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オランダ・欧州で制作会社を選ぶ|提案書の比べ方とKvK・offerte・DPA・BTWの確かめ方

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オランダ・欧州で制作会社を選ぶ|提案書の比べ方とKvK・offerte・DPA・BTWの確かめ方

リニューアルの相談先を探し始めると、制作会社の数の多さにまず戸惑います。検索すれば何十社も出てきて、どの会社も実績と強みを並べています。比べようとしても、提案書の形式も、見積もりの粒度も、使っている言葉も会社ごとに違います。

結局「担当者の感じがよかった」「一番安かった」で決めてしまい、公開後に「保守は別料金だった」「ドメインが制作会社の名義だった」と気づく、という場面は珍しくありません。これは選んだ会社が悪いのではなく、比べる物差しを発注側が先に用意していなかったことが原因になっていることが多いのです。

この記事では、制作会社を選ぶ手順を、RFP(提案依頼書)を書く → 候補を集めて絞る → 提案書を同じ表で比べる → 面談で確かめる → 契約で固めるの順に整理します。日本と欧州(オランダ)の両方で発注する事業者を想定し、法律や商慣行が違うところも並べます。費用の相場は「ホームページリニューアルの費用相場と見積もりの読み方」、進め方と期間は「リニューアルの進め方とスケジュール」で扱っているので、ここでは選び方と比べ方に絞ります。

この記事が主に根拠にした情報

  • EU 一般データ保護規則(GDPR)第28条(EUR-Lex)、EDPB「管理者と処理者の概念に関するガイドライン 07/2020」、欧州委員会の標準契約条項(決定 2021/915)、オランダ AP の verwerkersovereenkomst(処理者契約)の案内
  • IPA「情報システム・モデル取引・契約書」、公正取引委員会の取適法・フリーランス法の資料、著作権法(e-Gov 法令検索)、国税庁の印紙税と消費税の案内
  • オランダ公共調達の専門機関 PIANOo「最良の価格・品質比(BPKV)の手引き」、オランダ民法典第6編、オランダ著作権法(Auteurswet)、オランダ税務当局(Belastingdienst)の BTW の案内
  • Google Search Central「SEO 業者が必要かどうか」、web.dev の Core Web Vitals、W3C の WCAG 2.2、EU データ法(規則 2023/2854)
この記事で分かること 答えの要点
何から始めるか 会社を探す前に RFP を書く。A4 で5〜10枚、12項目が目安
何社に頼むか 提案依頼は3〜5社。面談は上位2社に絞る
何で比べるか 5つの評価軸に重みを付けた採点表と、11行の比較表
契約で何を固めるか 著作権の移転、解約時の引き渡し、SLA、DPA、変更の手順
日本と欧州の違い 見積もりの形式、税(消費税10%/BTW 21%)、支払期日(60日/30日)
危ない提案の見分け方 順位の保証、名義が制作会社、範囲が「一式」だけ、DPA を出さない

1. 制作会社選びの前提が、ここ2年で変わった

法律と規制の変更が、発注側の確認事項を増やした

制作会社を選ぶときに確かめることは、ここ2年でかなり増えました。デザインや実績だけを見て選んでいた頃には問われなかった、アクセシビリティ、取引条件、クラウドの乗り換えといった項目が、法律で決まった論点になったためです。

日本では2024年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務になりました。2024年11月1日にはフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され、個人に発注するときは業務の内容・報酬・支払期日を明示することが求められています。さらに2026年1月1日には、下請法を改めた取適法(中小受託取引適正化法)が施行され、手形による支払いの禁止や、協議に応じない一方的な代金の決定の禁止が加わりました。

欧州では2025年6月28日に欧州アクセシビリティ法(EAA、指令 2019/882)の適用が始まり、EU の消費者向けに一部のサービスを提供する事業者は、サイトやアプリのアクセシビリティを満たす必要が出てきました。2025年9月12日には EU データ法(規則 2023/2854)が適用され、クラウドなどのデータ処理サービスの乗り換えについて、通知期間や移行期間のルールが定められました。2027年1月12日からは、乗り換えに伴う料金を課すことが禁じられます。

2024年4月に日本で合理的配慮の提供が義務化、2024年11月にフリーランス法施行、2025年6月に欧州アクセシビリティ法の適用開始、2025年9月にEUデータ法の適用開始、2026年1月に取適法施行、2027年1月にEUデータ法による乗り換え料金の禁止。 2024.04 合理的配慮の義務化 日本・事業者全般 2024.11 フリーランス法 施行 日本・個人への発注 2025.06 欧州アクセシビリティ法 EU・消費者向けサービス 2025.09 EUデータ法 適用 EU・クラウドの乗り換え 2026.01 取適法 施行 日本・委託取引の条件 2027.01 乗り換え料金の禁止 EU・データ法の第2段階
図1:制作会社選びに関わる法律の主な日付(出典:内閣府、公正取引委員会(フリーランス法)、EUR-Lex 指令 2019/882、EUR-Lex 規則 2023/2854、公正取引委員会(取適法)。2026年10月29日確認)

どの変更も、制作会社の「腕」ではなく、RFP と契約に書くことを増やしています。後から付け足すと費用と時間がかかるため、選定の段階で比較表に入れておきます。

2. 選定の全体像:4つの段階と期間の目安

段階ごとに「出すもの」と「決めること」がある

制作会社の選定は、RFP の作成、候補の選定、提案の比較、契約の4段階に分けると見通しがよくなります。段階ごとに、発注側が出す文書と、その段階で決めることがはっきりしているからです。

RFPの作成に2から3週間、候補の選定に約2週間、提案の比較と面談に3から4週間、契約に1から2週間。合計で8から11週間が目安。 1. RFP作成 2〜3週 2. 候補選び 約2週 3. 提案比較 3〜4週 4. 契約 1〜2週 合計 8〜11週が目安
図2:制作会社選定の4つの段階と期間の目安(DevNJ の整理。社内の決裁や繁忙期で前後します。2026年10月29日作成)

期間は、中規模の企業サイト(30〜100ページ程度)を想定した目安です。決裁の階層が多い会社や、夏季休暇・年末年始をまたぐ場合は、さらに2〜4週間を見込んでください。

段階 発注側が出すもの この段階で決めること
1. RFP作成 RFP、現状の数値、コンテンツ一覧 目的、範囲、予算の幅、評価方法
2. 候補選び 声をかける会社のリスト 提案を依頼する3〜5社
3. 提案比較 比較表、採点表、質問リスト 面談する2社、優先交渉先
4. 契約 契約書案、DPA、SLA 範囲・権利・支払い・出口の条件

この表から分かるように、発注側の仕事の大半は段階1に集中します。ここを省くと、段階3で比べる材料がそろいません。

3. RFP(提案依頼書)に書くこと

RFI・RFP・RFQ の違い

発注の文書には、各社の得意分野を知るための RFI(情報提供依頼)、解決策の提案を受ける RFP(提案依頼書)、決まった仕様の価格を比べる RFQ(見積もり依頼)があります。リニューアルでは「何をどう作るか」も提案してほしいことが多いため、RFP が基本です。候補が10社を超えるときだけ、RFI で先に絞ると手間が減ります。

RFP の12項目

RFP は、制作会社が同じ前提で考え、同じ形式で答えられるように書きます。次の12項目がそろっていれば、提案の質は大きく変わります。

項目 書く内容 抜けると起きること
1. 会社と事業 事業内容、顧客、市場(国・言語) 提案が一般論になる
2. 目的と目標 何を何%改善したいか デザイン案だけの提案になる
3. 対象範囲 ページ数、機能、言語、対象外 見積もりの範囲がずれる
4. 移行するもの 記事数、PDF、画像、URL 移行費が後から出る
5. 品質の基準 アクセシビリティ、速度、対応環境 検収で揉める
6. セキュリティ・個人データ フォーム、会員、DPA の要否 法令対応が抜ける
7. 運用体制 更新する人、頻度、保守の希望 保守が別料金になる
8. 予算の幅 初期費用と年間費用の幅 提案の規模がばらつく
9. スケジュール 提出期限、面談日、公開希望日 工程の前提がずれる
10. 提出物の形式 構成、見積もりの書式、ページ上限 比較できない
11. 評価の方法 評価軸と重み、選定の流れ 各社が何を重視すべきか分からない
12. 契約条件の希望 権利、支払い、解約、準拠法 契約段階で振り出しに戻る

RFP は A4 で5〜10枚に収め、提出期限は送ってから2〜3週間取るのが一般的です。受けた質問と回答は全社に同じ内容で共有します。表のうち、最も抜けやすいのは3の「対象外」と11の評価方法です。何をやらないかを書き、何で選ぶかを先に伝えると、各社は強みのある部分に提案の力を割けます。

目的は数字で書く

「古くなったので新しくしたい」では、制作会社はデザインの刷新を提案するしかありません。「問い合わせを月20件から30件にしたい」「英語ページからの資料請求を始めたい」「更新を社内でできるようにしたい」と書けば、提案はその目的に向けた設計になります。

目的を数字にするには、現状の数字が要ります。アクセス解析の直近12か月の値、問い合わせの件数と経路、検索流入の多いページ上位20件を、RFP の別紙として渡してください。

予算は書くべきか

予算を書くと「満額で提案される」と心配する人がいますが、幅で書くほうが比べやすくなります。予算が分からないと、ある会社は最小構成で、別の会社は理想構成で提案し、価格差が範囲の差なのか単価の差なのか分からなくなるからです。

「初期費用300万〜450万円、年間の保守・運用100万円以内」のように、初期と年間を分けて書きます。オランダの会社に出すなら「€18,000〜€27,000(BTW 抜き)」のように、通貨と税の扱いを明記します。相場の数字は「費用相場と見積もりの読み方」を参照してください。

4. 候補の集め方と絞り方

候補を集める経路

候補の集め方によって、届く会社の性格が変わります。1つの経路に頼らず、2〜3の経路から集めると偏りが減ります。

紹介は実際の働き方が聞ける一方で断りにくく、マッチング・比較サイトは一度に多く集まる一方で、掲載料で並び順が変わることがあります。検索で見つけた会社は、情報発信の姿勢が分かる反面、広告と自然検索を見分ける必要があります。

日本とオランダの両方で動くサイトなら、両国の会社を候補に混ぜるのも方法です。日本の会社は日本語の原稿と日本市場の慣習に強く、欧州の会社は GDPR や欧州アクセシビリティ法、現地の検索事情に慣れています。どちらか一方に頼むなら、もう一方の知見をどう補うかを提案で確かめます。

ロングリストからショートリストへ

集めた候補(ロングリスト)は、提案を依頼する3〜5社(ショートリスト)に絞ります。この段階では、提案の中身ではなく「頼める条件を満たしているか」の足切りで絞ります。

足切りの基準 確かめ方 外す目安
規模と体制 社員数、担当者の人数 案件規模に対して小さすぎる・大きすぎる
似た案件の実績 公開サイト、事例ページ 同規模・同業の例が1件もない
対応言語・地域 多言語サイトの実績 必要な言語の制作経験がない
技術の方針 CMS、ホスティングの選択肢 1つの独自 CMS しか扱わない
情報の公開度 料金の考え方、契約条件 問い合わせるまで何も分からない

5社を超えて提案を頼むと、発注側の読む負担が増えるうえに、各社の受注確率が下がって提案の質が落ちます。逆に1〜2社だけでは比べる基準ができません。3〜5社がちょうどよい幅です。

会社の実在と登録を確かめる

小さな会社やフリーランスに頼むときは、公的な登録で実在を確かめます。手間は数分ですが、名義のトラブルを防げます。

確かめること 日本 オランダ・EU
法人の登録 国税庁 法人番号公表サイト KvK(商業登記所)の検索
税の登録番号 インボイスの登録番号 VIES で VAT 番号を照会
契約相手の名義 登記上の商号と所在地 KvK 番号と登記上の名称

登録番号は、見積書と請求書にも記載されているはずです。番号がない、名義が個人と会社で揺れている、という場合は、契約の相手方を確定させてから進めてください。

4-2. オランダで依頼先を確かめる5つの手順

オランダや欧州の会社に頼むときは、日本の発注とは確認の順番が少し変わります。ここでは、提案書を比べる前後に、公的な情報で数分から数十分で確かめられることを手順にまとめます。いずれも法的な助言ではなく、確認の道筋です。

手順1:KvK で登録を確かめる

オランダの会社は、商業登記所 KvK(Kamer van Koophandel、商工会議所)の Handelsregister(商業登記簿)に登録されます。KvK の案内によると、登記簿には KvK 番号、商号、住所、法形態、署名権限を持つ人の名前と権限などが載り、検索は無料で誰でもできます。詳しい登記事項の写し(uittreksel)は有料です。

KvK 番号は8桁で、KvK は手紙・見積書(offerte)・請求書・ウェブサイト・業務用メールに記載するよう案内しています。見積書とサイトの KvK 番号が一致し、登記上の名称が契約の相手方と同じかを確かめてください。登録がない、番号が違う、という場合は、契約の前に理由を尋ねます。

手順2:offerte(見積書)の中身を読む

KvK の案内では、offerte は発注側が内容に同意した時点で拘束力を持ちます。同意は署名でもメールの返信でも成り立つため、「確認しました」と返す前に、範囲・金額・期限が書かれているかを確かめます。

見る項目 確かめること
範囲 成果物が具体的に書かれているか。「一式」だけではないか
金額 BTW 抜き(excl. btw)か込みか。時間単価なら上限や概算の時間数があるか
有効期限 見積もりがいつまで有効か
支払い 請求の分け方と支払期限
追加作業 範囲外の作業をどう見積もり、誰が承認するか
一般取引条件 参照されているか、添付されているか

手順3:algemene voorwaarden(一般取引条件)を読む

KvK は、事業者が一般取引条件を使う場合、契約の前に相手へ分かる形で知らせ、見積書に添付して、適用されることを見積書に書くよう案内しています。サイトに置く場合は、相手がダウンロードして保存できる形が望ましいとされています。

読むのは、責任の上限、支払期限と遅延時の費用、知的財産の扱い、解約の条件、準拠法と管轄の5点です。契約書の本文より、一般取引条件に大事なことが書かれていることがあります。合わない条項は、契約前に交渉します。条件がないまま進めると、後から揉めたときに根拠がなくなります。

手順4:verwerkersovereenkomst(データ処理契約)を求める

問い合わせフォームの送信内容やアクセス解析など、個人データを制作会社やホスティング会社が発注側の代わりに扱うなら、GDPR 第28条の処理者契約が要ります。オランダの監督機関 Autoriteit Persoonsgegevens(AP)は、処理の内容、書面による指示、従業員の秘密保持、安全管理、再委託の許可、データ主体の権利への協力、終了時の削除または返却、監査への協力を盛り込むよう案内しています。詳しい中身は「8. GDPR の処理者契約(DPA)を確かめる」で扱っています。

ここでの確認は2つだけです。契約の雛形を、提案の段階で出せるか。そして再委託先(ホスティング、メール配信など)の一覧があるか。雛形が出ない会社は、公開直前に慌てることになります。

手順5:BTW のリバースチャージを確かめる

Belastingdienst(オランダ税務当局)の案内では、EU 内の別の国の事業者に対するサービスは、顧客が VAT 番号を持つ事業者なら、通常は顧客の国で課税され、顧客が自分で申告します。請求書には BTW を載せず「btw verlegd」と書きます。この判断は、相手の VAT 番号を確かめることから始まるため、見積書の段階で双方の VAT 番号を書いておくと、請求書でやり直しになりません。

日本の会社が発注側になる場合は、国をまたぐ役務の消費税の扱いが個別の判断になることがあるため、契約前に税理士に確認してください。BTW の税率は「13. 日本と欧州の商慣行の違い」にあります。

手順 使う公的な情報 所要の目安
1. 登録 KvK の Handelsregister 検索 数分
2. offerte 見積書と KvK の案内 30分
3. 一般取引条件 添付書面と KvK の案内 30分〜1時間
4. データ処理契約 AP の案内と雛形 提案の段階で依頼
5. BTW Belastingdienst の案内と VIES 数分

所要の目安は DevNJ の見立てです。サイトを持つ ZZP(個人事業主)側が何を載せているかは「オランダZZPのホームページ開設チェックリスト」、日本の会社が欧州向けに作るときの全体像は「日本企業が欧州向けサイトを作るときの12項目」にまとめています。

5. 提案書を比べる①:スコープ・成果物・工数

最初に「同じ範囲を見積もっているか」を確かめる

届いた提案を並べると、価格が2倍以上違うことはよくあります。そのとき最初に確かめるのは、同じ範囲を見積もっているかです。範囲がずれたまま価格を比べても、意味のある比較になりません。

範囲は、RFP の「対象範囲」と「移行するもの」に対して、各社が何を含め、何を外したかで読みます。外した項目を一覧にし、全社に同じ条件で再見積もりを依頼すると、比較の土台がそろいます。

成果物の一覧で比べる

範囲は、作業の名前ではなく成果物(納品されるもの)で比べると具体的になります。「デザイン一式」ではなく、何のファイルが何枚納品されるかです。

成果物 中身の例 確かめること
サイトマップ・設計書 ページ構成、URL 設計 旧 URL との対応表を含むか
ワイヤーフレーム 主要テンプレートの骨組み 何テンプレート分か
デザインデータ PC・スマホのデザイン 編集できる形式で渡るか
実装一式 テーマ、プログラム ソースコードの引き渡し方法
移行済みコンテンツ 記事、画像、PDF 件数と手作業の範囲
リダイレクト設定 旧 URL から新 URL へ 件数と検証の方法
テスト結果 表示、速度、アクセシビリティ 報告書の形で残るか
運用マニュアル 更新手順、権限 誰向けで何ページか

成果物が具体的に書かれている提案は、検収のときにも揉めにくくなります。逆に「一式」が多い提案は、どこまでが範囲かを質問で埋める必要があります。リダイレクトについては「リニューアルの301リダイレクトとSEO」で詳しく扱っています。

工数と単価を分けて見る

見積もりの金額は「工数 × 単価」で決まります。総額だけを比べると、単価が安いのか、工数が少ないのかが分かりません。工数が少ない提案は、作業を省いているか、見落としている可能性があります。

日本の見積もりは「一式」で書かれることが多いため、工程ごとの人日(1人が1日働く量)を出してもらうよう、RFP の提出物の形式で指定しておきます。オランダの会社は時間単価と時間数で見積もるのが普通なので、工程ごとの時間数を比べるのは難しくありません。あわせて、範囲が変わったときの時間単価と承認の流れも書いてもらうと、追加費用を予測できます。

6. 提案書を比べる②:保守・ホスティング・所有権

初期費用と5年間の総額で比べる

公開後の費用は、初期費用と同じくらい差が出ます。保守、ホスティング、ライセンスの年額を足して、5年間の総額で比べると、初期費用の安い提案が必ずしも安くないことが分かります。

比べる項目 確かめること よくある落とし穴
保守の範囲 更新、バックアップ、障害対応 「保守」に改修が含まれない
対応時間 平日のみか、何時間以内か 連絡先がメールだけ
ホスティング 誰の契約か、所在地、費用 制作会社の名義で移せない
ライセンス 有料テーマ・プラグインの名義 解約すると更新が止まる
料金改定 値上げの通知期間 毎年の自動値上げ
最低契約期間 何年縛りか、途中解約 解約金が高い

ホスティングの所在地は、個人データを扱う場合に特に重要です。EU の個人データを EU 域外のサーバーで扱うなら、移転の根拠(十分性認定や標準契約条項)が必要になります。

名義と権限の一覧を作る

サイトに関わるアカウントは、制作会社が便宜上まとめて取得することがあります。そのまま公開すると、解約したいときに自社の資産を自由に動かせない状態になります。提案の段階で、次の名義と権限をどうするかを答えてもらいます。

資産 名義(持ち主) 制作会社に渡す権限
ドメイン 発注側 DNS の設定権限
ホスティング 発注側が原則 管理者または作業用アカウント
CMS の管理者 発注側 編集者または作業用の管理者
Search Console 発注側がオーナー 制限付きユーザーまたはフル
GA4 発注側が管理者 編集者またはアナリスト
有料ライセンス 発注側 不要(更新は発注側)
ソースコード 発注側(引き渡し) リポジトリの書き込み権限

Google は Search Console の権限を、オーナー・フルユーザー・制限付きユーザーの3段階で管理できると案内しています。GA4 も管理者・編集者・マーケティング担当者・アナリスト・閲覧者の役割で権限を分けられます。オーナーと管理者は発注側が持ち、制作会社には必要な権限だけを渡すのが基本です。

7. 提案書を比べる③:アクセシビリティ・セキュリティ・性能

「対応します」ではなく基準と検証方法で比べる

品質の項目は、どの提案にも「対応します」と書かれがちです。比べるには、どの基準を、どう検証し、何を報告するかを書いてもらう必要があります。

品質の項目 RFP に書く基準 提案で確かめること
アクセシビリティ WCAG 2.2 AA(EU 向けは EN 301 549 も) 検証の方法と報告書
表示速度 LCP 2.5秒以内、INP 200ms 以内、CLS 0.1 以下 計測の道具と時点
セキュリティ OWASP Top 10、IPA の指針 診断の有無と更新の頻度
対応環境 主要ブラウザとスマホの版 検証する端末の一覧
多言語 hreflang、言語の切り替え URL 設計と翻訳の流れ

アクセシビリティは、W3C の WCAG 2.2(2023年10月勧告)を基準にするのが国際的な標準です。欧州アクセシビリティ法の調和規格 EN 301 549 は、Web について WCAG 2.1 の AA に相当する要件を参照しています。日本の JIS X 8341-3:2016 は WCAG 2.0 と一致した内容です。詳しくは「欧州アクセシビリティ法とリニューアル」を参照してください。

表示速度は、web.dev が示す Core Web Vitals の「良好」の基準(LCP 2.5秒以内、INP 200ミリ秒以内、CLS 0.1以下、いずれも訪問の75パーセンタイルで判定)を要件にすると、検収のときに数字で確かめられます。

セキュリティは「誰が更新するか」まで聞く

Web サイトの脆弱性の多くは、作ったときではなく、公開後に更新されなかったことから生まれます。IPA の「安全なウェブサイトの作り方」や OWASP Top 10 に沿った実装に加えて、CMS とプラグインの更新を誰が、どの頻度で行うかを確かめます。

具体的には、更新の頻度(例:月1回、検証環境で確認してから本番)、脆弱性の情報の追い方、バックアップの頻度と保管先、障害時の連絡の期限、公開前の診断の有無を聞きます。「必要に応じて」としか答えられない場合は注意が必要です。

8. GDPR の処理者契約(DPA)を確かめる

どんなときに DPA が必要か

GDPR では、個人データの扱いを決める側を管理者(controller)、管理者の代わりに扱う側を処理者(processor)と呼びます。問い合わせフォームの送信内容を制作会社のサーバーに保存する、会員データを保守のために閲覧する、といった場合、制作会社やホスティング会社は処理者にあたります。

GDPR 第28条3項は、管理者と処理者の関係を書面(電子を含む)の契約で定めることを求めています。オランダの監督機関 AP(Autoriteit Persoonsgegevens、個人データ庁)は、この契約がなければ管理者と処理者の両方が違反になると案内しています。EU の消費者を相手にするサイトを日本の会社が運営する場合も、GDPR の対象になりうるため、同じ確認が必要です。

第28条が求める内容

DPA に盛り込む内容は、第28条3項に列挙されています。次の表は、条文の項目と、制作・保守の場面での具体例を並べたものです。

第28条3項の項目 制作・保守での具体例
(a) 文書による指示 フォームデータを問い合わせ対応にだけ使う
(b) 秘密保持 作業者に守秘義務を課す
(c) 安全管理措置 暗号化、アクセス権限、バックアップ
(d) 再委託の条件 ホスティング・メール配信会社の事前承認
(e) 本人の権利への協力 開示・削除の依頼に対応する
(f) 漏えい時などの協力 漏えいの通知、影響評価への協力
(g) 終了時の削除・返却 解約時にデータを返し、複製を消す
(h) 情報提供と監査 対策の資料を出し、監査に協力する

欧州委員会は、第28条7項にもとづく管理者・処理者間の標準契約条項(実施決定 2021/915)を公表しています。制作会社が自社のひな形を持っていない場合は、これを土台にすると漏れを防げます。EDPB(欧州データ保護会議)のガイドライン 07/2020 は、誰が管理者で誰が処理者かの判断の仕方を例とともに解説しています。

再委託と国外移転を確かめる

制作会社は、ホスティング、メール配信、フォーム、分析などで他社のサービスを使います。これらは再処理者(sub-processor)にあたり、DPA で一覧と承認の方法を決めます。再処理者の一覧を求めて出てこない場合は、制作会社自身が把握していない可能性があります。

日本の会社が EU の個人データを受け取る場合、欧州委員会は2019年1月に日本の十分性認定(実施決定 2019/419)を採択しており、EU から日本への移転には追加の契約条項が原則として要りません。ただし、日本から第三国(たとえば米国のクラウド)へさらに移す場合は、別の確認が必要です。第28条の義務に違反すると、第83条4項により1,000万ユーロまたは全世界の年間売上高の2%のいずれか高いほうを上限とする制裁金の対象になりえます。

9. 採点表をつくる:5つの評価軸と重み

重みを先に決めて、RFP で伝える

提案書を読んでから評価の軸を決めると、印象の良かった会社に合わせて基準が動いてしまいます。重みは RFP を出す前に決め、RFP の「評価の方法」で各社に伝えるのが公平です。

オランダの公共調達の専門機関 PIANOo は、価格だけでなく品質も評価する「最良の価格・品質比(BPKV、beste prijs-kwaliteitverhouding)」の手引きを公表しています。手引きは、評価軸と重みを決めて公表し、採点の方法をあらかじめ定める手順を示しています。民間の発注でも、この考え方はそのまま使えます。EU の公共調達指令 2014/24/EU 第67条も、価格と品質の組み合わせで落札者を決める方法を定めています。

課題の理解と提案が30パーセント、体制と実績が20パーセント、品質要件が20パーセント、運用と出口が15パーセント、価格が15パーセントで、合計100パーセント。 課題の理解と提案 30% 体制と実績 20% 品質要件 20% 運用と出口 15% 価格 15%
図3:採点表の重みの例(DevNJ の整理。重みは目的によって変えます。考え方は PIANOo の BPKV の手引きを参考にしました。2026年10月29日確認)

5つの評価軸の中身

図3の重みは一例です。価格の重みを15%と低めにしているのは、範囲をそろえた見積もりどうしであれば価格差は小さくなり、差が出るのは理解・体制・運用のほうだからです。予算が厳しい場合は、価格の重みを25〜30%に上げても構いません。

評価軸 見るところ 重みの例
課題の理解と提案 目的と数字に対する打ち手 30%
体制と実績 担当者の顔ぶれ、似た案件 20%
品質要件 アクセシビリティ・速度・セキュリティの基準と検証 20%
運用と出口 保守、名義、解約時の引き渡し、DPA 15%
価格 5年間の総額、変更時の単価 15%

重みを変えるときは、何を優先するかを社内で合意してから変えます。評価者が複数いる場合は、各自が独立に採点してから突き合わせると、声の大きい人の印象に引きずられにくくなります。

採点の尺度をそろえる

各軸は0〜4点の5段階で採点し、重みを掛けて合計します。尺度の意味を先に決めておくと、評価者の間の差が小さくなります。

点数 意味 判断の目安
4 期待を上回る 根拠つきで、こちらが気づかない論点まで答えている
3 十分 要件にすべて具体的に答えている
2 おおむね 主要な要件に答えているが、一部があいまい
1 不十分 一般論が多く、要件への答えが足りない
0 答えがない 記載がない、または要件を外している

価格の点数は、最も安い見積もりを4点とし、ほかは「最安値 ÷ その見積もり × 4」で計算する方法が分かりやすいでしょう。極端に安い見積もりがある場合は、範囲の抜けがないかを先に確かめてから点数にします。

10. 提案書を並べる比較表

11行の比較表のひな形

採点の前に、各社の提案を同じ表に書き写す作業をすると、抜けている項目が見えます。次の表は、提案を並べるときのひな形です。空欄が多い会社には、質問で埋めてもらいます。

比較の項目 A社 B社 C社
スコープ(含む/含まない)
成果物の一覧
工数(人日)と単価
初期費用(税抜)
保守・運用の年額と範囲
所有権・ライセンスの名義
ホスティング(名義・所在地)
アクセシビリティの基準と検証
セキュリティの対策と更新
DPA と再処理者の一覧
解約時の引き渡し

価格は税抜で統一し、通貨が違う場合は同じ日の為替で換算した値を並べます。比較表を埋めると、価格差の大半は保守・移行・品質の検証の有無で説明できることが多く、安い提案はどこかの行が空いているか「別途」になっています。

11. 面談で聞く質問リスト

面談は上位2社に絞る

採点で上位になった2社と、1社60〜90分で面談します。営業担当だけでなく、実際に担当するディレクターや実装の責任者に同席してもらい、同じ質問を同じ順番で聞きます。質問を事前に送っておくと、話のうまさではなく準備された答えを比べられます。

質問と良い答えの見分け方

次の表は、面談で聞く質問と、良い答えの例です。「良い答え」は、具体的で、根拠があり、できないことも言える答えです。

質問 良い答えの例 注意が要る答え
似た案件で一番苦労したことは 原因と、次からの対策を具体的に 「特にありません」
担当は誰で、何割の時間を割くか 名前と役割、稼働率 「チームで対応します」
公開後に成果をどう測るか 指標と見直しの時期 公開で終わる
範囲外の依頼が来たらどうするか 見積もりと承認の手順 「柔軟に対応します」
解約するとき何が渡るか 一覧と日数、形式 「その時に相談」
検索流入をどう守るか URL 対応表と計測の手順 「順位は保証します」
個人データをどこで扱うか 所在地と再処理者の一覧 分からない
参考にできる顧客は 連絡してよい顧客を紹介 紹介できない

最後の質問は、可能であれば実際に顧客に連絡して確かめます。聞くのは「約束どおりに進んだか」「問題が起きたときどう対応したか」「また頼むか」の3点で十分です。

検索の順位を約束する会社に注意する

Google Search Central は、SEO 業者を選ぶときの注意として「No one can guarantee a #1 ranking on Google.」(誰も Google での1位を保証できない)と明言しています。順位の保証、Google との特別な関係、優先登録をうたう業者には注意するよう案内しています。また、SEO の診断を頼む段階では、Search Console の閲覧権限だけを渡し、書き込みの権限は渡さないよう勧めています。

リニューアルの提案でも同じです。「公開後も順位は落ちません」と約束する提案より、「移転の手順を守り、落ちたときにどう調べるか」を説明できる提案のほうが信頼できます。

12. 契約で確認する点:知的財産・引き渡し・SLA

著作権は「いつ、何が、誰に」移るかを書く

制作物の著作権は、原則として作った人(制作会社)に発生します。発注側が代金を払っただけでは移りません。契約で、いつ(検収時か支払い完了時か)、何を(デザイン・コード・原稿)、誰に移すかを書きます。

日本の著作権法第61条2項は、譲渡の契約で翻訳・翻案の権利(第27条)と二次的著作物の利用に関する権利(第28条)を特に明記しないと、譲渡した側に残ると推定すると定めています。「著作権を譲渡する」とだけ書くと、改修や派生物の制作に必要な権利が移らない可能性があるため、「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」と書くのが一般的です。著作者人格権は譲渡できない(第59条)ため、行使しない旨の特約も合わせて置きます。

オランダの著作権法(Auteurswet)第2条は、著作権の譲渡に証書(akte)、つまり書面の文書が必要だと定めています。口頭の合意やメールのやり取りだけでは足りない可能性があるため、契約書か別の譲渡書面で明記します。オランダの制作会社は、譲渡ではなく利用許諾(licentie)の形をとることも多く、その場合は利用の範囲・期間・改変の可否を確かめます。

どちらの国でも、制作会社が以前から持っている部品(自社の CMS テーマ、共通のプログラム)や、オープンソースのライブラリの権利は発注側に移りません。何が移り、何が利用許諾にとどまるかの一覧を契約の別紙に付けてもらうと、後の改修で困りません。

解約時の引き渡しを手順にする

解約時の引き渡しは、契約で一覧・期限・形式・費用を決めます。特にドメインは、移管の手続きに時間がかかるうえ、制作会社の協力がないと進まないことがあります。

ICANN の移管ポリシーでは、gTLD(.com など)のドメインを別の登録事業者に移すとき、認証コード(Auth-Code)が必要になり、登録や移管、登録者の変更の直後には一定期間(最長60日)移管が制限されることがあります。.jp や .nl はそれぞれ JPRS と SIDN が管理し、手続きが異なります。解約の直前に慌てないよう、ドメインの登録者を最初から発注側にしておくのが確実です。

EU データ法は、クラウドなどのデータ処理サービスの利用者が乗り換えるとき、契約で利用者に求める通知期間を最長2か月、移行期間を原則30日と定め、2027年1月12日からは乗り換えの料金を課すことを禁じています。ホスティングを制作会社経由で契約する場合も、データの書き出しと移行への協力を契約に書いてもらいましょう。

引き渡すもの 形式の例 期限の目安
ドメイン 認証コード、登録者の変更 通知から14日以内
サイトのファイル 圧縮ファイル、リポジトリ 通知から14日以内
データベース SQL ダンプ、CSV 通知から14日以内
アカウント権限 オーナー・管理者の移譲 通知から7日以内
個人データ 返却後に削除、削除の証明 DPA の定めどおり
設計資料 設計書、運用マニュアル 通知から30日以内

期限は一例です。大事なのは、期限と費用が契約に書かれていることです。「その時に協議」では、関係がこじれたときに進みません。

SLA は稼働率と対応時間で書く

SLA(サービスレベル合意)は、保守やホスティングの品質を数字で決める合意です。中心になるのは稼働率と障害時の対応時間で、達成できなかったときの返金(サービスクレジット)を決めることもあります。

稼働率は、小数点以下の違いで許される停止時間が大きく変わります。30日の月で計算すると、99%なら約7.2時間、99.9%なら約43分の停止まで許されます。

30日の月で計算すると、稼働率99パーセントで432分、99.5パーセントで216分、99.9パーセントで43分、99.95パーセントで22分の停止が許される。 稼働率 99% 432分 稼働率 99.5% 216分 稼働率 99.9% 43分 稼働率 99.95% 22分 30日(43,200分)の月で計算
図4:稼働率ごとに許される月間の停止時間(30日の月で DevNJ が計算。非機能要件の決め方は IPA の非機能要求グレードを参考にしました。2026年10月29日確認)

一般的な企業サイトなら99.5〜99.9%で十分なことが多く、通販や予約のように停止が売上に直結するサイトは99.9%以上を検討します。IPA の「非機能要求グレード」は、可用性や性能の要件を段階的に決めるための資料で、どの水準を求めるかを社内で話し合うときの材料になります。

SLA の項目 書き方の例 確かめること
稼働率 月間99.9%(計画停止を除く) 計画停止の通知期間
対応時間 重大障害は1時間以内に初動 営業時間外の扱い
復旧目標 重大障害は4時間以内 「目標」か「保証」か
報告 月次で稼働と対応の報告 報告の形式
返金 未達の月は月額の10% 上限と申請方法

契約不適合と検収の扱い

公開後に不具合が見つかったときの扱いも、契約で決めます。日本の民法では、請負の成果物が契約の内容に合わない場合(契約不適合)、注文者は不適合を知った時から1年以内に通知すれば、修補や代金の減額などを求められます(民法第637条)。契約でこの期間や範囲を変えることもできるため、検収の基準と合わせて確かめます。

IPA の「情報システム・モデル取引・契約書」は2020年の民法改正に合わせて見直されており、段階ごとに請負と準委任を分ける考え方の参考になります。

13. 日本と欧州の商慣行の違い

見積もりの出し方

同じリニューアルでも、日本とオランダでは見積もりの形が違います。日本では総額を「一式」でまとめることが多く、オランダでは時間単価と時間数、または固定価格の内訳で示すのが一般的です。

項目 日本の傾向 オランダ・欧州の傾向
見積もりの単位 一式、ページ単価 時間単価 × 時間数
金額の表示 税込・税抜が混在 税抜(excl. btw)が基本
契約書 個別の契約書を交わす 一般取引条件(algemene voorwaarden)を添付
修正の回数 「2回まで」と回数で決める 時間で精算することが多い
支払いの分け方 着手金と納品後の残金 段階ごとの請求、月次請求

オランダの一般取引条件は、見積書の末尾や別紙として添付され、責任の上限や支払期限、知的財産の扱いが書かれています。契約書の本文より、一般取引条件のほうに大事なことが書かれていることがあるため、必ず読んで、合わない条項は交渉します。

VAT(BTW)と消費税

税の扱いは、発注側と受注側の所在国で変わります。オランダの標準税率(BTW)は21%、日本の消費税は10%です。

オランダ税務当局(Belastingdienst)は、EU 域内の別の国の事業者に提供する多くのサービスは、税を顧客側で申告する「リバースチャージ(btw verlegd)」になると案内しています。この場合、請求書には相手の VAT 番号と「btw verlegd」の記載が必要になり、VAT 番号は欧州委員会の VIES で照会できます。EU 域外の事業者に提供するサービスも、多くは顧客の国で課税され、オランダの BTW はかからないと案内されています。

日本の会社が国外の制作会社に発注する場合、そのサービスが「電気通信利用役務の提供」にあたるかどうかで、消費税の扱い(リバースチャージの対象かどうか)が変わります。国税庁は国境を越えた役務の提供に関する案内を公表していますが、Web 制作のように成果物の納品を伴うサービスは個別の判断になることがあるため、契約前に税理士に確認してください。日本国内の会社に発注する場合は、2023年10月に始まったインボイス制度のもとで、相手が適格請求書発行事業者かどうかで仕入税額控除の扱いが変わります。

支払い条件と支払期日

支払いの期日にも、それぞれの国で法律の決まりがあります。

日本では、取適法の対象になる取引(資本金や従業員数の基準を満たす委託取引)では、成果物を受け取った日から60日以内に支払期日を定める必要があり、2026年1月からは手形での支払いが禁止されました。個人のフリーランスに発注する場合も、フリーランス法により原則として60日以内の支払期日を定めることが求められます。Web 制作は「情報成果物作成委託」にあたるのが一般的で、資本金・従業員の基準は委託の内容によって変わります。

オランダの民法典第6編119a条は、事業者間の取引で支払期限を合意していない場合は30日とし、60日を超える期限は債権者にとって著しく不公正でない場合にだけ認めています。さらに、大企業が中小企業に支払う場合は、合意できる期限が最長30日に制限されています。

決まり 日本 オランダ
支払期日の上限 受領から60日以内(取適法・フリーランス法の対象) 合意なしで30日、60日超は例外
大企業から中小企業 取適法の基準で判断 最長30日
手形 取適法の対象では禁止 一般的でない
契約書の印紙 請負契約書は印紙税の対象 なし

日本で紙の請負契約書を交わす場合、印紙税の第2号文書にあたり、契約金額に応じた印紙が必要です。国税庁の案内では、100万円超200万円以下で400円、200万円超300万円以下で1,000円、300万円超500万円以下で2,000円、500万円超1,000万円以下で1万円です。電子契約では印紙は要らないとされています。

14. 危険信号:この提案には注意する

提案と見積もりに出る危険信号

次の表は、提案書や面談で見かけたら、契約の前に必ず確かめたい点です。1つ当てはまったから即失格というわけではありませんが、答えが返ってこない場合は候補から外すのが無難です。

危険信号 理由 確かめ方
検索順位を保証する Google は保証できないと明言 根拠と手順を聞く
ドメインやサーバーが制作会社名義 解約時に移せない 名義を発注側に変えられるか
見積もりが「一式」だけ 範囲が分からない 成果物と工数の内訳を求める
独自 CMS で書き出しができない 乗り換えられない データの書き出し形式を聞く
DPA や再処理者の一覧を出さない GDPR の義務を理解していない ひな形の提出を求める
担当者が決まっていない 体制が見えない 名前と稼働率を聞く
長い最低契約期間と高い解約金 出口がふさがれる 途中解約の条件を交渉
実績を見せられない 品質が確かめられない 公開サイトと顧客の紹介

リニューアルの失敗のパターンについては「ホームページリニューアルの失敗10パターン」でまとめています。

15. ケースで考える(架空の例)

ここからは、立場の違う3社が制作会社を選ぶ場面を、架空の例として考えます。実在の企業や人物とは関係ありません。

ケースA:日本の部品メーカー、英語ページを強化したい

従業員80人の部品メーカーです。以前は「一式480万円」とだけ書かれた見積書しか届かず、比べようがありませんでした。今回は目的を「英語ページからの問い合わせを年12件から30件に」と数字にした RFP を、日本の2社とオランダの1社に送りました。比較表を埋めると、価格差の大半は英語原稿の作成と欧州向けのアクセシビリティ検証の有無で説明でき、日本の会社を主契約者にして英語原稿の監修だけを欧州の会社に頼む形を選びました。

ケースB:オランダの日系商社、問い合わせフォームに個人データ

従業員25人の日系商社が、日英蘭の3言語サイトを作り直します。候補4社のうち1社は DPA のひな形と再処理者の一覧を提案と同時に出し、別の1社は「必要なら後で作ります」と答え、サーバーの所在地も把握していませんでした。「運用と出口」の軸で差がつき、価格がやや高い前者を選びました。契約では、一般取引条件の責任の上限を見直し、ドメインを商社の名義に移す手順を別紙にしました。

ケースC:日本の個人事業者、フリーランスに頼みたい

料理教室を営む個人事業者が、予算80万〜120万円で予約機能つきのサイトを作り直します。フリーランスに発注するため、フリーランス法にもとづいて業務の内容・報酬・支払期日をメールで明示しました。予約システムは月額サービスを自分の名義で契約し、サイトの保守は「月2時間まで定額、超えたら時間単価」と決めました。

ケース 決め手になった軸 契約で固めたこと
A:部品メーカー 課題の理解と提案 英語原稿の監修を別契約に
B:日系商社 運用と出口(DPA) 責任上限、ドメインの名義
C:個人事業者 価格と運用 発注内容の明示、保守の上限時間

3つのケースに共通するのは、比べる物差しを先に決めたことで、価格以外の差が見えるようになったことです。

16. 手順:明日からやること

制作会社選びを始めるときの手順を、順番に並べます。

  1. 現状の数字を集める:アクセス解析の12か月分、問い合わせの件数と経路、流入の多いページ上位20件
  2. 目的を数字で書く:何を、いつまでに、どれだけ変えたいか
  3. RFP を12項目で書く:対象外と評価方法を必ず入れる
  4. 評価軸と重みを決める:5つの軸と点数の尺度。社内で合意する
  5. 候補を集めて3〜5社に絞る:2〜3の経路から集め、足切りの基準で絞る
  6. RFP を送り、質問を全社に共有する:提出期限は2〜3週間後
  7. 比較表を埋め、独立に採点する:空欄は質問で埋める
  8. 上位2社と面談し、顧客に確認する:同じ質問を同じ順番で
  9. 契約書・DPA・SLA を固める:権利の移転、引き渡し、支払期日
  10. 選ばなかった会社に結果を伝える:理由を簡潔に添えると、次の機会につながる

17. チェックリスト

RFP を送る前

  • 目的と目標が数字で書かれている
  • 対象範囲と「対象外」が書かれている
  • 移行するコンテンツの件数が分かっている
  • アクセシビリティ・速度・セキュリティの基準がある
  • 予算が初期と年間に分けて幅で書かれている
  • 評価軸と重みが決まり、RFP に書かれている

提案を比べるとき

  • 全社が同じ範囲を見積もっているか確かめた
  • 11行の比較表を埋めた
  • 5年間の総額で比べた
  • ドメイン・ホスティング・アカウントの名義を確かめた
  • DPA と再処理者の一覧を確かめた
  • 評価者が独立に採点した

契約する前

  • 著作権の移転の時期と範囲(日本なら第27条・第28条)を書いた
  • 解約時の引き渡しの一覧・期限・費用を書いた
  • SLA の稼働率・対応時間・報告を書いた
  • 変更の見積もりと承認の手順を書いた
  • 支払期日が法律の上限に収まっている
  • 一般取引条件(オランダの場合)を読み、合わない条項を交渉した

まとめ

  • 制作会社選びは、会社を探す前に RFP を12項目で書くことから始める。特に「対象外」と「評価方法」を書く
  • 提案依頼は 3〜5社、面談は上位2社に絞ると、比べる質と手間のバランスがよい
  • 提案は 5つの評価軸に重みを付けて採点し、11行の比較表で抜けを見つける。価格は5年間の総額で比べる
  • ドメイン・ホスティング・Search Console・GA4 は発注側の名義にし、制作会社には必要な権限だけを渡す
  • 個人データを委託するなら、GDPR 第28条の DPA と再処理者の一覧を契約の前に確かめる
  • 契約では 著作権の移転、解約時の引き渡し、SLA を文書にする。日本では第27条・第28条の明記、オランダでは書面の証書が要る
  • 日本とオランダでは、見積もりの形式、税(消費税10%/BTW 21%)、支払期日(60日以内/30日以内)が違う

参考にした情報源

EU・オランダの法令と当局

日本の法令と当局

Web の基準と Google の案内

オランダの登録・見積書・BTW に関する出典(KvK、Belastingdienst、AP)は2026年10月31日に、そのほかは10月29日に確認したものです。法律・税・契約の扱いは個別の事情で変わるため、契約の前に弁護士や税理士など専門家に確認してください。

よくある質問

ホームページ制作会社はどうやって選べばよいですか?
先に RFP(提案依頼書)で目的・範囲・予算の幅・期限・品質の基準を書き、同じ条件で3〜5社に提案を依頼します。届いた提案は、価格だけでなく、課題の理解、体制と実績、品質要件、公開後の運用と解約時の引き渡しを重みつきで採点し、上位2社と面談して決めるのが比べやすい方法です。
RFP(提案依頼書)には何を書けばよいですか?
会社と事業の概要、リニューアルの目的と数値目標、対象範囲(ページ数・機能・言語)、移行するコンテンツ、品質の基準(アクセシビリティ・速度・セキュリティ)、運用体制、予算の幅、スケジュール、提出物の形式、評価の方法、契約条件の希望、問い合わせ窓口の12項目が目安です。分量は A4 で5〜10枚程度に収めると、各社が読み込めます。
提案書や見積もりを比べるとき、どこを見ればよいですか?
同じ範囲を見積もっているかを最初に確かめます。そのうえで、成果物の一覧、工数と単価、含まれないもの、公開後の保守とホスティングの費用、ソースコードやドメインなどの所有権、アクセシビリティの基準、セキュリティ対策、個人データを扱う場合の処理者契約(DPA)を、同じ表に並べて比べます。
制作会社との契約で、特に確認すべき点は何ですか?
成果物の著作権がいつ誰に移るか(日本では翻案権などを明記しないと移らないと推定されます)、解約時にドメイン・データ・アカウントを引き渡す手順と期限、稼働率や対応時間を定めた SLA、契約不適合(不具合)の扱い、追加作業の見積もりと承認の方法の5点です。
欧州の制作会社に頼むとき、GDPR の処理者契約(DPA)は必要ですか?
制作会社やホスティング会社が、問い合わせフォームの送信内容など個人データを発注側の代わりに扱うなら、GDPR 第28条により書面の契約が必要です。オランダの監督機関 AP は、契約がなければ発注側と処理者の両方が違反になると案内しています。処理の内容、指示、秘密保持、安全管理、再委託、終了時の削除・返却、監査を盛り込みます。
日本とオランダでは、見積もりや支払い条件にどんな違いがありますか?
日本では「一式」の総額で見積もり、着手金と納品後の残金に分けることが多く、取適法やフリーランス法で支払期日は受領から60日以内とされています。オランダでは時間単価と工数で見積もり、税抜で示すのが一般的です。B2B の支払期限は合意がなければ30日で、大企業から中小企業への支払いは最長30日に制限されています。

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