オランダの在住者向け英語メディア IamExpat が、警察が摘発した新しい「銀行なりすまし詐欺」を伝えていました。AI で作った音声の自動電話から偽の銀行員につなぎ、アプリを入れさせてカードをスマホにかざさせる手口です。カードの非接触決済(NFC)の情報は共犯者のスマホに中継され、ATM で現金が引き出されていました。
警察ロッテルダムのサイバー犯罪班が把握した被害は、3週間で約170人、約38万ユーロです。被害者は全国にいて、年代も20代から80代まで幅がありました。「詐欺に遭うのは高齢者」という思い込みが通用しないことを示す事件でもあります。
この記事では、起点の IamExpat の記事に加えて、警察(politie.nl)の発表、Fraudehelpdesk(オランダの詐欺相談窓口)とオランダ銀行協会(NVB)の統計、金融苦情処理機関 Kifid の判断、そして在住者向け媒体の報道を突き合わせました。オランダで多いなりすまし詐欺をどう見分けるか、被害に遭ったら何をどの順番でするか、銀行はどこまで補償するのかを、日本の制度と比べながら整理します。
この記事が主に根拠にした情報
- IamExpat「Bank card scam in the Netherlands cons 170 victims out of 380.000 euros」(2026年10月27日)
- 警察(politie.nl)「Twee verdachten aangehouden in onderzoek naar nieuwe vorm van bankhelpdeskfraude」(2026年10月20日付)
- NVB の2025年の詐欺統計(2026年4月28日公表)と Fraudehelpdesk の2025年の年次・2026年上半期の数値
- Kifid 審査委員会の判断 CvB 2026-0022(2026年4月)と、NL Times が報じた6月の判断
| この記事で分かること | 答えの要点 |
|---|---|
| 何が起きたのか | AI音声の電話とカード情報の中継で、3週間に約170人・38万ユーロ(第1章) |
| オランダで多い詐欺は | 銀行・公的機関・家族・取引相手のなりすまし。電話と WhatsApp が入口(第3章) |
| どう見分けるか | 「信頼」と「急がせる圧力」がそろったら疑う。銀行が絶対にしないことを覚える(第4章) |
| 被害に遭ったら | 銀行→パスワードと証拠→警察→Fraudehelpdesk の順(第5章) |
| お金は戻るのか | 犯人が動かしたなら原則全額。自分で振り込んだなら任意補償(第6章) |
| 日本とどう違うか | 日本の預金者保護法と考え方は近いが、届出の期限と例外の範囲が違う(第8章) |
1. 何が起きたのか:AI音声とカード情報の中継
手口の流れ
警察の発表によると、手口は4つの段階に分かれていました。
最初に来るのは、AI で作った録音音声の電話です。「口座に不審な動きがあります。心当たりがなければ1を押してください」と流れます。録音は数十種類あり、声も、名乗る銀行や会社も、話の筋書きも使い分けられていました。
1を押すと、保留音のあとで「銀行員」につながります。この人物は決まった台本に沿って話し、「すぐにカードを止めないと危ない」と急がせます。そして、カードを止めるためと称してアプリをダウンロードさせ、カードをスマホの背面にかざすよう指示します。
アプリは何も止めません。カードの NFC チップの情報を読み取り、共犯者の「出し子」用アプリへ送ります。出し子は同じアプリを入れたスマホを持って ATM や決済端末の前で待機しており、被害者が気づかないうちに数千ユーロを引き出していました。
数字で見る事件
今回の事件の主な数字を、警察の発表と各媒体の報道から並べました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 被害額 | 約38万ユーロ |
| 被害者 | 約170人。全国、年代はさまざまで20〜30代も数十人 |
| 把握した期間 | 犯行グループのサーバーを3週間監視 |
| 発覚のきっかけ | 9月中旬、銀行が電子犯罪対策チーム(ECTF)経由で報告 |
| 逮捕 | 10月6日、23歳(Vaassen)と25歳(Ede)の男2人 |
| 勾留 | 10月20日、ロッテルダム地裁が少なくとも90日の勾留延長を決定 |
被害額を被害者数で割ると、1人あたり平均2,200ユーロ前後になります(記事内の概算)。最初の兆候から逮捕まで4週間かからなかった点を、警察は銀行との連携の成果として挙げています。
報道どうしで食い違っている点
細部では、媒体によって書き方が違うところがあります。
警察の発表と NL Times は、23歳の男が技術面の中心で、25歳の男が出し子の調整役だとしています。一方、起点の IamExpat の記事では役割が逆に書かれています。この記事では警察の発表に合わせました。
また、警察は「これまで見たことのない技術的な手口」と説明しています。同じ発表のなかで、末端の出し子を捕まえても代わりがすぐ見つかるため、中心人物を押さえることが被害を減らす近道だとも述べています。
2. オランダの銀行なりすまし詐欺はどれくらい起きているか
銀行側の数字:2025年は被害額が増え、被害者数は減った
銀行なりすまし詐欺は、オランダ語で bankhelpdeskfraude(バンクヘルプデスクフラウデ、銀行の窓口を装う詐欺) と呼ばれます。NVB(Nederlandse Vereniging van Banken、オランダ銀行協会)は毎年、加盟銀行の被害をまとめて公表しています。
NVB の2026年4月28日の発表によると、2025年の bankhelpdeskfraude の被害額は2,580万ユーロで、前年から300万ユーロ余り増えました。一方、被害に遭った顧客は14%減って5,900人弱です。1件あたりの被害が大きくなっていることが読み取れます。
| 項目(NVB、2025年) | 数値 |
|---|---|
| 銀行なりすまし詐欺の被害額 | 2,580万ユーロ(前年比 約300万ユーロ増) |
| 被害に遭った顧客 | 5,900人弱(前年比14%減) |
| フィッシングの被害額 | 約260万ユーロ(前年比180万ユーロ増) |
| 個人の被害のうち補償された割合 | 45%強 |
| SNS から始まるオンライン詐欺の割合 | 70%(銀行が引用した調査) |
NVB は同じ発表で、Meta・TikTok・Google に偽広告や偽サイトの削除を強めるよう求めました。銀行側の対策としては、1日の振込上限を下げる、上限を引き上げるときに4時間の待ち時間を設ける、といった措置を挙げています。
相談窓口の数字:2026年上半期は被害額が倍増
もう1つの数字の出どころが、全国の詐欺相談窓口 Fraudehelpdesk(フラウデヘルプデスク) です。こちらは銀行の顧客に限らず、電話やウェブで寄せられた相談・届出を数えています。
2025年の振り返り資料によると、2025年の届出は101,734件(前年比60%増)、実際にお金を失った人は15,116人(65%増)、届け出られた被害額は約6,850万ユーロ(30%増)でした。個人の届出の件数では「ヘルプデスク詐欺」が17,264件で最も多く、被害額では投資詐欺(3,410万ユーロ)が最大でした。
2026年上半期の発表では、銀行を装うヘルプデスク詐欺の届出は4,570件から2,944件に減った一方、お金を失った人は92人から230人、被害額は約152万ユーロから約313万ユーロに増えました。届出が減っても、引っかかった人の被害は重くなっています。
同じ発表では、フィッシングの届出が2,776件から15,106件へと約5倍になりました。メールが入口になった割合は30%から59%に増え、Booking.com を装う WhatsApp のフィッシングも急増しています。予約の内容を正確に知っている偽メッセージが多く、データ流出で得た情報が使われているとみられています。
数字が食い違うのは、数えているものが違うから
NVB と Fraudehelpdesk の数字は、並べると大きくずれます。どちらかが間違っているのではなく、数えている対象が違います。
| 比べる点 | NVB(銀行協会) | Fraudehelpdesk(相談窓口) |
|---|---|---|
| 数えているもの | 加盟銀行が把握した顧客の被害 | 電話・ウェブで届け出られた相談 |
| 2025年の銀行なりすまし被害額 | 2,580万ユーロ | ヘルプデスク詐欺全体で750万ユーロ |
| 被害者の数え方 | 被害に遭った顧客 5,900人弱 | 届出 17,264件(未遂を含む) |
| 対象 | 銀行の顧客のみ | 銀行以外(PC サポート等)も含む |
銀行には届けたが Fraudehelpdesk には連絡しない人が多いため、被害額は銀行側の数字のほうが大きくなります。逆に件数は、未遂の通報も含む相談窓口のほうが多くなります。
なお、Fraudehelpdesk の資料のなかにも細かな食い違いがあります。2025年の被害額は表では6,849万ユーロ、本文では「約6,900万ユーロ」です。2026年上半期のエネルギー関連の被害額も、本文が496,096ユーロ、表が495,797ユーロと少し違います。この記事では表の数値を使いました。
3. オランダで多いなりすまし詐欺の地図
6つの代表的な手口
今回の NFC 中継は新しい手口ですが、入口の「銀行を名乗る電話」は以前からあるものです。在住者向け媒体と警察・公的機関の注意喚起から、オランダで目立つものを6つに分けました。
| 手口 | 入口 | 狙われるもの |
|---|---|---|
| bankhelpdeskfraude(銀行なりすまし) | 電話・SMS・メール | 送金、ログイン情報、カード |
| spoofing(番号の偽装) | 銀行や警察の番号を表示 | 上の手口の信用づけ |
| 「hoi mam」(家族なりすまし) | WhatsApp の新しい番号 | 急ぎの立て替え送金 |
| Marktplaats の偽支払いリンク | 売り手への「確認用」リンク | 銀行のログイン情報 |
| 偽の DigiD・Belastingdienst | メール・SMS | DigiD、支払い、個人情報 |
| NFC 中継・カード回収 | 電話のあとアプリか訪問 | カードそのものと PIN |
どれも「知っている相手を名乗る」と「急がせる」の2つを組み合わせています。警察は今回の発表で、この2つ、信頼(vertrouwen)と圧力(druk)は必ずそろっていると強調しました。
bankhelpdeskfraude と spoofing
もっとも古典的なのは、銀行の不正対策部門を名乗って電話をかけ、「口座が狙われているので安全な口座に移してください」と言う手口です。NL Times によると、2023年に警察リンブルフが摘発した事件では、約150人から160万ユーロがだまし取られました。2026年3月にも、DutchNews が170万ユーロ規模の事件で8人が逮捕されたと伝えています。このときは、ウイルス対策を装った遠隔操作ソフトを入れさせ、銀行口座と暗号資産の口座をのぞき見していました。
ここで信用づけに使われるのが spoofing(スプーフィング、発信番号の偽装) です。画面に銀行の本物の代表番号や、ふつうの携帯番号(06から始まる番号)を表示させます。DutchReview は、英語の自動音声で「あなたの BSN(市民サービス番号)が悪用されている」と告げ、偽の警察官につなぐ電話も報じています。画面に出た番号は、相手が誰かの証拠になりません。
「hoi mam」詐欺(家族なりすまし)
hoi mam(ホイ・マム、「ママ、元気?」) と始まる WhatsApp のメッセージが典型です。「スマホが壊れて番号が変わった」と言い、銀行アプリが使えないので代わりに支払ってほしいと頼んできます。電話に出られない理由を必ず用意しています。
IamExpat は2020年春、Fraudehelpdesk への相談が月約6,500件から4月だけで約15,000件に急増し、その多くが WhatsApp 詐欺だったと伝えました。古い数字ですが、手口は今も続いています。ACCESS は、家族や友人から急ぎの支払いを頼まれたら、いつもの番号に電話して声で確かめるよう勧めています。
Marktplaats の偽支払いリンク
中古品売買サイト Marktplaats(マルクトプラーツ) で物を売ろうとすると、買い手を名乗る人から「本人確認のため1セント送ってください」とリンクが届くことがあります。リンク先は Tikkie(ティッキー、オランダで広く使われる支払い依頼アプリ)や銀行に似せた偽ページで、入力したログイン情報で口座が操作されます。
ACCESS は、この手口では会話を WhatsApp に移すのが定番だと説明しています。NL Times によると、Marktplaats がリンクの検査を始めたことなどで、2021年1月から2022年12月にかけてこの種の被害は76.5%減りました。それでも、サイトの外に誘導されたら同じ危険が残ります。
偽の DigiD・Belastingdienst
税務当局 Belastingdienst(ベラスティングディーンスト) や、行政サービスのログイン DigiD(デジデー) を装うメールと SMS も多い手口です。Belastingdienst は公式サイトで、メール・SMS・WhatsApp・電話で支払いを求めることはないと明言し、偽のメッセージの実例を公開しています。
2026年5月1日から Belastingdienst の振込先口座が変わったことも、詐欺に使われやすい話題です。DutchReview は、口座変更を口実にした偽の連絡に注意するよう呼びかけています。振込先は、必ず公式サイトの一覧で確かめてください。
カード回収と「混ざる詐欺」
Fraudehelpdesk は2025年の振り返りで、オンラインや電話で始まり、対面に続く詐欺が増えたと指摘しました。偽の銀行員が自宅にカードを取りに来る、偽の警察官が貴重品を預かりに来る、といったものです。Xpat.nl も、警察や銀行を名乗る人にもカードの PIN を教えてはいけないと注意しています。
日本の特殊詐欺でいう「キャッシュカード詐欺盗」と同じ構図です。今回の NFC 中継は、そのカード回収を遠隔でやってのける手口だと考えると分かりやすいでしょう。
4. 見分け方:銀行と公的機関が「しないこと」を覚える
本物の銀行がすること・しないこと
詐欺の筋書きは毎月のように変わります。筋書きを覚えるより、本物の銀行が絶対にしないことを覚えるほうが確実です。警察・NVB・各銀行の注意喚起から整理しました。
| 場面 | 本物の銀行 | 詐欺 |
|---|---|---|
| アプリ | 公式ストアの銀行アプリだけを案内 | 「ブロック用」「安全確認用」のアプリを入れさせる |
| カード | 取りに来ない、かざさせない | スマホにかざす、封筒に入れて渡す |
| PIN・コード | 聞かない、読み上げさせない | 「本人確認」と称して聞く |
| 送金 | 「安全な口座」への移動を頼まない | 別の口座に移せと言う |
| 時間 | 切ってかけ直すことを嫌がらない | 「今すぐ」「切らないで」と言う |
| 遠隔操作 | AnyDesk 等を入れさせない | 画面共有ソフトを入れさせる |
表の右の列に1つでも当てはまったら、話の内容がどれだけもっともらしくても電話を切ってかまいません。本物の銀行員なら、かけ直されて困ることはありません。
「切って、かけ直す」を習慣にする
もっとも効く対策は、いったん切って、自分で調べた番号にかけ直すことです。番号はカードの裏面、銀行の公式サイト、公式アプリのなかで確かめます。かかってきた電話の「折り返し」や、SMS に書かれた番号は使いません。
一部の銀行は、電話の相手が本物かを確かめる機能を用意しています。ING の「Check het Gesprek」では、通話中に自分の番号を入れると、ING の職員が本当にその番号に電話しているかを照合できます。NVB も「checkjegesprek」機能の活用を勧めています。ただし、こうした機能がない銀行もあるので、基本はかけ直しです。
Fraudehelpdesk の「3つのステップ」
Fraudehelpdesk は2026年上半期の発表で、身を守るための3つのステップを示しました。
| ステップ | オランダ語 | やること |
|---|---|---|
| 1. 遅らせる | Vertraag | すぐに動かず、考える時間を取る |
| 2. 問う | Vraag | 誰が相手か、手順として自然かを問う |
| 3. 確かめる | Verifieer | 信頼できる経路で確認してから支払う |
この3つは、日本の警察が呼びかける「電話でお金の話が出たら、いったん切って家族や警察に相談」とほぼ同じです。オランダの詐欺も日本の詐欺も、急がせて考える時間を奪うところに核心があります。
メールと SMS の見分け方
メールや SMS は、送信者の表示名もロゴも簡単にまねできます。見るべきなのは、リンクを押させようとしているかと、期限で脅しているかの2点です。
Expatica の銀行ガイドも、WhatsApp・メール・SMS で銀行員を装い、ネットバンキングの認証コードを聞き出す手口が増えていると注意しています。鍵マークは通信が暗号化されているという意味でしかなく、偽サイトにも付いています。
怪しいメールは開いたまま慌てず、Fraudehelpdesk の valse-email@fraudehelpdesk.nl に転送すれば、本物かどうか調べてもらえます。2025年には52万件余りの偽メールが寄せられました。
5. 被害に遭ったときの手順
最初の1時間にすること
気づいた時点で、すぐに動いてください。警察の案内と、IamExpat が伝えた警察の助言をもとに、順番を整理しました。
- 銀行の緊急窓口に電話する。番号はカードの裏面か公式サイトで確かめます。カードの停止と口座の凍結、進行中の送金の取り消しを頼み、実際に引き落としがあったかを確認してもらいます。ING の場合は「Alarmlijn」020 22 888 00 です
- パスワードを変える。ネットバンキング、メール、パソコンのパスワードを、できれば別の端末から変えます。犯人がまだ画面を見ている可能性があるうちは変えません
- 遠隔操作ソフトの扱い。AnyDesk や TeamViewer を入れさせられた場合、警察はログイン情報を確保してから削除するよう案内しています。パソコンの初期化は、届出が済んで痕跡が確保されるまで待ちます
- 証拠を残す。通話履歴、SMS、WhatsApp の画面、送金明細を保存します。犯人の口座番号は、明細の取引説明に名義人と並んで出ていることが多いと警察は説明しています
- 警察に届出(aangifte)をする
- Fraudehelpdesk に報告・相談する
警察への届出(aangifte)
aangifte(アーンヒフテ) は、日本の被害届にあたる正式な届出です。警察の届出フォーム一覧には、「Bankhelpdeskfraude(telefonische oplichting)」の専用フォームがあります。
| 方法 | 条件 | 向いている人 |
|---|---|---|
| オンライン | DigiD が必要 | 電話や SMS だけで被害に遭った人 |
| 警察署(予約制) | 0900-8844 で予約 | DigiD がない人、オランダ語に不安がある人 |
| 自宅で対応 | 警察に相談して依頼 | 痕跡の確保に助けが要る人 |
| 緊急 | 112 | 犯人がいま玄関にいる、出し子を見かけた |
犯人が自宅まで来た場合は、オンラインの届出はできず、電話で予約を取ります。来たばかりで DigiD がまだない方は、迷わず 0900-8844 に電話してください。
届出をためらう人が多い
Fraudehelpdesk が2026年2月に公表した資料によると、私生活で詐欺に遭った人の67%以上が届出をしていません。「届けても意味がないと思った」「どう届けるか分からなかった」という声が紹介されています。
そこで Fraudehelpdesk と警察は2025年1月から、相談者を警察職員に直接つなぐ試みを始めました。相談者の40%は、このつなぎがなければ届出をしなかったと答えています。この方法は2026年初めに全国に広がりました。Fraudehelpdesk の発表が詳しく説明しています。
届出は、自分のお金を取り戻すためだけのものではありません。今回のロッテルダムの事件のように、届出と銀行の報告が重なることで、警察は犯行グループの全体像をつかめます。
Fraudehelpdesk に連絡する
Fraudehelpdesk は、電話 088-786 73 72 とウェブサイトで相談を受け付けています。届出の代わりにはなりませんが、何が起きたのかを一緒に整理し、どの窓口に何を言えばよいかを教えてくれます。必要に応じて法律相談窓口(Juridisch Loket)や警察につないでくれます。
| 窓口 | 役割 | 連絡方法 |
|---|---|---|
| 自分の銀行 | カード・口座の停止、送金の取り消し、補償の審査 | カード裏面・公式サイトの番号 |
| 警察 | 届出(aangifte)、捜査 | オンライン(DigiD)、0900-8844、緊急は112 |
| Fraudehelpdesk | 相談、次の手順の案内、偽メールの確認 | 088-786 73 72、valse-email@fraudehelpdesk.nl |
| Belastingdienst | 偽の税務メールの報告 | valse-email@belastingdienst.nl |
| Kifid | 銀行の回答に不服なときの申し立て | 公式サイトのフォーム、070-333 8 999 |
6. 銀行はどこまで補償するのか
分かれ目は「誰がお金を動かしたか」
補償の考え方でまず押さえたいのは、承認した取引か、承認していない取引かの区別です。オランダの民法(Burgerlijk Wetboek、第7編528条・529条)は、承認していない支払いについて、銀行が原則として直ちに返金すると定めています。例外は、利用者が詐欺に加担した場合と、故意または重大な過失で安全上の義務を破った場合です。
| 区分 | 典型例 | 銀行の返金義務 |
|---|---|---|
| 承認していない取引 | 犯人が盗んだ情報で送金・出金した | 原則として全額返金 |
| 同上・重大な過失あり | 危険を分かったうえで指示に従った | 返金されないことがある |
| 承認した取引 | 自分で「安全な口座」に振り込んだ | 原則として義務なし(任意の補償) |
この区別は、日本の預金者保護法の考え方(第8章)とよく似ています。違いが出るのは、「重大な過失」をどこまで広く取るかです。
2026年4月:Kifid が「重大な過失」の基準を引き上げた
Kifid(キフィット、金融サービス苦情処理機関) は、銀行や保険会社と消費者の争いを裁判の外で解決する機関です。その審査委員会(Commissie van Beroep)は2026年4月、bunq の顧客が起こした件で判断 CvB 2026-0022 を出しました。
Kifid の発表と banken.nl の解説によると、事案はこうです。顧客は銀行を装うフィッシングメールのリンクから情報を入力し、その夜、銀行員を名乗る電話で6桁の認証コードを伝えました。犯人は自分の端末を口座に登録し、約1時間で5万ユーロ余りを暗号資産の取引所とスペインの口座に移しました。
委員会は、重大な過失と言えるのは「銀行なりすまし詐欺の被害に遭う危険を自覚しながら、それでも指示に従った」場合だと示しました。被害者はたいてい本物の銀行員と話していると信じているので、この基準に当たることはまれだとしています。銀行が日ごろ注意喚起を出していたことも、それだけでは重大な過失の理由にならないと判断しました。
これは、2025年2月の判断(CvB 2025-0012)より消費者寄りの基準です。結果として bunq は35,367ユーロの支払いを命じられました。被害総額は50,849ユーロでしたが、消費者側が下の段階の判断に不服を申し立てていなかったため、全額にはなりませんでした。
2026年6月:自分で振り込んだ場合は別
一方、NL Times が伝えた6月の判断では、結論が逆になりました。被害者2人は偽の銀行員に画面共有ソフト(Quickview)を入れさせられ、1日の振込上限を上げて、自分で3回送金しました。被害は計59,000ユーロです。
SNS 銀行は最初の送金を止めて確認の電話をしましたが、被害者は犯人の指示どおり「キャンピングカーの代金」と答え、送金は通りました。委員会は、送金は顧客の同意のもとで行われ、銀行が詐欺を知っていた証拠もないとして、銀行の注意義務違反はないと判断しました。
NVB の任意補償(coulance)
自分で振り込んだ場合でも、銀行が任意に補償すること(coulance、クーランス)はあります。NVB によると、2025年は個人の銀行なりすまし詐欺の被害額の45%強が補償されました。
| 補償を受けるための条件(NVB) | 中身 |
|---|---|
| 自分の銀行に電話する | 被害に気づいたらすぐに |
| 警察に届出をする | aangifte の写しや番号を求められる |
| 調査に協力する | 経緯の説明、明細や画面の提出 |
| 本人の責任も考慮される | 状況により一部補償・補償なしもある |
補償の割合は銀行と事情によって違います。「必ず戻る」とは考えず、まずは被害を広げない手を打つことが先です。
今回の NFC 中継はどちらに当たるか
今回の手口では、被害者は自分で送金していません。ATM で引き出したのは犯人です。その意味では「承認していない取引」に近く、原則返金の側に入る余地があります。
ただし、被害者がアプリに PIN を入力していた場合や、警告を見たうえで続けた場合などには、評価が分かれる可能性があります。この記事は法的な判断を示すものではないので、実際には銀行に経緯を詳しく説明し、納得できない回答なら Kifid に申し立てる、という順番で考えてください。
Kifid に申し立てるとき
Kifid には、まず銀行の苦情窓口に申し立て、その最終回答に納得できない場合に申し立てます。Kifid の規則では、銀行の最終回答から3か月以内(銀行がその期限を示した場合)、または銀行に最初に苦情を出してから1年以内が期限とされています。期限を過ぎると扱ってもらえません。2026年3月の判断(GC 2026-0219)では、期限を大きく過ぎた申し立てが「扱えない」とされました。
EU の新しいルールの動き
EU では、支払いサービスの新しい規則(PSR)について、2025年11月に理事会と欧州議会が暫定合意しました。法律事務所 Taylor Wessing の解説によると、利用者が自分の銀行(またはその職員)を名乗る詐欺にだまされて送金した場合に、警察への届出と銀行への連絡を条件として、銀行が返金する仕組みが盛り込まれています。
最終的な条文と適用開始日は、この記事の時点では確定していません。適用されれば、「自分で振り込んだから原則返金なし」という現在の線引きが変わる可能性があります。
あわせて、2026年7月1日からは、オランダの資金情報機関 FIU-Nederland が、疑わしい取引を銀行に最長5営業日止めさせられるようになりました(DutchReview、bijzonderstrafrecht.nl の解説)。これはマネーロンダリング対策の権限ですが、自分の送金が止められて銀行から連絡が来ることもあります。その連絡を装う詐欺にも注意が要ります。
7. 日本語で来る詐欺と、日本の家族を装う詐欺
オランダにいても日本語の詐欺は届く
オランダに住んでいても、日本の電話番号やメールアドレス、日本のカード、日本の通販アカウントを持ち続けている方は多いはずです。その分、日本で流行している詐欺も届きます。
| 日本語で来る詐欺 | 典型的な文面 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 日本のカード会社・銀行 | 「不正利用の疑い、本人確認を」 | カード裏面の番号に国際電話で確認 |
| 日本の通販・配送 | 「お荷物の住所不備」「支払い情報の更新」 | 公式アプリから注文履歴を見る |
| 大使館・警察を名乗る電話 | 「あなたの口座が犯罪に使われた」 | 切って大使館の代表番号に確認 |
| 家族・友人の LINE | 「今ちょっといい?」「立て替えて」 | いつもの番号に電話して声で確認 |
| 行政手続き | マイナンバー・年金・税の還付 | 日本の自治体・年金機構の公式窓口で確認 |
外務省は2025年12月、日本大使館・総領事館や警察官、税関職員などを名乗る特殊詐欺が海外でも起きていると注意を呼びかけました。日本の公的機関が、正式な手続きを経ずに送金を求めることはありません。
在ロサンゼルス日本国総領事館の注意喚起では、公館の代表番号を相手の画面に表示させる手口が報告されています。オランダの spoofing と同じ発想です。電話が「警察官」に転送され、LINE のビデオ通話で「事情聴取」をされる例もあります。
日本の「ニセ警察詐欺」とオランダの手口は同じ構図
日本の特殊詐欺は、2025年に大きく増えました。警察庁の確定値(2026年6月5日公表)によると、認知件数は27,832件(前年比32.3%増)、被害額は約1,423億円(98.0%増)です。
| 日本の特殊詐欺(2025年・警察庁) | 件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺の合計 | 27,832件 | 約1,423.1億円 |
| うちニセ警察詐欺 | 11,014件 | 1,005.0億円 |
| オレオレ詐欺 | 14,489件 | ― |
| SNS型投資詐欺(特殊詐欺とは別集計) | 9,523件 | 1,288.0億円 |
| SNS型ロマンス詐欺(同) | 5,645件 | 546.4億円 |
とくに目立つのが、警察官を名乗る「ニセ警察詐欺」で、特殊詐欺全体の39.6%を占めました。「あなたの口座が犯罪に使われている」と不安をあおり、「資産を確認する」と称して送金させます。オランダの「口座が狙われているので安全な口座へ」と同じ構図です。
オランダの銀行なりすましも日本のニセ警察詐欺も、名乗る相手への信頼と、急がせる圧力を使います。国が違っても、守り方は「切って、自分で確かめる」で共通しています。
日本にいる家族が狙われる場合
海外に住んでいると、日本の家族が「あなたを装う詐欺」の標的になることもあります。「オランダで事故に遭った」「現地の警察に捕まった、保釈金が要る」といった筋書きは、海外在住の子どもを持つ親に効きやすいものです。
実際にそうした被害が増えているという統計は、確認した範囲では見つかりませんでした。ただ、手口の組み立てはオレオレ詐欺とまったく同じです。家族のあいだで合言葉を決めておく、海外からの急な送金依頼は、いつもの番号にかけ直して確かめる、の2つを決めておくと安心です。
日本の警察庁は、固定電話の国際電話の発着信を無料で止められる「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364)の利用を勧めています。京都府警の発表では、2024年に特殊詐欺で使われた電話番号(判明分)の約7割が国際電話番号でした。ただし、オランダから実家の固定電話にかける習慣がある場合、止めるとつながらなくなります。止めるかどうかは家族で相談して決めてください。
8. 日本の補償制度と比べてどうか
日本の預金者保護法との比較
日本では、偽造・盗難キャッシュカードによる被害を補償する「預金者保護法」(正式名称は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」)が2006年から施行されています。金融庁の相談事例のページと各金融機関の案内をもとに、オランダの考え方と並べました。
| 比べる点 | 日本 | オランダ |
|---|---|---|
| 犯人が勝手に引き出した | 偽造カードは原則全額。盗難カードは過失なしで全額、過失ありで75% | 原則全額(民法7:528・529条) |
| 補償されない例外 | 重大な過失(暗証番号を教えた、カードを渡した等) | 重大な過失(危険を自覚して従った場合など) |
| 届出の期限 | 盗難カードは原則30日以内に金融機関へ | 「遅滞なく」。最長13か月 |
| 警察への届出 | 補償の要件 | 任意補償の条件として求められる |
| 自分で振り込んだ | 対象外。振り込め詐欺救済法で口座残高から分配 | 原則として義務なし。任意補償(2025年は45%強) |
いちばん大きな違いは、「重大な過失」の例です。日本の金融機関の案内では、他人に暗証番号を知らせた、他人にカードを渡したことが重大な過失の典型として挙げられています。オランダの Kifid は2026年4月から、だまされて情報を渡した場合でも、危険を自覚していなければ重大な過失には当たらないという考え方を示しました。
日本の感覚で「暗証番号を教えてしまったからもう無理だ」とあきらめる必要はありません。オランダでは、まず銀行に経緯を説明し、届出をして、回答を待ってください。
自分で振り込んだときの救済
日本で、だまされて自分で振り込んだ場合は、預金者保護法の対象になりません。かわりに、振り込め詐欺救済法にもとづき、凍結された犯人の口座に残ったお金を被害者に分配する仕組みがあります。金融庁によると、支払いまで少なくとも半年以上かかるのが一般的で、残高が足りなければ按分されます。
オランダには、この分配金のような法律上の仕組みはありません。そのかわり、銀行が任意に補償する慣行(coulance)があり、2025年は被害額の45%強が補償されました。仕組みは違いますが、「自分で振り込むと戻りにくい」という点では日本もオランダも同じです。
電話の文化の違い
日本では、銀行から電話がかかってくること自体が少なく、「銀行からの電話」を警戒する素地があります。オランダでは、銀行のチャットやアプリの通知が日常的で、不正の確認の電話が本当にかかってくることもあります。そのため、「銀行から電話が来た」だけでは疑いにくいのです。
実際に、SNS 銀行の6月の事案では、銀行側の確認の電話に被害者が犯人の筋書きどおりに答えてしまいました。本物の銀行の確認の電話にも、正直に答えてかまわないこと、そして本物かどうかはかけ直して確かめればよいことを、家族で共有しておきましょう。
9. つまずきやすいところ
よくある誤解
詐欺の相談でよく出てくる思い込みを、根拠と並べました。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 銀行の番号が表示されたから本物 | 番号は偽装できる(spoofing) |
| 相手が自分の名前や口座を知っていた | データ流出の情報が使われている |
| 若い人は引っかからない | 今回の被害者は20〜30代も数十人 |
| オランダ語ができないから狙われない | 英語の自動音声も使われている |
| 暗証番号を教えたら補償はゼロ | オランダでは自覚がなければ重大な過失に当たらないことが多い |
| 届出しても意味がない | 補償の条件で、捜査の手がかりにもなる |
とくに注意したいのは、「相手が自分の情報を知っていた」という点です。Fraudehelpdesk は2026年上半期の発表で、相談者が「犯人が驚くほど多くの個人情報を知っていた」と話す例が増えたと指摘しています。大手通信会社 Odido のデータ流出の情報がフィッシングに使われ続けていることも、DutchReview が伝えています。
損をしやすい条件
被害が大きくなりやすいのは、次のような条件が重なったときです。
- 1日の振込上限を高く設定したままにしている
- 遠隔操作ソフトを入れたまま、パソコンを使い続けた
- 届出を数週間あとにした
- 送金を止めてもらえる時間に、銀行へ電話しなかった
- 「本人確認」の電話で、銀行の確認担当に事実と違う説明をした
振込上限は、ふだんの生活に必要な額まで下げておくと安心です。NVB によると、上限を引き上げるときに4時間の待ち時間を設けている銀行もあります。
10. 立場ごとに考える(架空のケース)
ここからは、典型的な状況を架空の人物で考えます。実在の人物・事例ではありません。
ケースA:来たばかりで DigiD がない会社員
オランダに来て2か月の会社員が、ING を名乗る電話で「不正送金を止めるため」と言われ、SMS で届いたリンクからアプリを入れてしまいました。気づいたのは翌朝で、口座から800ユーロが引き出されていました。
この場合は、まず ING の Alarmlijn に電話してカードを止め、引き出しの記録を確認してもらいます。DigiD がないので、警察の 0900-8844 に電話して届出の予約を取ります。アプリはすぐに削除せず、スマホを警察に見せられる状態にしておきます。
ケースB:日本から来た母親が「安全な口座」に振り込みかけた
日本から1か月滞在している母親のもとに、娘の口座のある銀行を名乗る英語の電話がありました。母親は英語がよく分からないまま、娘のスマホを使って送金しようとしたところで、帰宅した娘が止めました。
被害は出ていませんが、銀行には連絡しておきます。番号が知られている可能性があるからです。母親には、「オランダの銀行は電話でお金を動かせとは言わない」と、日本の言葉で短く伝えておきます。
ケースC:Marktplaats で家具を売ろうとした自営業者
ソファを出品したところ、買い手から WhatsApp で「配送業者経由で払う。受け取り確認のリンクを押して」と連絡がありました。リンク先で銀行にログインしかけましたが、URL が銀行のものでないことに気づいてやめました。
ログイン情報を入力していなければ、被害は出ていない可能性が高いでしょう。念のためパスワードを変え、銀行に連絡しておきます。入力してしまった場合は、すぐに銀行へ電話してください。
| ケース | 最初の一手 | 次にすること |
|---|---|---|
| A:DigiD がない | 銀行の緊急窓口でカード停止 | 0900-8844 で届出を予約 |
| B:家族が送金しかけた | 送金を止め、銀行に連絡 | 家族に短い言葉で伝え直す |
| C:偽リンクを開いた | 入力の有無を確認 | パスワード変更、入力したなら銀行へ |
11. 日本から来る家族への伝え方
長い説明より「3つの言葉」
日本から親が遊びに来るとき、オランダの詐欺の事情を長く説明しても覚えきれません。滞在中に1人で電話を受けることもあるので、短い言葉で3つだけ伝えておくのが実用的です。
| 伝える言葉 | 理由 |
|---|---|
| 「銀行・警察を名乗る電話は、すぐ切っていい」 | 切っても失礼にならない。本物ならかけ直せる |
| 「カード・暗証番号・アプリの話が出たら詐欺」 | 銀行は電話でこれを求めない |
| 「お金の話は、必ず私に電話してから」 | 1人で判断させない |
日本の家族には、日本のニセ警察詐欺の話から入ると伝わりやすいでしょう。「日本で増えている警察を名乗る詐欺と同じものが、オランダでは銀行を名乗って来る」と言えば、手口の構図を理解してもらえます。
滞在中の具体的な備え
- 滞在先の固定電話やスマホには、知らない番号に出なくてよいと伝える
- 家族の国際ローミングの番号も、日本の詐欺電話の標的になり得る
- 自分のカードを親に預けない。親のスマホに自分の銀行アプリを入れない
- 緊急時の連絡先(自分、パートナー、112)を紙に書いて渡す
- 帰国後も、「オランダの娘・息子」を名乗る電話には、いつもの番号で確かめるよう頼む
入国の手続きについては、別の記事「ETIAS の偽サイト」で、日本から来る家族に関係する EES と偽の申請サイトの注意点をまとめています。
12. やってはいけないこと
被害を広げる行動を、理由と並べました。
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| かかってきた電話のまま「本人確認」に応じる | 相手が本物か確かめる手段がない |
| SMS や WhatsApp のリンクからアプリを入れる | 偽アプリで画面やカード情報が抜かれる |
| カードをスマホにかざす、誰かに渡す | NFC 中継やカード回収の手口そのもの |
| PIN・認証コードを読み上げる | 銀行は聞かない。聞く時点で詐欺 |
| 被害のあと、すぐにパソコンを初期化する | 警察が痕跡を確保できなくなる |
| 恥ずかしくて誰にも言わない | 補償にも捜査にも、早い連絡が要る |
最後の項目は大切です。詐欺に遭うのは、注意が足りない人ではありません。警察が言うように、手口は信頼と圧力で判断力を奪うように作られています。
13. チェックリスト
今日できる備えを並べました。
- 自分の銀行の緊急窓口の番号を、スマホの連絡先に登録した
- 1日の振込上限を、ふだん必要な額まで下げた
- WhatsApp の2段階認証を有効にした
- 銀行アプリに「電話の相手を確認する」機能があるか調べた
- 家族と合言葉を決めた
- 日本の家族に「警察・銀行を名乗る電話は切っていい」と伝えた
- DigiD を取得した(届出をオンラインで出せる)
- Fraudehelpdesk の番号(088-786 73 72)を控えた
- 日本のカード会社・銀行の海外からの連絡先を控えた
- 怪しいメールの転送先(valse-email@fraudehelpdesk.nl)を知った
14. まとめ
- 新しい手口では、AI音声の電話から偽の銀行員につなぎ、カードをスマホにかざさせて ATM で引き出す。3週間で約170人・38万ユーロ
- 2025年の銀行なりすまし詐欺は、被害額2,580万ユーロ・被害者5,900人弱(NVB)。件数は減り、1件の被害は重くなった
- 銀行はアプリを入れさせない、カードをかざさせない、PIN を聞かない。言われたら切って、自分でかけ直す
- 被害に気づいたら銀行→パスワードと証拠→警察(aangifte)→Fraudehelpdeskの順に動く
- 犯人が動かした取引は原則全額返金。Kifid は2026年4月に「重大な過失」の基準を引き上げた
- 自分で振り込んだ場合は原則返金義務なし。任意補償で2025年は45%強。EU の新しい規則で変わる可能性がある
- 日本の家族には「切っていい」「カード・暗証番号の話は詐欺」「お金の話は必ず私に」の3つを伝える
参考にした情報源
警察・公的機関・業界団体
- Twee verdachten aangehouden in onderzoek naar nieuwe vorm van bankhelpdeskfraude — politie.nl:今回の手口、被害の規模、逮捕・勾留、警察と NVB の助言
- Ik ben slachtoffer van telefonische helpdeskfraude (bank) — politie.nl:被害後の手順、届出の方法、0900-8844
- Alle aangifte- en meldformulieren — politie.nl:届出フォームの一覧
- Twee aanhoudingen in onderzoek naar grootschalige bankhelpdeskfraude — politie.nl:2026年3月の別の摘発
- Banken roepen socialmediaplatforms op meer te doen aan online fraudebestrijding — NVB:2025年の被害額・被害者数・補償割合、補償の条件
- Een terugblik op 2025 — Fraudehelpdesk:2025年の届出・被害額、手口別の順位、連絡先
- Persbericht jaarcijfers 2025 — Fraudehelpdesk:2025年の年次数値の発表
- Persbericht halfjaarcijfers 2026 — Fraudehelpdesk:2026年上半期の手口別の数値、3つのステップ
- Persbericht samenwerking politie — Fraudehelpdesk:届出をしない人の割合、警察との連携
- Commissie van Beroep legt de lat voor 'grof nalatig' hoger — Kifid:CvB 2026-0022 の基準と民法の条文
- Uitspraak Commissie van Beroep 2026-0022 — Kifid:判断の本文
- Uitspraak Geschillencommissie 2026-0219 — Kifid:申し立ての期限(規則第7条)
- Voorbeelden van valse berichten — Belastingdienst:偽メッセージの実例、支払いを求めないという方針
- 令和7年の特殊詐欺の確定値 — 警察庁:日本の特殊詐欺・ニセ警察詐欺の件数と被害額
- 振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ — 金融庁:振り込め詐欺救済法の分配金
- 金融サービス利用者相談室 相談事例 — 金融庁:預金者保護法の補償要件
- 特殊詐欺についての注意喚起 — 外務省 海外安全ホームページ:大使館・警察を名乗る海外での詐欺
- 日本大使館、総領事館などを名乗る詐欺電話 — 在ロサンゼルス日本国総領事館:公館の番号を表示させる手口
在住者向け媒体・報道
- Bank card scam in the Netherlands cons 170 victims out of 380.000 euros — IamExpat:起点の記事
- Massive spike in WhatsApp fraud this spring — IamExpat:2020年の WhatsApp 詐欺の急増と対策
- Police arrest two suspects in AI-powered bank fraud — NL Times:今回の事件の数字と容疑者の役割
- Dutch banks don't have to compensate customers who fall for helpdesk scams — NL Times:6月の Kifid の判断
- Scammers use AI voice cloning to target thousands — NL Times:2025年第1四半期の不審電話の届出9,793件
- Over 75% drop in fraud with Marktplaats payment requests — NL Times:偽の支払いリンクの被害の減少
- Eight arrested in €1.7 million bank help-desk fraud probe — DutchNews:遠隔操作ソフトを使った事件
- Busy phone could indicate fraudsters are busy too, say banks — DutchNews:詐欺の送金の75%が通話中に起きるという銀行の説明
- Thousands of Dutchies targeted by phishing calls — DutchReview:BSN の悪用を告げる偽の警察の電話
- Dutch tax office switches banks — DutchReview:Belastingdienst の口座変更と注意点
- Major changes rolling out across the Netherlands from July 1 — DutchReview:FIU による取引の一時停止
- Stolen Odido data is still fuelling phishing scams — DutchReview:データ流出とフィッシング
- How can I avoid scams? — ACCESS:家族を装う依頼と、かけ直しの勧め
- Scam via Marktplaats and WhatsApp — ACCESS:Marktplaats の偽リンクの手口
- Banking in the Netherlands — Expatica:銀行員を装うフィッシングへの注意
- Smart Checks — The Hague International Centre:住まい探しの詐欺と、被害時の警察・Fraudehelpdesk への連絡
- Burglaries - How to Avoid Them — Xpat.nl:警察や銀行を名乗る人にも PIN を教えない
- FIU-Nederland krijgt opschortingsbevoegdheid — bijzonderstrafrecht.nl:取引停止の法的根拠と期間
- EU lawmakers strike a deal on payments reforms — Taylor Wessing:PSR の暫定合意となりすまし詐欺の返金
- Kifid legt lat hoger voor 'grove nalatigheid' bij bankhelpdeskfraude — banken.nl:4月の判断の事案と金額
いずれも2026年10月27日に確認したものです。補償の基準や銀行の運用は変わることがあるため、実際に被害に遭ったときは、自分の銀行と警察・Fraudehelpdesk の最新の案内を確認してください。この記事は一般的な情報で、個別の法的助言ではありません。
元記事はこちら
Bank card scam in the Netherlands cons 170 victims out of 380.000 euros — IamExpat
よくある質問
- 銀行から「不審な取引があります」と電話が来たらどうすればいいですか?
- その電話はいったん切り、カードの裏面や銀行の公式サイトに載っている番号へ自分でかけ直してください。表示された番号が銀行のものでも、偽装(spoofing)されている可能性があります。銀行がアプリのインストール、カードをスマホにかざすこと、PIN の入力や読み上げを求めることはありません。
- 詐欺に遭ったと気づいたら、最初に何をしますか?
- まず自分の銀行の緊急窓口に電話し、カードと口座の停止、進行中の送金の取り消しを頼みます。次にパスワードを変え、通話履歴やメッセージの画面を保存します。そのうえで警察に届出(aangifte)をします。銀行の補償の審査でも届出が求められます。
- 銀行は被害額を返してくれますか?
- 犯人が勝手に送金・出金した「無権限の取引」なら、重大な過失がない限り原則として全額返金の対象です。Kifid は2026年4月、重大な過失の基準を引き上げました。一方、自分で振り込んだ場合は原則として銀行に返金の義務はなく、銀行の任意の補償になります。2025年は被害額の45%強が補償されました。
- DigiD がなくても警察に被害届を出せますか?
- オンラインの届出には DigiD が必要です。DigiD がない場合や、犯人が自宅に来た場合は、警察の代表番号 0900-8844 に電話して警察署での予約を取ります。緊急のときは 112 です。届出の前に、通話履歴やメッセージを消さずに残しておいてください。
- 日本の家族から LINE で「お金を立て替えて」と来たら?
- 返信や送金の前に、いつもの電話番号に自分から電話をかけて本人の声で確かめてください。オランダの「hoi mam」詐欺と同じく、乗っ取られたアカウントや新しい番号から急ぎの支払いを頼むのが典型です。電話に出られない理由をつけてくる時点で、詐欺を疑ってかまいません。
- 怪しいメールや SMS はどこに知らせればいいですか?
- 銀行を装うものは各銀行の窓口へ、Belastingdienst を装うメールは valse-email@belastingdienst.nl へ、そのほかの不審なメールは Fraudehelpdesk の valse-email@fraudehelpdesk.nl へ転送できます。電話での相談は Fraudehelpdesk(088-786 73 72)が受け付けています。
出典: IamExpat