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コラム

日本とヨーロッパで、B2Bサイトの問い合わせ導線はここまで違う|購買データ・法令・フォーム設計を日蘭で比較(2026年)

企業サイトの制作をオランダで請けていると、同じ「会社を紹介して問い合わせをもらう」という目的でも、日本向けと欧州向けでは設計をかなり変える必要があると感じます。

言語の問題だと思われがちですが、実際に効いているのは意思決定のプロセスの違いです。そして、オランダにはサイトに載せることが法律で求められている情報や、Cookie とアクセシビリティの規則もあります。

この記事では、日蘭双方のサイトを作ってきた現場の観察に、Gartner と HubSpot Japan の2025〜2026年の購買調査、EF の英語能力指数、オランダの監督当局(ACM、AP、RVO)と日本の個人情報保護委員会・消費者庁の公式情報を重ねて、日本と欧州で B2B サイトの何を変えるべきかを整理します。

この記事が主に根拠にした情報

  • HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」(2026年7月発表、1,573人)
  • Gartner の B2B 購買者調査(2025年6月・2026年3月の発表、および750人の時間配分調査)
  • オランダの ACM・KvK(表示義務)、AP(Cookie)、RVO(欧州アクセシビリティ法)の案内
  • 日本の個人情報保護委員会(域外適用)と消費者庁(特定商取引法)の案内
この記事で分かること 答えの要点
買い手はいつ売り手に接触するのか 日本では63.5%が候補を絞り込んでから。欧州でも営業を介さない購買を望む人が67%(第1〜2章)
AI は購買にどう影響しているか 日本の買い手の41.6%が「AI の影響が増えた」。ただし最も信頼されないのも AI のまとめ(第3章)
日本向けと欧州向けで何を変えるか 冒頭に置く情報、フォーム、価格、会社概要(第4〜7章、第12〜13章)
オランダで守るべき規則は何か 表示義務、Cookie、アクセシビリティ(第8〜10章)
欧州の会社が日本向けに出すときは 個人情報保護法は域外適用あり。特定商取引法は B2B なら原則対象外(第11章)

1. 買い手は、営業に会う前にほとんど決めている

欧州:営業担当者を介さない購買を望む人が67%

まず、日本と欧州で共通する前提から。B2B の買い手は、売り手と話す前に、ほとんどの判断を終えています。

Gartner が750人の B2B 購買担当者を対象に行った調査では、購買を検討している時間の使い方は次のようになっていました。

オンラインでの独自調査が27パーセント、社内の検討が22パーセント、オフラインの調査が18パーセント、サプライヤーとの面談が17パーセント、その他が16パーセント。 オンラインでの独自調査 27% 社内の検討(買い手側の会議) 22% オフラインでの調査 18% サプライヤーとの面談(全社合計) 17% その他 16% 複数社を比較する場合、1社あたりの面談時間はさらに小さくなる
図1:B2B購買担当者の時間配分。サイトが担うのは、最も大きい「オンラインでの独自調査」の部分です(出典:Gartner の調査にもとづく報道(B2B購買担当者750人対象)、2026年10月18日確認)

サプライヤーと会っている時間は全体の17%で、しかもこれは検討中の全社を合わせた数字です。複数社を比較していれば、1社あたりはさらに小さくなります。

この傾向は強まっています。Gartner は2025年6月、B2B の買い手の61%が営業担当者を介さない購買を望んでいると発表しました(632人、2024年8〜9月の調査)。2026年3月の発表では、この割合が**67%**に上がっています(646人、2025年8〜9月の調査)。

Gartner の発表 営業担当者を介さない購買を望む割合 調査
2025年6月 61% 632人、2024年8〜9月
2026年3月 67% 646人、2025年8〜9月

一方で Gartner は2026年5月、買い手の69%が、AI で得た情報を営業担当者に確かめているとも発表しています。営業が不要になったのではなく、営業に会う前の下調べをサイトと AI が担い、営業は確認役に回っている、という変化です。

日本:売り手に接触する時点で、63.5%が候補を絞り込み済み

日本の買い手も同じ方向に動いています。HubSpot Japan が2026年7月に発表した調査(マクロミル実施、従業員50人以上の企業で直近1年に B2B の購買に関わった1,573人)では、9.0%は売り手に一度も接触せずに購買を決めていました。

接触した人(1,431人)の検討段階は次のとおりです。

売り手に接触した人のうち、複数候補をリストアップ済みが29.6パーセント、数社に絞り込み済みが18.7パーセント、稟議資料などがほぼ完成が8.8パーセント、第一候補があり最終確認中が6.4パーセントで、合わせて63.5パーセント。 複数候補をリストアップ済み 29.6% 候補を数社に絞り込み済み 18.7% 要件・比較表・稟議資料がほぼ完成 8.8% 第一候補があり最終確認中 6.4% リストアップ以降まで進んでいた人の合計 63.5% 母数は売り手に接触した1,431人。9.0%は一度も接触せずに決めている
図2:売り手に接触する時点で、買い手はどこまで検討を進めているか(出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」、2026年6月調査・1,573人)

売り手に接触した時点で、63.5%がすでに複数候補のリストアップ以降まで進んでいました。「第一候補があり最終確認中」という人も6.4%います。最初に接触する目的は、**価格・見積もりの確認(42.4%)と商品・サービスの詳細の把握(33.3%)**が上位でした。

つまり、日本でも欧州でも、サイトは「会ってから説明すること」の前倒しを引き受ける必要があるということです。この構造は共通ですが、前倒しで見せるべき中身が違う、というのがこの記事の本題です。

2. 日本の買い手は、組織で、時間をかけて決める

関わる人が多く、比較して、時間がかかる

HubSpot Japan の調査からは、日本の B2B 購買が組織的な意思決定であることがよくわかります。

項目 割合
意思決定に関わった人が5人以上 46.9%
2社以上の提供会社・商品を比較した 80.3%
検討開始から決定まで1か月以上かかった 50.9%

半数近くの案件で5人以上が関わり、8割が複数社を比較しています。サイトを見ている担当者は、決める人ではなく、決める人に説明する人であることが多い。日本の B2B サイトが会社概要や導入実績を重視するのは、この担当者が社内で説明しやすい材料を求めているからです。

最も信頼されるのは「価格が明瞭な情報」

同じ調査で、買い手が信頼できると答えた情報の上位と最下位は次のとおりでした。

価格・追加費用・契約条件が明瞭な情報が60.6パーセントで1位、担当者からの個別説明が59.8パーセント、導入事例が57.0パーセント、生成AIやAI検索がまとめた情報は37.8パーセントで10項目中の最下位。 価格・追加費用・契約条件が明瞭な情報 60.6% 担当者からの個別説明 59.8% 導入事例 57.0% 生成AI・AI検索がまとめた情報(最下位) 37.8% 10項目のうち上位3項目と最下位を抜き出したもの
図3:日本の B2B の買い手が信頼できると答えた情報(出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」、2026年6月調査・1,573人)

1位は価格・追加費用・契約条件が明瞭な情報(60.6%)、2位が担当者からの個別説明(59.8%)、3位が導入事例(57.0%)です。日本の買い手は「料金はお問い合わせください」を受け入れる、と言われがちですが、本当に信頼しているのは価格がはっきりした情報だということがわかります。

接点ごとに買い手が期待することも、価格が上位に来ています。

接点 1位 2位
Web・資料・イベント 価格や費用の目安がわかること(42.9%) メリットだけでなく注意点も説明されていること(33.8%)
営業・提案 自社の状況に合わせた提案(37.1%) 費用対効果・ROI の説明(30.2%)
導入後の支援 問い合わせ窓口・対応時間・サポート範囲の明確さ(35.3%) 課題発生時の相談先・エスカレーション方法の明確さ(31.4%)

Web の役割は「価格の目安」と「注意点」を示すこと、と読めます。メリットだけを並べたページより、向いていない場合や追加費用がかかる条件まで書いたページのほうが、社内で説明する担当者にとって使いやすいのです。

3. AI が下調べを変えている

日本の買い手の41.6%が「AI の影響が増えた」

HubSpot Japan の調査では、過去の購買と比べて**「生成AIサービスや AI 検索が購買判断に与える影響が増えた」と答えた人が41.6%**で最多でした。この2〜3年で増えた情報収集の行動でも、AI の利用(33.5%)が1位です。

AI の使われ方(AI 利用者1,155人) 割合
候補の洗い出し 50.3%
各社の特徴・違いの整理 47.1%
比較表の作成 39.2%
社内説明用の要約の作成 38.8%

業務で使っている AI は、ChatGPT(58.0%)、Gemini(51.2%)、Microsoft Copilot(40.1%)の順でした(頻繁に+ときどき使う人の割合)。

ただし、AI のまとめは最も信頼されていない

興味深いのは、同じ調査で**AI がまとめた情報は、信頼できる情報の10項目中で最下位(37.8%)**だったことです。AI の情報をどう扱っているかを聞くと、次のようになっていました。

AI 情報の扱い(AI 利用者1,266人) 割合
自分で事実確認・加筆修正して使う 48.3%
提供会社・専門家・社内の人に確認して使う 35.7%
そのまま、またはほぼそのまま使う 24.9%

つまり、AI で候補を洗い出し、企業サイトや担当者で確かめるという流れです。これは Gartner の「69%が AI で得た情報を営業担当者に確かめている」という結果とも重なります。

サイトにとっての意味は2つあります。ひとつは、AI に候補として拾われるだけの情報(何を、誰に、いくらで)をページに書いておくこと。もうひとつは、AI の要約を確かめに来た人が、裏づけを見つけられることです。価格の目安、事例、注意点が書かれていないサイトは、どちらの段階でも落ちます。

4. 問い合わせる直前に見ているものが違う

ここからが日本と欧州の違いです。

日本の担当者は、問い合わせる前に「この会社は信用できるか」を確認しようとします。会社概要、沿革、取引先、所在地。組織としての信頼性が先に来ます。前章までのデータのとおり、その担当者は社内で説明する立場にあることが多いからです。

欧州の担当者は、**「この件を任せられるか」**を見ます。似た案件をやったことがあるか、誰が担当するのか、いくらくらいかかるのか。会社の規模より、仕事の中身と価格帯のほうが先に来ます。オランダでは特に、問い合わせてくる個人に実際の決定権があることが多く、問い合わせのハードルが低い傾向があります。

項目 日本の担当者 欧州の担当者
最初に確かめること 組織として信用できるか この件を任せられるか
重視する情報 会社概要、沿革、取引先、所在地 担当者、類似案件、価格帯
問い合わせの位置づけ 社内説明の材料集めの一段階 会話を始めること自体
決定権 担当者は説明役であることが多い 担当者に決定権があることが多い

5. 典型的な経路を並べてみる

日蘭双方のサイトを作ってきた経験から、問い合わせに至るまでの道筋を整理すると、だいたい次の形になります。

日本向けは会社概要、実績、料金の問い合わせ、詳細なフォームの順。欧州向けは価格帯とサービス、担当者、事例の成果、短いフォームの順。 日本向け 欧州向け 1. 会社概要・沿革 組織として信用できるか 1. サービス内容と価格帯 自分の案件に合うか 2. 実績・取引先一覧 どんな会社と取引があるか 2. 誰が担当するのか 経歴と顔が見えるか 3. 料金は「お問い合わせ」 相談してから見積もり 3. 事例の中身と成果 似た案件の実例があるか 4. 会社名・部署・役職を入力 項目が多くても離脱しにくい 4. 短いフォームか直接メール 項目が増えるほど離脱する 制作現場での観察にもとづく整理(統計調査ではありません)
図4:問い合わせまでの典型的な経路。日本向けは「信頼の確認」から、欧州向けは「適合の確認」から始まります(出典:DevNJ の制作経験にもとづく整理、2026年10月18日)

同じ素材を並べ替えるだけで変わる部分もあれば、そもそも用意していない情報が必要になる場合もあります。価格帯と担当者の経歴は、日本向けサイトには載っていないことが多い情報です。逆に、欧州の会社が日本向けにサイトを作るときは、会社概要の表と取引先の名前が足りないことが多くなります。

6. 言語:オランダは英語で届くが、欧州全体ではない

オランダは英語能力指数で世界1位、日本は96位

EF の英語能力指数(EF EPI)2025年版では、オランダが123か国・地域中1位(「非常に高い」)でした。日本は96位で「非常に低い」の区分に入り、スコア446はアジア平均(473)と世界平均(488)を下回っています。

国 EF EPI 2025 の順位 区分
オランダ 1位(123か国・地域中) 非常に高い
日本 96位 非常に低い(スコア446)

この指数はオンラインの英語テストを自ら受けた人のデータで、国民全体の無作為な調査ではありません。それでも傾向ははっきりしています。

サイトにとっての意味

  • オランダ向けなら英語ページで届く。ただし、オランダ語のページがあると信頼感は上がる
  • ドイツ・フランスなど他の欧州諸国も狙うなら、現地語のページが必要になる場合がある
  • 欧州の会社が日本向けに出すなら、日本語ページは必須。英語のままでは担当者が社内で回覧できない

言語と購買の関係については、CSA Research の2020年の調査(29か国の消費者8,709人)で、76%が自分の言語で情報のある商品を選び、40%は他の言語のサイトからは買わないという結果が出ています。消費者向けの調査ですが、社内で資料を回す B2B の担当者にとっても、言語の壁は小さくありません。

7. フォームの項目は、日本向けと欧州向けで変える

欧州向けのフォームは、項目が増えるほど離脱します。日本向けで標準的な「会社名・部署・役職・電話番号」の4点セットは、欧州では重い。

項目の比較

項目 日本向け 欧州向け
名前 必須(ふりがな欄も) 必須
メールアドレス 必須 必須
会社名 必須にしやすい 任意でよい
部署・役職 よく入れる 入れない
電話番号 必須にしがち 任意。むしろ嫌がられる
相談内容 選択式+自由記述 自由記述のみで足りる
送信後 折り返しの電話も想定 メールでの返信が前提

日本向けフォームの作法

日本向けでは、項目の多さより入力のしやすさで離脱が決まります。

  • ふりがな欄を置く。名前の読みが複数ありうるため、ないとかえって不自然に見える
  • 全角・半角のどちらでも受け付ける。電話番号や郵便番号で弾かれると、そこで止まる
  • 「見積もり依頼」と「相談」を分ける。HubSpot Japan の調査では、最初に売り手に接触する目的の1位が価格・見積もりの確認(42.4%)でした。目的が分かれていれば、担当者は社内でどちらの段階かを説明しやすくなります
  • 資料ダウンロードを別の入口にする。まだ接触したくない段階の人が、稟議用の資料だけを持ち帰れるようにする

欧州向けフォームの作法

個人情報の扱いも、設計に影響します。GDPR の考え方では、取得してよいのは目的に必要な範囲までです。「あとで営業に使うかもしれないから」という理由で役職や電話番号を必須にするのは、説明が難しくなります。フォームの近くにプライバシーポリシーへのリンクを置き、何の目的で使い、どれくらい保管するのかを書いておく。これは法令対応であると同時に、送信してよいかどうかの判断材料にもなります。

8. オランダでは、サイトに載せる義務がある情報があります

載せる情報

日本から進出する際に見落とされがちなのがここです。オランダでオンラインでサービスを提供する事業者には、事業者を特定できる情報の表示が求められます。民法(Burgerlijk Wetboek)3:15d にもとづくもので、消費者市場監督当局(ACM)も具体的に挙げています。

載せるもの 補足
事業者名 商工会議所(KvK)に登録した名称
所在地 私書箱ではなく事業所の住所
連絡先 メールアドレス。電話番号も推奨される
KvK番号 商工会議所の登録番号
btw-id 付加価値税の識別番号

KvK は全ページから見える場所(ヘッダーかフッター)への掲載を勧めています。日本のサイトでは会社概要ページにだけ置くことが多いのですが、オランダ向けではフッターに入れてしまうのが簡単で確実です。

住所を出したくない場合

登記上の住所を公開したくない事情がある場合もあります(自宅を登録しているケースなど)。その場合でも連絡先と登録番号は必要なので、どこまで出すかは事業形態に合わせて設計することになります。

9. Cookie と計測:同意が要るもの、要らないもの

同意が要るもの、要らないもの

日本のサイトでは当たり前の「アクセス解析と広告タグを入れておく」は、オランダではそのまま持ち込めません。オランダの個人データ保護当局 AP(Autoriteit Persoonsgegevens)の案内を整理すると、次のようになります。

Cookie の種類 同意 条件・注意
機能に必要な Cookie 不要 サイトを動かすためだけのもの
影響の小さい解析用 Cookie 不要 訪問者を数えるだけで、人によって扱いを変えることに使わない。プライバシーポリシーに記載し、拒否できるようにする
広告と連携した解析 必要 広告データと組み合わせると追跡用 Cookie とみなされる
追跡用 Cookie 必要 正当な利益(legitimate interest)を根拠にはできない

AP は Cookie の扱いの監視を強めているとしています。日本向けサイトと同じタグ構成を欧州向けに入れると、それだけで規則違反になり得るので、欧州向けのサイトは計測の設計から分けて考えるのが安全です。

同意バナーの作り方

同意を取るなら、バナーの作り方にも基準があります。AP の考え方を伝える報道や解説では、次の点が繰り返し挙げられています。

基準 内容
拒否のしやすさ 拒否は同意と同じくらい簡単に。追加のクリックやスクロールを求めない
事前のチェック あらかじめチェックを入れておくのは有効な同意にならない(2019年の EU 司法裁判所 Planet49 判決)
同意前の動作 同意が得られるまで、追跡用の Cookie を置かない

消費者団体 Consumentenbond が2025年に人気サイトを調べたところ、Cookie バナーのある84サイトのうち32サイト(38%)が適切な方法で同意を求めていませんでした。2023年の61%からは改善したものの、「拒否するには『設定』ボタンを開く必要がある」「拒否が小さなリンクになっている」といった例が残っています。

数字が少なく見える前提で比べる

問い合わせの計測にも影響があります。同意しない訪問者の行動は追えないため、欧州向けサイトの数字は日本向けより少なく見えるのが普通です。数字を比べるときは、この前提を共有しておく必要があります。

10. 欧州アクセシビリティ法(EAA)

2025年6月28日から、**欧州アクセシビリティ法(European Accessibility Act)**がオランダでも適用されています。オランダの企業庁 RVO の案内をまとめると、次のとおりです。

項目 内容
対象 消費者向けの e-commerce(ネットショップ)、オンラインバンキング、通信、交通、電子書籍など
対象外になりやすいもの 事業者向け(B2B)だけのサービス。従業員10人未満かつ年間売上200万ユーロ以下の零細事業者
求められること アクセシビリティの4原則への適合と、アクセシビリティ表明の公開
届け出・監督 e-commerce は ACM

純粋な B2B の会社案内サイトは原則として対象外ですが、同じサイトで消費者向けに販売している場合や、将来ネットショップを付ける予定がある場合は対象になり得ます。対象外であっても、読み上げ・色・キーボード操作に配慮したサイトは、高齢の担当者や業務端末で見る人にとって使いやすいという意味で、B2B でも損はありません。

11. 欧州の会社が日本向けに出すとき:日本の法令

逆向きの話も整理しておきます。欧州の会社が日本の担当者向けにサイトを出す場合、日本側の法令で確認すべき点は2つです。

法令 B2B サイトへの影響 根拠
個人情報保護法 日本にいる人に商品やサービスを提供するために、日本にいる人の個人情報を外国で扱う場合も適用される(域外適用) 個人情報保護委員会(法第171条)
特定商取引法 営業のため、または営業として結ぶ契約は適用除外。純粋な B2B なら「特定商取引法に基づく表記」は原則不要 消費者庁「特定商取引法ガイド」(法第26条)

個人情報保護委員会の FAQ では、域外適用を受ける外国の事業者にも、安全管理の措置や漏えい時の報告の義務が及ぶとされています。問い合わせフォームで日本の担当者の名前やメールアドレスを受け取るなら、日本語のプライバシーポリシーを用意しておくのが基本です。

一方、特定商取引法のページは、消費者向けに販売していなければ原則として不要です。ただし、会社名・住所・電話番号を載せた会社概要ページは、法的な義務とは別に、日本の担当者にとって信頼の前提です。法令上不要だからといって省くと、第4章で見た「組織として信用できるか」の確認で落ちます。

12. 価格の出し方

「料金はお問い合わせください」は、日本では成立すると言われます。欧州では、比較の土俵に乗らない理由になります。そして前述のとおり、日本の買い手も本当に信頼しているのは価格が明瞭な情報です。

とはいえ、案件ごとに金額が変わる仕事で定価を出すのは現実的ではありません。妥協点として機能しやすいのは次の形です。

出し方 例 効く理由
レンジで出す 「この規模なら◯◯〜◯◯ユーロ」 予算内かどうかを先に判断できる
何で変わるかを書く ページ数、多言語対応の有無、更新作業の範囲 自社の条件に当てはめて見積もれる
実例に金額帯を添える 「この案件は◯◯ユーロ前後」 社内で「似た案件の相場」として説明できる
追加費用の条件を書く 「翻訳は別途」「保守は月額」 後から増える費用への不安を消す

目的は「正確な見積もり」ではなく、相手が社内で話を通せる材料を渡すことです。Gartner の時間配分でいえば22%を占める「社内の検討」を、HubSpot Japan の調査でいえば46.9%の案件で5人以上が関わる意思決定を、サイトの側から助けることになります。

13. 会社概要ページの作り分け

項目 日本向け 欧州向け
中心になる情報 資本金、設立年、沿革、組織図 担当者の顔と経歴
実績の見せ方 取引先の社名一覧 案件の中身と成果
所在地 本社と拠点の一覧 所在地と法定の登録情報(KvK番号・btw-id)
規模の扱い 大きいほど安心材料 小さくても誰がやるかが明確なら不利にならない

日本向けの会社概要は、組織としての継続性を示す構成です。欧州向けでは、誰と仕事をすることになるのかを示す構成のほうが効きます。「社員数3名」であることは、欧州では必ずしも不利になりません。

14. 英語ページは直訳では機能しない

ここまでの話をまとめると、英語ページを日本語ページの直訳にすると何が起きるかが見えてきます。

  • 冒頭に会社の歴史が来て、価格とサービス内容が下のほうにある
  • 料金が「お問い合わせください」になっている
  • フォームの必須項目が多い
  • 誰が担当するのかがどこにも書いていない
  • 日本向けと同じ広告タグが、同意なしで動いている

文章としては正しくても、読む順番が相手の判断の順番と合っていない状態です。翻訳ではなく、構成の作り直しが必要になります。

15. ケースで考える(架空の例)

以下は設計の考え方を示すための架空の例です。

ケースA:オランダに進出した日本の部品メーカー

日本の本社サイトを英訳して、オランダ法人のサイトにしました。問い合わせはほとんど来ません。

冒頭の沿革と社長挨拶を後ろに回し、扱っている部品と対応できるロット・納期の目安を先頭に置きます。担当者の顔写真と経歴を載せ、フォームは名前・メール・相談内容の3項目に絞ります。フッターに KvK番号と btw-id を入れ、日本と同じ広告タグは同意を取るまで動かないようにします。

ケースB:日本の商社に売り込みたいオランダのソフトウェア会社

英語のサイトしかなく、日本の担当者からの反応が鈍い状況です。

日本語のページを用意し、会社概要の表(設立年、所在地、代表者、従業員数、主な取引先)を載せます。価格はレンジで出し、稟議に使える日本語の資料をダウンロードできるようにします。日本の担当者の個人情報を受け取るので、日本語のプライバシーポリシーも用意します。純粋な B2B なので、特定商取引法の表記ページは不要です。

ケース まず直すこと 足すもの 外すもの
A 日本→オランダ ページの順番(価格と内容を先に) 担当者の経歴、KvK番号・btw-id 長いフォーム、同意なしの広告タグ
B オランダ→日本 日本語ページの用意 会社概要の表、稟議用の資料、日本語のプライバシーポリシー 英語だけの案内

16. やってはいけないこと

やってはいけないこと 理由
日本語ページをそのまま英訳する 読む順番が欧州の判断の順番と合わない
欧州向けで「料金はお問い合わせください」だけにする 比較の土俵に乗らない
日本向けで会社概要を省く 社内で説明する担当者が材料を得られない
欧州向けに日本と同じ広告タグを入れる 同意なしの追跡用 Cookie は規則違反になり得る
オランダ向けで KvK番号・btw-id を載せない 表示義務がある
AI に拾われることだけを狙った薄いページを作る AI のまとめは最も信頼されず、裏づけを確かめに来た人に見限られる

17. チェックリスト

欧州(オランダ)向け

  • 冒頭にサービス内容と価格帯がある
  • 担当者の顔と経歴を載せた
  • フォームは必要最小限の項目にした
  • フッターに KvK番号と btw-id がある
  • Cookie は解析用と追跡用を分け、追跡用は同意を取ってから動く
  • 消費者向けの販売がある場合、欧州アクセシビリティ法の対象か確認した

日本向け

  • 会社概要の表(設立年、所在地、代表者、従業員数、取引先)がある
  • 価格の目安と、追加費用の条件を書いた
  • 導入事例に業種・規模・成果を書いた
  • 稟議に使える資料をダウンロードできる
  • 日本語のプライバシーポリシーがある

まとめ

  • B2B の買い手は営業に会う前に決めている。日本では63.5%が候補を絞り込んでから接触し、欧州では67%が営業を介さない購買を望む
  • 日本の買い手の41.6%が AI の影響が増えたと答えた一方、AI のまとめは最も信頼されていない。サイトは裏づけを示す場になる
  • 日本向けは「組織として信用できるか」、欧州向けは「この件を任せられるか」から始まる
  • 価格の目安は、日本でも最も信頼される情報。レンジと変動要因で出す
  • オランダ向けには、KvK番号と btw-id の表示、Cookie の同意、消費者向けならアクセシビリティの規則がある
  • 欧州の会社が日本向けに出すなら、日本語ページと会社概要の表、個人情報保護法への対応が要る。特定商取引法は B2B なら原則対象外
  • 英語ページは翻訳ではなく構成の作り直し

参考にした情報源

購買調査

言語

オランダ・EU の規則

日本の規則

法令の要件は事業形態によって異なります。2026年10月18日時点の情報のため、実装前に最新の案内を確認してください。図4の導線の比較は、統計調査ではなく制作現場での観察にもとづく整理です。

よくある質問

欧州向けサイトに会社概要ページは必要ですか?
必要ですが、日本向けとは載せる内容が変わります。欧州の担当者は資本金や設立年よりも、誰が担当するのか、どんな案件を扱ってきたのかを見ます。担当者の顔と経歴を出すほうが効きます。
問い合わせフォームの項目は多いほうがよいですか、少ないほうがよいですか?
欧州向けは少なくしてください。日本向けでは会社名・部署・役職まで書かせても離脱しにくいのですが、欧州では項目が増えるほど離脱します。GDPR でも、取得する情報は目的に必要な範囲までが原則です。
英語ページは日本語ページの直訳でよいですか?
直訳では機能しません。日本語ページが「丁寧に順を追って説明する」構成なら、英語ページは「結論と価格帯を先に出す」構成にしたほうが問い合わせにつながります。オランダは英語能力指数で世界1位ですが、他の欧州諸国では現地語のページが必要になる場合もあります。
オランダで事業用サイトを出すとき、載せる義務がある情報はありますか?
あります。事業者名、所在地、連絡先に加えて、商工会議所の登録番号(KvK番号)と付加価値税の識別番号(btw-id)の表示が求められます。フッターなど全ページから見える場所に置くのが一般的です。
アクセス解析のために Cookie の同意バナーは必要ですか?
オランダの個人データ保護当局(AP)によると、訪問者を数えるだけのプライバシーへの影響が小さい解析用 Cookie なら同意は不要です。広告と連携した解析や追跡用の Cookie には同意が必要です。
日本の買い手は、なぜ価格を知りたがるのですか?
社内の稟議や説明に使うためです。HubSpot Japan の2026年の調査では、最も信頼できる情報として「価格・追加費用・契約条件が明瞭な情報」が60.6%で1位でした。売り手に最初に接触する目的も「価格・見積もりの確認」が42.4%で最多です。

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