplan 2027

税率と給与基準は別の話だと分かります。27%は動かない前提で準備し、給与基準の額は待つ、という分け方が現実的です。

27%は30%に戻らないのか

2025年12月には、D66 と CDA の連立案が引き下げを取り消す内容だと NL Times が報じました(NL Times)。一方、2026年3月にはアムステルダム周辺の地方議員ら約40人が、制度の廃止を国会に求めました(NL Times)。

政府の答えは、2026年7月8日付の議会あての書簡に出ています。連立合意(2026〜2030年)には「制度をこれ以上縮小しない」と書かれている、という説明です(Kamerstuk 32140 nr. 336)。廃止も追加の縮小もしない、という立場です。書簡は研究機関 SEO の評価を引き、住宅価格への影響はアムステルダムで賃貸0.9%、購入1.8%と小さく、制度は年平均1億2,850万ユーロの税収の純増につながると説明しています。

ただし、「縮小しない」は「30%に戻す」という意味ではありません。税務当局の手引き(2026年3月)も、The Hague International Centre(2026年9月)も、2027年の27%を前提に書いています。今回の調査では、30%に戻す法案は確認できませんでした。

2. 30%ルールの仕組みをおさらいする

expatregeling(エクスパットレヘリング、国外人材制度) は、海外から来た働き手の追加の費用を、証明なしの定額で非課税にできる制度です。税務当局は2025年から、30%ルールではなくこの名前を使っています。

「税率が3割安い」のではない

よくある誤解は、税率そのものが下がるという理解です。実際には、給与の一部を非課税の手当として扱う制度です。残りの給与には、普通の税率がかかります。

額面7万ユーロなら、2026年は最大21,000ユーロが非課税の手当で、課税されるのは49,000ユーロです。これは手引きの例そのものです。2027年に27%になると、手当は18,900ユーロ、課税分は51,100ユーロになります。

上限は「最大」であって、自動で満額になるわけではありません。税務当局は、雇用主がこの率を使う義務はなく、低い額でも合意できると書いています。

使うための条件

条件を表にまとめました。給与の金額は第4章で詳しく扱います。

条件 内容
雇用 オランダの給与で雇われている
採用 国外から採用、または国外から派遣
専門性 給与基準を超えていれば満たすとされる
距離 150kmルール(第7章)
手続き 雇用主と共同で申請し、決定通知を受ける
期間 最長5年(第8章)

研究機関の研究者と研修中の専門医には、給与基準がありません。プロサッカー選手のように業界のほぼ全員が基準を超える分野では、希少性の証明も求められます。

3. 自分はどの区分か:適用開始の時期で3つに分かれる

2027年の扱いは、制度がいつ自分の給与に適用され始めたかで決まります。図2は、政府の表と手引きの表を図にしたものです。

2023年までに適用された人は2027年以降も30%で現行の給与基準。2024年に適用された人は27%で現行の給与基準。2025年以降に適用された人は27%で新しい給与基準。 適用開始 上限 給与基準 2023年まで 30% 現行の基準を指数化 2024年 27% 現行の基準を指数化 2025年以降 27% 新しい高い基準
図2:適用開始の時期ごとの2027年以降の扱い(出典:Rijksoverheid、Handboek Loonheffingen 2026、2026年11月1日確認)

同じ内容を、2026年までと比べた表にします。2025〜2026年は、どの区分も30%です。

適用開始 2025〜2026年 2027年以降
2023年まで 30%・現行の基準 30%・現行の基準
2024年 30%・現行の基準 27%・現行の基準
2025年以降 30%・現行の基準 27%・新しい基準

2027年に差が開くのは、2025年以降に来た人だと分かります。

区分を決めるのは「実際に給与に適用したか」

手引きの条件は、給与に実際に適用した時期です。30%を保てるのは、遅くとも2023年最後の給与期間に適用していた場合です。現行の基準を保てるのは、遅くとも2024年最後の給与期間に適用していた場合です。

決定通知(beschikking、ベスヒッキング)の日付と適用の時期が近い人は、給与明細も見ておくと確かです。例外として、訂正の届け出で条件を満たせる場合があると、手引きは税務当局の見解(KG:041:2024:13)を挙げています。

中断すると区分を失うことがある

転職のあいだが空くと、経過措置を失うことがあります。3か月以内に新しい雇用主のもとで共同申請すれば、中断とは扱われません。これを超えて空くと、改めて対象になっても新しい区分と扱われる可能性があります。

2023年以前から適用を受けている人が2027年に転職する場合は、この3か月が特に大きな意味を持ちます。

4. 給与基準:2027年の額はまだ出ていない

いちばん情報が混乱しているのが、給与基準です。IamExpat の記事が2024年の物価水準と断って書いている50,436ユーロが、別の記事では2027年の額のように読めることがあります。

確定している数字と、そうでない数字

下の表は、公表されている数字を年ごとに並べたものです。

年 一般(ユーロ) 30歳未満・修士(ユーロ) 状態
2024年 46,107 35,048 確定
2025年 46,660 35,468 確定
2026年 48,013 36,497 確定
新基準(2024年水準) 50,436 38,338 指数化の出発点
手引きの予告(2026年3月) 51,899 39,450 さらに指数化

上の3行は税務当局の案内の数字です。新基準は議会資料にあり、2025〜2027年の指数で調整すると書かれています。手引きは「2027年の基準はこれより高くなる」と明記しています。

なお、政府の事業者向けサイト Ondernemersplein は、若手の基準を38,388ユーロと書いています。議会資料は38,338ユーロで、手引きの39,450ユーロも38,338ユーロから計算すると一致します(38,338×1.029)。この記事では38,338ユーロを採りました。

2027年の額を幅で見積もる

確定を待つ間は、幅で見ておくと判断しやすくなります。次の表はこの記事の独自の計算で、公式の数字ではありません。

計算の前提 一般(ユーロ) 30歳未満・修士(ユーロ)
手引きの額×1.01248 52,547 39,942
手引きの額×1.026 53,248 40,476
Salaris Vanmorgen の額×1.026 53,887 40,961

1.026は、2027年の本来の物価調整の係数です。1.01248は、Belastingplan 2027 の資料が所得税について示す、調整を48%に抑えた案の係数です。給与基準にどちらが使われるかは、確認できた資料には書かれていません。

給与専門誌 Salaris Vanmorgen は2026年の水準で52,521ユーロと書いており、手引きの51,899ユーロより高い数字です。計算すると、前者は2025年と2026年の指数を両方かけた額、後者は2026年の指数だけをかけた額に当たります。若手の列の3行目は、同じ計算を38,338ユーロに当てはめた額です。

この記事の試算では、約53,250ユーロを仮の数字として使います。現行の基準(2024年までの区分)は、同じ幅の計算で約48,600〜49,300ユーロです。

基準は「手当を引いた後」の給与で見る

給与基準は額面ではなく、手当を除いた課税給与で判定します。つまり、手当を増やすほど基準に近づきます。手当は、課税給与が基準を下回らない範囲までしか使えません。

手引きの例では、2026年に額面5万ユーロの人の手当は1,986ユーロまでです。30%の15,000ユーロではありません。

同じ考え方で、上限を満額使える額面を計算すると、次のとおりです。

区分 判定に使う基準(ユーロ) 満額を使える額面(ユーロ)
2026年・全区分(30%) 48,013 約68,590
2027年・2023年まで(30%) 約48,600〜49,300 約69,400〜70,400
2027年・2024年(27%) 約48,600〜49,300 約66,600〜67,500
2027年・2025年以降(27%) 約52,500〜53,900 約72,000〜73,800

2027年の2行目以降は独自の計算です。2025年以降の区分だけ、満額のラインが約4,000〜5,000ユーロ上がることが読み取れます。

下回ると、その年の1月にさかのぼって失効する

手引きによれば、基準は年単位で確かめます。下回ると、制度はその年の1月1日にさかのぼって失効し、雇用主は申告を訂正します。そして、翌年に給与が戻っても再開できません。

例外もあります。年の途中で入社や退社をした場合は、年額に換算します。産休、育休、出生休暇などで給与が下がった場合は、休まなかった場合の給与で判定できます。

税務当局の申請書は、失効を防ぐ合意を雇用主に強く勧めています。「課税給与が基準を下回らないよう、手当を減らすことがある」と合意する内容です。合意があるかどうかは、第11章の確認項目に入れました。

30歳になる月の次の月から基準が変わる

30歳未満の修士の低い基準は、30歳になる月までです。翌月からは一般の基準がかかります。この基準は、オランダの修士か、それと同等の外国の学位が条件です。外国の学位が同等かどうかは、オランダの国際教育機関 Nuffic(ニュフィック)が判断できると手引きは書いています。

日本の4年制の学士だけでは、この低い基準の対象にならない点に注意してください。修士かどうかで、基準が1万ユーロ以上違います。

5. WNT 上限:2027年は273,000ユーロ

高所得の人に関わるのが WNT(Wet normering topinkomens、公的部門の高額報酬規制法) の上限です。手当を計算できる給与に、この額までという天井があります。

2024年に始まり、2022年までに適用された人には猶予がありました。その猶予も2025年末で終わり、2026年からは全員に上限がかかっています。

官報で公表済みの数字

2027年の上限は、官報(2026年8月24日公表)で273,000ユーロと決まりました。起点の IamExpat の記事は「まだ発表されていない」と書いていますが、これは正しくありません。

項目 2026年(ユーロ) 2027年(ユーロ)
WNT 上限 262,000 273,000
非課税の最大額(27%) なし 73,710
非課税の最大額(30%) 78,600 81,900

2027年の最大額は、上限に率をかけた計算です。73,710ユーロは専門媒体の記事にも同じ数字があります。

27%の人は最大額が4,890ユーロ下がります。一方、30%のままの人は上限が上がるので、3,300ユーロ増えることになります。

年の途中は月割りで計算する

年の途中で来た人や帰る人は、上限も期間に応じて小さくなります。手引きの例では、6月17日に働き始めて半年余りで15万ユーロを受け取る人は、上限の計算で手当が42,324ユーロに抑えられます。転職した年は、雇用主ごとに期間で割ります(手引きが挙げる税務当局の見解 KG:041:2025:5)。

6. 手取りの試算:自分の数字を当てはめる

ここからが本題です。税額そのものではなく、2026年と2027年の差だけを見積もります。計算は4段階です。

  1. 第3章の表で区分を確かめる
  2. 額面に上限の率をかけて、手当を出す
  3. 額面から手当を引き、基準を下回るなら手当を減らす
  4. 増えた課税額に、自分の限界税率をかける

限界税率は1つではない

増えた課税額にかかる税率は、法案の税率だけでは足りません。所得が上がると控除が減るので、実質の負担はもう少し高くなります。下の表は2026年の控除の減り方を当てはめたものです。

課税給与の帯(ユーロ) 税率 控除の減少 目安の負担率
45,592〜78,426 38.16%(案) 6.398%+6.51% 約38〜51%
78,426〜132,920 49.50% 6.51% 約50〜56%
132,920超 49.50% なし 約50%

控除の率は税務当局の2026年の表、38.16%は Belastingplan 2027 の案です。2027年の控除額は未確定なので、目安として幅で示しました。

額面別の目安

図3は、額面7万ユーロの人の手当が、区分でどう変わるかを示しています。同じ額面でも、2025年以降の区分は手当が約2,150ユーロ少なくなります。

額面7万ユーロの場合、2026年は21,000ユーロ、2027年の2024年区分は18,900ユーロ、2027年の2025年以降の区分は仮の給与基準で16,750ユーロ。 2026年 21,000 2024年区分 18,900 2025年以降 16,750
図3:額面7万ユーロの人の非課税の手当(ユーロ)。2025年以降の区分は仮の給与基準53,250ユーロでの独自の計算(基準の出典:Handboek Loonheffingen 2026、2026年11月1日確認)

下の表は、2025年以降の区分の人について、額面が同じ場合の差を計算したものです。年額の幅は、負担率の下限と上限です。

額面(ユーロ) 2026年の手当 2027年の手当 年の増税額(ユーロ) 月の差(ユーロ)
58,000 9,987 4,750 約2,000〜2,670 約167〜223
70,000 21,000 16,750 約1,620〜2,170 約135〜181
80,000 24,000 21,600 約920〜1,230 約76〜102
100,000 30,000 27,000 約1,150〜1,530 約95〜128
150,000 45,000 40,500 約2,230〜2,520 約186〜210
300,000 78,600 73,710 約2,420 約202

額面7万ユーロの差が額面8万ユーロより大きいことが、この表の要点です。給与基準の影響を受ける帯では、3ポイント以上の差が出ます。

2024年区分の人は基準の影響をほぼ受けません。額面7万ユーロなら増える課税額は2,100ユーロで、年に約800〜1,070ユーロ、月に約67〜89ユーロです。2023年までの区分は、この差がありません。

基準の近くにいる人の帯

図4は、2025年以降の区分について、2027年の額面がどの帯にあるかを示します。額面が基準を超えない場合、上の表の計算では済みません。

額面が約5.3万ユーロ以下なら制度は失効する。約5.3万から約7.3万ユーロでは手当が減る。約7.3万から27.3万ユーロでは27%を満額使える。27.3万ユーロを超えると手当は定額になる。 失効 手当が減る 27%満額 定額 約5.3万 約7.3万 27.3万
図4:2025年以降の区分の、2027年の額面の帯(ユーロ、幅は等倍ではありません)。境界の約5.3万と約7.3万は仮の基準53,250ユーロでの独自の計算、27.3万はStaatscourant(2026年11月1日確認)

いちばん注意が必要なのは左端の帯です。基準を年額で下回ると、手当が減るだけでなく制度そのものが失効します。2026年に額面53,000ユーロで手当を使っていた人は、2027年に昇給がなければ対象外になる計算です。

この試算の限界

この試算は、次のものを含めていません。実際の差はこれより動きます。

  • 2027年の昇給、賞与、労働控除の173ユーロの増額
  • 2027年の税率が全体に上がる分(第1区分・第2区分)
  • 雇用主が手当の減少を補う合意や、手取り保証
  • 医療費手当など、所得で変わる給付への影響

DutchNews の提携記事は、提携先の税理士の話として「多くの人で月50〜100ユーロ」と書いています。独立した裏づけのない数字ですが、満額を使える帯の計算とはおおむね重なります。

7. 150kmルールと「国外から採用」の条件

条件のうち、日本から来た人が見落としやすいのが、日本を出た後の経由地です。

日本から直接なら問題になりにくい

手引きの条件は、最初の勤務日の前24か月のうち、16か月を超えてオランダの国境から直線で150km以上離れて住んでいたことです。

日本に住み続けていた人は問題になりにくい条件です。ただし、欧州で勤務や留学をしてから来る人は別です。税務当局は、ベルギー、ルクセンブルク、北フランス、ドイツの大部分、英国の一部は対象外になりうると書いています。

直前の生活 確認すること
日本から直接赴任 問題になりにくい
デュッセルドルフ駐在から異動 距離の条件を満たしにくい
ロンドンから転職 地域により異なる。距離を測る
オランダの大学院から就職 「国外から採用」と距離の両方
オランダ在住の配偶者として来蘭後に就職 「国外から採用」を満たさない可能性

博士号を取った人には例外があります。修了後1年以内にオランダで働き始め、研究開始前の24か月の居住地が条件を満たしていれば対象になりえます。

2回目のオランダ勤務

以前にオランダで働き、5年以内に戻る人にも例外があります。前回の勤務の前に距離の条件を満たし、前回も制度の対象だったなどの条件です。

8. 期間と申請:5年と4か月

27%への引き下げで、期間が延びることはありません。手引きによれば、27%は残りの期間にそのまま適用されます。

5年から引かれる期間

最長は5年です。さらに、到着前の25年間にオランダで暮らしたり働いたりした期間が引かれます。年20日までの勤務や、年6週間までの私用の滞在は引かれません。

オランダへの留学や以前の赴任がある人は、決定通知の終了日を確かめてください。子どものころにオランダに住んでいた人も、25年以内なら確認が必要です。

申請は4か月以内

申請の時期 適用の開始 開始前の扱い
勤務開始から4か月以内 勤務開始日にさかのぼる 実費との選択が可能
4か月を過ぎた後 申請の翌月1日 実費の非課税だけ

たとえば2月1日に働き始め、6月15日に申請すると、開始は7月1日です。申請書は雇用主と本人の両方が署名し、税務当局は8週間以内に回答します。

転職と終わり方

転職時は、新しい雇用主と共同で申請し直します。前の仕事が終わって3か月以内に新しい仕事を始め、4か月以内に申請するのが条件です。

制度は、最後の勤務日が入る給与期間の次の期間の末日で終わります。給与を受けたまま仕事を離れる期間に入った場合は、次の給与期間までしか使えません。退職の時期と賞与の時期を考えるときに関わる点です。

9. 部分的非居住者の経過措置が終わる

partiële buitenlandse belastingplicht(パルツィエーレ・ブイテンランツェ・ベラスティングプリヒト、部分的非居住者) は、Box 2 と Box 3 について、外国の居住者のように扱う仕組みです。これを選ぶと、日本の預金や投資は Box 3 の対象外でした。

2025年1月1日に廃止され、2023年最後の給与期間に適用があった人だけが、2026年12月31日まで使えます。つまり、30%を保てる区分の人でも、2027年分からは国外資産を申告します。

Box 3 の中身は別の記事に任せ、ここでは実務の3点だけ挙げます。

2027年に変わること 誰に すること
国外資産が Box 3 の対象に 経過措置を使っていた人 1月1日の残高を記録する
簡易な申告の取り決めが終わる 会社の取り決めの対象者 申告が必要か確かめる
資料を自分で集める 国外に資産がある人 日本の口座の一覧を作る

2番目は見落としやすい点です。手引きは、雇用主と税務当局の取り決めで本人の申告を不要にする簡易な方法が、経過措置の人についても2027年までと書いています。これまで申告していなかった人に、申告が必要になることがあります。

2027年の Box 3 の非課税枠はまだ審議が続いています。詳しくは「Box 3 の見直し」を読んでください。

10. 手取り以外に動くもの

手当の率が変わると、給与明細の税額以外にも影響が出ます。

失業手当などの給付の基準

手当には、従業員保険(werknemersverzekeringen)の保険料がかかりません。その代わり、失業手当の日額の計算にも入りません。2022年の中央上訴裁判所の判決がこの扱いを認めています。

27%になると課税給与が増えるので、保険料と給付の計算の基準はわずかに上がります。保険料は主に雇用主が負担するので、雇用主の費用も増えると考えられます。

住宅ローンと年金

住宅を買う人にとっては、借りられる額に影響します。ローンは30年、制度は最長5年という差があります。IamExpat の提携記事は、額面9万ユーロで手当が27,000ユーロから24,300ユーロに減る例を挙げています。貸付基準の扱いは、金融機関に確かめてください。

会社の年金の掛金が手当を除いた給与で決まるかどうかも、規程によります。第11章の項目に入れました。

別の基準:IND の高度人材

IND(移民局)の給与基準は、30%ルールの基準とは別のものです。片方を満たしても、もう片方を満たすとは限りません。

項目 30%ルール IND の高度人材
確かめる単位 年額 月額
2026年の額(30歳以上) 48,013ユーロ 5,942ユーロ
2026年の額(30歳未満) 36,497ユーロ(修士) 4,357ユーロ
休暇手当 課税給与として確認 含めない
下回ったとき 制度の失効 在留資格に影響

IND の額は公式の一覧によるもので、毎年1月1日に改定されます。基準は別々に確かめてください。

実費で非課税にする方法

定額の手当の代わりに、実際の追加費用を証明して非課税にする方法もあります(手引きの第19.4節)。ただし、2026年1月から、物価の差や光熱費、私用の国際電話は対象外です。住居費は給与の18%を超える部分だけです。

選択は年に1回、その年の最初の給与期間で行います。2027年分は、2027年1月の給与が区切りになります。高い家賃や学費を負担している人には関係するかもしれませんので、雇用主に尋ねてください。なお、インターナショナルスクールの学費は定額の手当とは別に非課税にできる場合があります。

11. 雇用主に確かめる10項目

ここまでの内容を、人事や給与担当に尋ねる形にしました。特に上の4つは、1月の給与の前に答えをもらっておきたい項目です。

番号 尋ねること 理由
1 自分の区分は3つのどれか 率と基準が決まる
2 2027年の手当はいくらの予定か 満額とは限らない
3 基準を下回らない合意はあるか 失効を防ぐ
4 減った分を会社が補うか 手取りが変わる
5 額面と手当の計算の順番 契約の書き方を確かめる
6 賞与は基準の判定に入るか 年末の調整に関わる
7 年末に手当を調整するか 上限や基準の扱い
8 年金の掛金の計算の基準 手当を含むか
9 実費の方式を検討するか 1月に選択する
10 確定額はいつ社内に周知するか 給与明細の確認時期

手引きには、年の手当を各給与期間に均等に配分してよいこと、年末の計算で調整できることが書かれています(KG:041:2024:22)。どちらを選んでいるかで、毎月の手取りの動きが変わります。

12. 媒体で食い違う数字

調査の過程で、在住者向け媒体の数字がかなり違うことが分かりました。多くは間違いというより、年や計算の前提の違いです。読むときの目印として表にしました。

媒体 書かれている数字 実際の意味
IamExpat 2027年の WNT 上限は未公表 官報で273,000ユーロと公表済み
DutchNews 2027年の基準は「5万ユーロ強」 指数化前。無出典の提携記事
Expatica 給与計算 上限233,000ユーロ 古い年の数字と読める
Expatica 解説 基準65,868ユーロ(2024年) 額面換算(46,107÷0.7)
DutchReview 基準46,660ユーロ、上限246,000ユーロ 2025年の数字
Xpat.nl 期間96か月、基準41,954ユーロ 古い制度の説明が残っている

それぞれ、Expatica の計算ページ、Expatica の解説(2026年7月更新)、DutchReview(2026年4月)、Xpat.nl です。

Expatica の解説は30/20/10の段階的な縮小が今も続くように書いていますが、これは2025年に撤回された内容です。ACCESS の税制の解説にも、部分的非居住者を選べるという古い一文が残っています。

一方で The Hague International Centre の解説は、金額は書かず、公式サイトに誘導しています。

13. 日本と比べてどうか

日本の感覚で理解しやすいよう、制度の違いを並べます。どちらが有利かではなく、前提の違いとして読んでください。

項目 オランダ 日本
仕組み 給与の一部を非課税の手当に 近いのは非永住者の課税範囲
対象 国外から採用された人 日本国籍がない居住者
期間の目安 最長5年 過去10年で5年以下
給与の条件 あり なし
手続き 雇用主と共同で申請 居住期間で判定
最高税率 49.50% 45%(別に住民税)

日本の非永住者は、国外で生じた所得のうち日本で支払われたものや送金されたものなどに課税範囲を絞る制度です。給与そのものを非課税にするわけではなく、日本国籍の人は対象になりません。比較のための目安と考えてください。所得税の最高税率は45%で、住民税が別にかかります。

駐在の人の観点

日本の会社から派遣されている人は、手取り保証(ネット保証) の社内規程があるかどうかで話が変わります。保証があれば、手当の減少の負担は主に会社に移ります。本人の手取りは変わらず、会社の費用が増える形です。

手引きは、こうした税の補填(tax equalization)を非課税の費用と認めていません。2027年の社内規程の見直しがあるかどうかを、日本の人事に確かめてください。

ほかに確かめておきたい点です。

  • 社会保障は日蘭の社会保障協定(2009年発効)の適用証明書で日本の制度に残っているか。5年を超える派遣は個別の協議が必要です
  • 日本払いの給与があるとき、オランダの給与の計算にどう含めているか
  • 5年の終わりと帰任の時期が合っているか

現地採用の人の観点

現地採用の人は、会社が補わない限り、減少分がそのまま手取りに出ます。契約上の額面が同じなら、課税の配分が変わるだけだからです。

交渉の材料になるのは、額面が基準の近くにある場合です。額面が7万ユーロ前後の2025年以降の区分の人は、少しの昇給で手当の減り方が変わります。転職するときは、3か月と4か月の期限と、区分を失わないかを先に確かめてください。

日本の税務では、生活の本拠で居住者か非居住者かを判定します。住民税は1月1日の住所で決まるので、帰国の時期を考えるときは、この点も関わります。日本の資産については、日蘭の租税条約で扱いが整理されていますが、個別の判断は税理士に確かめてください。

日本の家族への伝え方

「30%ルール」は、日本の家族に説明しにくい言葉です。短い言い方を用意しておくと、誤解を避けられます。

聞かれること 短い答え方
税金が3割安いの? 給料の一部が非課税になる制度。税率は同じ
なぜ減るの? 2年前に決まった法律で、上限が下がる
どのくらい減るの? 月に数十〜百数十ユーロくらい。人による
ずっと続くの? 最長5年。その後は税金が増える前提で考える
日本の貯金は? オランダの資産の申告に入るようになる場合がある

14. ケースで考える(架空の例)

ここからは架空の人物です。実在の人や会社とは関係ありません。計算は、第4章と第6章の仮の数字を使っています。

人物 立場 2027年の扱い 注目点
Aさん(38歳) 2022年に駐在、額面9万ユーロ 30%のまま 部分的非居住者の終了、2027年が最終年
Bさん(33歳) 2024年に現地採用、額面7万ユーロ 27%・現行の基準 月約67〜89ユーロ減
Cさん(35歳) 2025年に現地採用、額面7万ユーロ 27%・新基準 月約135〜181ユーロ減、合意の確認
Dさん(29歳) 2026年に修士で採用、額面5万8千ユーロ 27%・若手の基準 30歳で基準が上がる

Dさんの例は注意が必要です。30歳になる月までは低い基準で、27%を満額使えます(手当15,660ユーロ)。翌月からは一般の基準になり、仮の基準では手当が年額換算で約4,750ユーロまで減ります。誕生日の翌月に手取りが変わることになるので、年の途中の扱いを給与担当に尋ねてください。

Aさんは、30%を保てる一方で、2027年分から日本の資産の申告が必要になります。

15. 年内に進める手順

次の順番で進めると、確定額の発表を待ちながら準備できます。

  1. 今週:決定通知と給与明細で、適用開始の時期と終了日を確かめる
  2. 11月中:第6章の表に自分の額面を当てはめ、手当と月の差を幅で計算する
  3. 11月中:第11章の項目を人事に送る。上の4つを優先する
  4. 12月:税務当局のニュースレター(Nieuwsbrief Loonheffingen)などで確定額を確かめる
  5. 2026年12月31日まで:部分的非居住者を使ってきた人は、日本の口座の一覧を作る
  6. 2027年1月1日:国外も含めて残高の記録を残す
  7. 2027年1月の給与:手当の額を明細で確かめ、見込みとの差を人事に尋ねる

たとえば2025年版のニュースレターは、2024年12月24日付でした。今年も同じ時期とは限りません。

16. やってはいけないこと

よくある誤りを、理由とともに挙げます。

やってはいけないこと 理由
50,436ユーロを2027年の基準と思う 2024年水準で、実際はもっと高い
額面が基準を超えれば安心と考える 判定は手当を引いた後の給与
失効しても翌年戻せると考える 給与が戻っても再開できない
27%で期間が延びると考える 期間は延びない
無料の計算サイトの結果だけで決める 30/20/10 など古い前提が残っている
手取り保証を自動で続くと考える 社内規程の見直しがありうる
手当の差だけで転職や帰国を決める 3か月の空白で区分を失う可能性がある

17. まとめ

  • 27%への引き下げは2027年1月1日からで、法律で決まっています
  • 2023年までの区分は30%のまま、2024年は27%、2025年以降は27%と新しい給与基準です
  • 2027年の給与基準の確定額は未公表で、50,436ユーロは2024年水準の数字です
  • 手当を引いた後の給与が基準を下回ると、その年の1月にさかのぼって失効します
  • WNT 上限は273,000ユーロで公表済みです
  • 部分的非居住者の経過措置は2026年12月31日で終わります
  • 雇用主には、区分、手当の額、基準の合意、補填の有無を確かめてください

参考にした情報源

政府・税務当局・議会・裁判所

専門媒体

在住者向け媒体

日本の制度

いずれも2026年11月1日に確認したものです。制度と金額は変わるため、判断の前に公式サイトで最新の数値を確認してください。この記事は一般的な情報の整理で、税務の個別の助言ではありません。


元記事はこちら

30% ruling changes in 2027: What employers & internationals should know — IamExpat

よくある質問

30%ルールは2027年に全員が27%になりますか?
全員ではありません。2023年最後の給与期間までに適用が始まった人は、期間の終わりまで30%のままです。2024年に適用された人は2027年から27%で、給与基準は現行のままです。2025年1月1日以降に適用された人は、27%に加えて高い給与基準がかかります。
2027年の給与基準はいくらですか?
2026年11月1日時点で確定額は公表されていません。税務当局の手引き(2026年3月版)は一般51,899ユーロ、30歳未満の修士39,450ユーロと示し、さらに指数化されると書いています。IamExpat などの50,436ユーロは2024年の物価水準の数字で、2027年の額ではありません。
27%になると手取りはいくら減りますか?
額面が同じで満額を使える場合、課税される額が額面の3%分増えます。額面7万ユーロ(2024年適用の区分)なら年に約800〜1,070ユーロ、月に約67〜89ユーロが目安です。2025年以降の区分で給与基準に届かない人は、減り方が大きくなります。正確な額は給与明細で試算してください。
給与基準を下回った年はどうなりますか?
給与基準は年単位で確かめます。下回ると、その年の1月1日にさかのぼって制度が失効し、雇用主は給与税の申告を訂正します。翌年に給与が戻っても再開できません。産休や育休で給与が下がった場合は、休まなかった場合の給与で判定できます。
WNT の上限は2027年にいくらになりますか?
2027年の上限は273,000ユーロで、官報(Staatscourant)で公表済みです。この額を超える給与に手当は計算できません。27%の人の非課税額の上限は73,710ユーロ、30%のままの人は81,900ユーロになります。2026年は262,000ユーロと78,600ユーロでした。
部分的非居住者の扱いはいつ終わりますか?
経過措置を使える人でも2026年12月31日までです。使えるのは2023年最後の給与期間に適用があり、その後に中断がない人です。2027年分からは、国外の預金や投資も Box 3 の申告対象になります。二重課税の扱いは条約と資産の種類によって変わります。

出典: IamExpat

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